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クリオラを逃したオニキスはエスケル王国にとどまることにした。仲睦まじい二人に、ルイーゼの嫉妬が炸裂する。

 オニキスはクリオラを連れ帰ることができずにいた。捜査するも、クリオラの行方は掴めない。何かに阻まれるように霊視もできなかった。

「おかしい‥。クリオラの姿が見えない‥」

 オニキスは何度も目を閉じ、松果体に意識を集中させている。ルイーゼは地図を開いた。

「人目につかない道を行ったとなると、ある程度は行き先はしぼれますよ」

 オニキスは地図を眺めた。候補は五箇所程度に絞られる。

「この全てに私が行くのは無理だ‥。かといって、騎士達を行かせてもクリオラはドラゴンを使って逃げるだろう」

 オニキスは頭を抱えた。

「私のドラゴンの力で捕まえるのも無理ですしね。勇者は聖女に近寄れないから‥」

 二人はため息をついた。オニキスはルディと離れたくない一心で国に手紙を出した。そうして、クリオラを探すという名目でエスケル王国に滞在したのだった。

「ニクス、こっちこっち!」

 エスケル王国の祭りの一つに、二人は顔を出している。実名は名乗れない為、オニキスはニクス。ルディはルチルと呼んだ。

「ルチル、この飴、おいしいな!」

 オニキスは夜店の飴細工を珍しそうに眺めて食べている。ルディは射的に挑戦した。射的は得意分野だ。ルディは大物を獲得した。

「この人形は今日の記念になるわ」

 ルチルは、ユニコーンのぬいぐるみを抱きしめた。ユニコーンの額には小さな宝石が埋め込まれている。二人は夜店を周り、お揃いの腕輪を買ったり、噴水ショーを見たりして祭りを楽しんだ。祭りが終盤に差し掛かると、二人は広場から教会を目指した。歩くと結構な距離である。しかし、その長い時間を共に過ごせるのが二人は嬉しかった。

「ルディ、父上がクリオラとロードナイト王子の結婚を3年後にするように、この国の女王に伝えたのは聞いた?」

 オニキスはルディの手をしっかり握っている。

「はい。父から聞いてます。だから私は3年間はエスケル王国の勇者として役目を果たさなければならないと」

「3年経ったら、我々の結婚式だ」

 オニキスはルディを抱きしめた。星空の下で二人は抱き合いながら口付けを交わす。ルディの左手の薬指の指輪が煌めいた。オニキスは薬指にも口付けをした。

「まさか私が勇者の子孫だとは‥」

 ルディとオニキスは運命を感じていた。二人は互いに見つめ合う。

 月が満天の夜空の中心に来る頃、二人は教会にたどり着いた。護衛以外のほとんどの者が寝静まっている。二人は静かに部屋に入ると、身体を洗い眠りについた。

 翌朝、ルディとオニキスは朝食を摂りに向かった。席には既にルシフォール、セシル、ルイーゼ、ベルゼと揃っている。ルイーゼはルディを睨みつけた。ルディは平然としている。セシルはため息をついた。

「ルイーゼ、あなたはなぜ、姉にそんな態度をとるの?」

 誰もが気づいていても注意しなかったことをセシルは遂に指摘した。場が静まり返る。

「お母様。私はずっとオニキス王子に憧れていたんです。それを、いきなり現れた双子の姉に奪われた。同じ顔だから、ルディさえいなければ私が選ばれたはずなのに!」

 ルイーゼは確信を持っている。それを聞いたオニキスがすぐに対応した。

「それは違う。私はルディの魂に、心に惹かれた。たとえ同じ顔でも、ルディ以外の女性を想うことはない」

 拒絶されたルイーゼは顔面蒼白だ。ルシフォールが口を挟んだ。

「ルイーゼ。オニキス王子は第六感が特化しているんだ。そのオニキス王子が惹かれたのは、お前じゃない。諦めなさい」

 ルシフォールはウィドマンから聞いてオニキスの特性を知っていた。アルタイ王国内でも、ウィドマンが母方から受け継いだ特殊な力のことは公表されていない。オニキスのことも、アルタイ王家以外ではルシフォールしか知らなかった。

 ルイーゼの瞳から大粒の涙が流れ出した。居た堪れず逃げ出したいのに、歩けないルイーゼは席を動けなかった。気まずい空間での朝食が終わると、それぞれ部屋に戻っていった。

「せっかく家族に再会できたのに、双子の妹があれでは‥」

 オニキスは不満だった。

「仕方ない。だって18年も離れ離れだったのに、いまさら姉妹と言われても向こうもその気にならないでしょうし」

「そんなことはない。私が父と時々この教会に来た時、教皇聖下らは皆、ルディをいる者として食事を用意していたんだ」

 ルディは窓から遠くを眺めている。視線の方向にはチンターマニ王国がある。

「私は幼い頃から、育ての母に厳しく育てられました。男として生きろと言われ剣術を学ばせられ‥。18歳まで私にとっての家族はその人だけ。家族に恵まれないのには慣れてしまいました」

 諦めたように呟くルディを、オニキスは背後から抱きしめた。

「私と‥温かい家庭を作ろう。アルタイの王族は、他国と違って家庭的なんだ。きっとルディが望む家庭を築くことができる。なんなら、王位は兄に譲ってもいい」

 ルディはオニキスの優しさに救われていた。二人が幸せを噛み締めていると、そこに使用人が駆け込んできた。

「ルディ様!女王陛下からの指令です」

 使用人は女王の印の押された手紙を差し出した。ルディは中身を確認する。手紙には、国境付近の山にモンスターが現れたと書いている。

「メテオライト辺境伯の領地‥」

 ルディは地図で場所を確認した。

「メテオライト辺境伯の領地なら、我が国との国境付近だ」

 オニキスが身を乗り出した。

「騎士団が到着し次第、出発します。オニキス王子はここにいてください」

 ルディは着替えを済ますと勇者の剣を手にした。

「私も行く」

 オニキスは離れたくない一心で言った。

「相手はモンスターですよ?ドロニノ共和国の時のようにはいきません。危険です」

 ルディはオニキスに背を向ける。

「私は武芸はいまいちだが、霊感で戦いを有利にはできる。邪魔にはならないようにするから!」

 オニキスは諦めなかった。ルディは軽くため息をつくと、振り返った。

「仕方ないですね。私達は運命共同体。一緒に戦いますか」

 ルディはオニキスに手を差し出した。オニキスはその手を取ると嬉しそうに微笑んだ。

 ルディとオニキスはルシフォールの元を訪れた。

「女王からの指令が出たことは聞いている。まさかオニキス王子まで同伴するとは思わなかったが‥婚約者なら止めるわけにもいかない。気をつけて行ってくるように」

 ルシフォールが二人に祈りを捧げた。そして教会に騎士団が辿り着くと、二人は騎士団と共に国境を目指したのだった。

旅立ったルディとオニキス。勇者としての初めての役目を無事に果たすことができるのか。

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