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クリオラとアースの関係は??

 その頃、クリオラはまだアースの館にいた。トルカも貴族なので下働きのような仕事は未経験だったが、クリオラよりは作業はできた。トルカはクリオラの付き人のような役割を果たして、日常生活をサポートしている。女性の使用人がいない為、コルセットは付けられないのでドレスは無理である。クリオラは簡単なワンピースのような服を着て過ごしていた。

「アース、お茶が入ったわ」

 クリオラはお茶を入れた。淑女の嗜みとしてそういう作法は学んでいる。クリオラは自信を持って茶をティーカップに注いだ。

「クリオラの入れるお茶は美味しいな」

 アースに褒められたクリオラは嬉しそうだ。家族以外で初めて自分の淹れたお茶を喜んでくれた。その喜びがクリオラの心を満たした。

「アースは、恋人はいるの?」

 クリオラは率直に尋ねた。アースは驚いたのか、ティーカップを持ったまま動きを止めた。率直にこんなことを聞かれたのは初めてだったのだ。

「私は冷宮で育てられた私生児の王子でね。幼い頃から貴族達には相手にされなかったんだ」

 アースは淡々と述べる。

「でも‥幼い頃に勇者だと告げられ、剣を授かり冷宮を出ることになった。そして、父である王の言うがままに国の災いを倒していったんだ」

 チンターマニ王国にもモンスターはいた。モンスターは時折、人を襲うことがある。アースはモンスターの棲家のあるジュエラントの山に屋敷を与えられ、そこに住むことを命じられたのだった。

「こんな山の奥にいる忘れられた王子に、恋ができると思う?」

 寂しそうなアースの表情に、クリオラは胸が痛んだ。クリオラは、自分と同じように世間とあまり関わらずに生きてきたアースに共感した。

「‥私は、アルタイ王国の王女として育てられたけれど、実際は捨て子だったの。聖女だから、と王に拾われたわ。でも、ずっと隠れて生きなければならなかった」

 クリオラは己の過去も打ち明けた。

「確かに、アルタイ王国の末姫は姿を見せない病弱な王女と聞いていたよ」

「病弱なんかじゃない。ただ、隠されていただけ。だから私は僅かな召使いと、両親、祖父、兄にしか会ったことがなかったの」

 クリオラの顔が苦渋に満ちている。友人も仲間もいない孤独な幼少期。クリオラの持て余した感情は全て、血のつながらない兄オニキスに向けられた。

「私に優しくしてくれる兄オニキスだけが、私の全てだった。だから‥私は兄を奪った女を倒そうとした‥」

 クリオラは己の罪を告白した。それを聞いたアースは驚いている。

「オニキス王子と婚約したのは、ルディだ。勇者を相手に戦いを挑んだのか?」

「でも、私が攻撃したのはルディではなかった‥。双子の妹のルイーゼだったの‥」

 クリオラは頭を抱えている。クリオラは、今になって大きな罪悪感に襲われていた。アースには、クリオラの気持ちが理解できていた。閉ざされた世界で唯一だった光を奪われた喪失感。それ故に暴走して、相手を憎み攻撃をした。アースは、クリオラがしたことを単純に悪だとは思えなかった。アースは罪悪感で塞ぎ込むクリオラの頭を撫でた。

「オニキス王子を奪われたくなかったんだね」

 クリオラはアースの懐に飛び込むと、その胸で泣いた。アースはクリオラが泣き止むまで優しく慰めてた。トルカはそんな二人を部屋の片隅から見ている。

 しばらく泣いた後、クリオラは落ち着きを取り戻した。

「私のせいで、ルイーゼは怪我をしたの。怪我の様子はどうなのかしら」

 クリオラがそう呟くと、トルカが新聞を取り出した。新聞には、教皇の娘が何者かに襲われ、歩行困難になったと書かれている。クリオラは顔面蒼白になった。

「ど‥どうしよう‥。教皇聖下や兄様なら私が犯人だとすぐにわかる‥。それに‥私のせいでルイーゼが歩けなくなったなんて‥」

 クリオラはブルブルと震えている。アースはそんなクリオラを宥め、心を落ち着かせた。

「謝罪しよう。ただ‥聖女の傷は聖女の力では癒せない。聖女から力を受け継いだ今の教皇聖下も、彼女の傷は治せないはず」

 それを聞いたクリオラの瞳から涙が溢れた。感情の赴くままに行動を起こした結果があまりに悲惨だったからだ。後悔と自責の念がクリオラを襲う。

「‥ただ‥その傷を治す方法が一つだけある‥」

 アースは、過去の聖女について書かれた本を王宮で読んだことがあった。その記憶を辿りながら話を続ける。

「ルイーゼ嬢は幸いにも、元聖女の娘。聖女になりうる器を持っている。クリオラ、貴方がルイーゼ嬢に聖女の力を渡せば、ルイーゼ嬢の傷は癒える。傷をつけたドラゴンを使役する立場になるから‥」

 クリオラはしばらく黙っていたが、突然、意を決したように宣言した。

「‥私は‥アースが好き。ずっとここで暮らしたい‥。私が聖女でも王女でもないただの女になっても、ここにいていい?」

 アースもまた、必要以上の人間と接したことがなかった。クリオラはアースが初めて愛しさを感じた異性だ。アースは両腕を広げて微笑みを浮かべた。

「いいよ。ずっと一緒に暮らそう、クリオラ」

 クリオラはアースの胸に飛び込んだ。特殊な幼少期を過ごした二人は、互いの傷を埋め合うかのように惹かれあったのだった。

ルイーゼに謝罪することにしたクリオラ。クリオラ達はルイーゼに会う為に教会に向かうのだった。

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