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クリオラの出生の秘密。クリオラはそれを‥

 クリオラとアース、トルカの3人は教会に向かうことにした。ドラゴンで行くのは目立つので陸路だ。3人は宿屋で食事をとった。宿屋の食堂には、傭兵や商人など様々な職種の人々が集まっている。クリオラ達は空いている席に座ると食事を注文した。

「こういう所は初めてです」

 クリオラはキョロキョロと周りを見ている。王宮に閉じ込められて育ったクリオラには、全てが新鮮に映る。一方、アースは旅には慣れていた。

「庶民の食事もなかなかのものだよ」

 アースはビールを飲んでいる。王侯貴族ほ通常、ワインやブランデーを飲む。ビールは庶民の酒だ。

「お!タセゼットじゃないか!」

 隣にいた商人風の男に、通りすがりの男が声をかけた。

「ああ!バハ。懐かしいな!その名前で呼ばれたのは久しぶりだ」

「は?どういうことだ?」

 バハはタセゼットの席に座って話し込む。

「あの時はな。どこかの金持ちが、タセゼットと名乗って色々な商団に入り込む人間を集めていたんだ。俺もそれに便乗してタセゼットと名乗ってザギ商団に入ったんだよ」

「それですぐにいなくなったのか!お前が辞めた後、貴族の騎士達が来て大変だったんだぞ。タセゼットを出せってな」

 二人の会話は、クリオラ達にも聞こえた。

「タセゼットって名前の奴がある貴族に追われてると知った俺は、商団を辞めた後にすぐ本当の名で商売を始めた。そして商人としてその貴族の屋敷に出入りしてみたんだよ」

 男はニヤリと笑うと、過去の儲け話を自慢し始めた。

「偽名を名乗っただけで大層なお金を貰えたからな。商売を始めるのは簡単だった。俺は異国の商品をブラヒン公爵家に持ち込んだんだ」

「ブラヒン!!あのエスケル王国一と言われる貴族か!」

 バハは驚いている。

「馬鹿。でかい声を出すなよ。ブラヒン公爵がなぜ、タセゼットを追っているのかを、商売しながら探ったわけだが‥」

 男は声のトーンを落とした。

「公爵令嬢が、タセゼットって奴に誘拐されて、そいつの商団の奴らに孕まされたらしい。このことは緘口令が敷かれていたから中々聞き出せなかったが、宝石でメイドが口を割った」

「公爵令嬢の誘拐、強姦か‥。それは公爵が国中の商団をしらみつぶしに探したのもわかる。それより、お前の本当の名前は何て言うんだよ」

 バハは衝撃の事実に興奮している。

「俺はアンダラ。今も一人で気楽に商売をしてるぜ」

 アンダラの身につけている物は商人にしては豪華だ。

「商売がうまくいってるんだな。やはりブラヒン公爵家か?」

 バハは儲け話に乗りたかった。アンダラは首を横に振る。

「ブラヒン公爵家にはもう関わらないと約束したんだ。だから公爵家には出入りしていない」

「は?なんで関わらない約束なんかしたんだよ。何かやらかしたのか?」

 バハの問いかけに、アンダラはビールを飲み干してから答えた。

「当時、ブラヒン公爵令嬢は妊娠していたんだ。誘拐された時の子だ。公爵は誰とも分からない男の子供を公爵家の人間だとは認めなかった。だから生まれてすぐに、捨ててくるように俺に依頼したんだ」

 アンダラは当時を思い起こした。布にくるまれた小さな赤子。それを渡された時のぬくもりを忘れてはいなかった。

「大金を貰った。決して口外するな、てな。そして絶対に赤子が生き残らないように、山奥に捨てろと言われた」

 隣の男達の会話に、クリオラの鼓動が早く脈打った。

「それで俺は、エスケル王国とアルタイ王国の国境の山に赤子を捨てた。辺りには何も無い山奥だ。飢え死にしたか、獣に食われたか‥」

 その状況を聞いたクリオラは立ち上がると、アンダラに詰め寄った。

「その赤子を捨てた時、この布にくるんでたの?」

 クリオラは小さく切った布をアンダラに見せた。薄紫のシルクだ。アンダラはそれを見て驚愕している。

「な‥なんであんたがその布を!?」

 真っ青になっているアンダラに、クリオラは詰め寄った。

「私は18年前、エスケル王国とアルタイ王国の国境に捨てられた。そして私はエスケル王国の血を引いている」

 アンダラはクリオラの顔をジッと見つめた。クリスタに似ている部分がある。

「まさか‥あの赤子が生きていたのか!?」

 アンダラは震えている。偶然、昔馴染みに再会して過去の話をしたら、その隣に話の中の人物がいたのだ。アンダラには偶然とは思えなかった。アンダラは自分が知っている当時の情報を全てクリオラに話した。

「私がブラヒン公爵家の血を引いていたなんて‥」

 つい先日まで、クリオラはブラヒン公爵家に滞在していた。クリオラもまた、そのことに運命を感じていた。

 出生の秘密を知ったクリオラは、複雑な心境だった。公爵家の血を引いていると言っても、公爵令嬢が強姦されて産んだ子で捨てられた。さらに母である公爵令嬢は、教皇の娘を誘拐して指名手配され、異国で別人になりすましていた所を殺害された。実の母のことは新聞でしか知らなかったが、悪名高い印象しかなかったのだ。

 アースは、落ち込むクリオラを励ました。

「クリオラ。私の母は、移民の踊り子だったんです。世界各地で酒席で踊っては、そこの男の相手もする。だから、私がチンターマニ王国の王族にだけ受け継がれる水色の髪で生まれなければ、私は王の子とは認められなかったんですよ」

 アースの母は、王の一夜の戯れで身籠った。その為、冷宮で暮らすことを命じられ、母子共に閉じ込められた。そんな生活に嫌気がさした母は、子を捨てて冷宮を抜け出したのだった。

「私達は共に、実の親には縁がない。でも、あなたには私がいます」

 アースの優しい言葉がクリオラの心に響いた。クリオラは、己の出生を受け止め、アースとの未来に希望を抱いた。その夜二人は互いを求め合い、初めて結ばれたのだった。

 クリオラ達が教会を目指していた時、教会ではルイーゼと神官が話していた。ルイーゼは自分の身体を治す方法がないか、神官達に探させていた。

「ルイーゼ様。ルイーゼ様の傷を治す方法が、一つだけありました」

 神官は過去の聖女の歴史が書かれた書物を持っている。

「聖女の傷は聖女には癒せない。しかし、聖女の傷を負った者が聖女になればその傷は消えるそうです」

「はあ?そんな方法、何の役に立つのよ!今の聖女は、アルタイ王国の王女よ。そんな人が、聖女の力をくれるわけがない。そもそも、そんな簡単に手渡せるものなの?」

 ルイーゼは神官に詰め寄る。

「ルイーゼ様は聖女の血を引く器ですから。可能かと。過去の事例もそうでしたし‥」

 神官はしどろもどろに返答した。

「‥ということは‥王女が聖女の力を手放してくれればいいのね。でも、王女は私を攻撃した‥」

 ルイーゼはあの事件の犯人がクリオラだと知っている。クリオラを恨んでいた。

 その時、外が騒がしくなった。ルディとオニキスが帰ってきたのだ。ルイーゼは不機嫌になった。

「もういいわ。出て行って」

 ルイーゼは神官を追い出すと、部屋の窓から二人の様子を見た。仲睦まじい二人の姿がある。ルイーゼの中に、憎悪と嫉妬心が燃え上がった。

「悔しい‥」

 ルイーゼの視線にルディは気づいた。窓から睨むその視線に、ルディはため息をつく。オニキスも霊感でルイーゼの憎悪を察知していた。オニキスはルディの肩にそっと手を回すと結界を張った。念に憑かれるのはよくない。オニキスの結界のお陰でルディの波動は高いままでいられた。 

 ルディ達が教会に戻った頃、一通の手紙がルシフォール宛てに届けられた。封筒には、チンターマニ王国の印がある。

ルシフォールはすぐに手紙を開封した。

「大神官、明日辺り、チンターマニ王国の王子とクリオラ姫がここに来るそうだ」

 ルシフォールの言葉を聞いたオニキスが驚いた。

「クリオラが?それにしても何故クリオラは、チンターマニの王子と行動を共にしているんだ??」

「どちらにしても、あの襲撃事件の話も聞けるし、オニキス様はクリオラ姫を連れて帰ることができる」

「それは願ってもないことだが‥。父もまだ謝罪に来れていないし‥。私はまだ帰りたくないな‥」

 オニキスがルディに甘えた。ルディはそんなオニキスに愛しさを募らせる。

 そして翌日、アースとクリオラが教会に到着したのだった。

いよいよクリオラがルイーゼと対面する。二人はどうするのか‥

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