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ルイーゼの傷を治せない理由は何なのか。勇者の剣が語る過去は‥

 ルディは自室に篭った。セシルはルイーゼの負傷を聞き、ルイーゼの元に駆け付けている。

「ルディ様、こちらが届いております」

 使用人が手紙を差し出した。アルタイ王国の紋章が刻まれている。ルディはすぐに手紙を開封した。中には手紙と共に、一枚のしおりが入っていた。しおりには押し花が貼ってあり、微かに香る。ルディはオニキスの気遣いに癒された。

「もうすぐオニキス王子がエスケルに来るようよ。妹君がエスケルにいるのを連れ戻す為に」

「妹?オニキス王子は下から二番目の王子で、妹というと末の王女様ですね。病弱なのか公の場に顔を出したことがないとか」

 ルディは、ドロニノ共和国との戦争の終盤に本陣でクリオラを見ていた。遠目にだが、病弱には見えなかった。

「それはクリオラ姫が聖女だったから。世間から隠す為に公の場には立たせなかったんでしょう。クリオラ姫は先日、ロードナイト王子と婚約が決まった。婚約者の顔でも見に来たんじゃないかな」

「ええっ!!末の姫様がクリオラ姫なんですか!!」

 使用人達は王家の婚約話に話を弾ませている。そんな中、使用人を束ねる侍女長が現れた。

「ルイーゼ様が何者かに襲われたと言うのに、何を話しているのですか!!」

 使用人達は口を噤む。ルディは侍女長に尋ねた。

「ルイーゼの具合はどう?」

 侍女長の顔が曇る。侍女長は一旦息を飲むと、静かに語り始めた。その場に緊張が走った。

「ルイーゼ様のお怪我は、表面的な物は大神官様のお力で治癒できました。しかし‥アキレス腱の断裂はどうにもならず、立つことができないようです‥」

 その言葉に、部屋にいた者達は閉口した。

「お父様の力が効かないと言っていた。過去に前例はある?」

 ルディの問いに侍女長は俯いた。

「私が知る限り、初めてでございます‥」

 ルディは、教会の書庫に向かった。

『お父様の力は、聖女から譲り受けた力。それが効かないなど、何か原因があるはず』

 ルディは書庫にある歴代の聖女についての書物を開いた。初代以外は、愛の力を持った聖女はいない。フェニックス、ドラゴン、獅子、ユニコーンを使役する聖女ばかりだ。フェニックスにしか癒しの力を持たない為、ルディはフェニックスの聖女について詳しく読んだ。しかし、治癒できなかった例は書かれていない。

 ルディは部屋に戻った。そして普段は首から下げているオニキスからもらった指輪を左手の薬指にはめた。青い宝石が煌めいている。その瞬間、勇者の剣が光を放った。

「え???」

 触ってもいない、話しかけてもいないのに反応した剣に、ルディは驚いた。そして剣を手に持った。

『勇者ルディよ‥。お前は本当に多くを背負った勇者だ‥』

 ルディの頭に声が響き渡る。他の者には聞こえていない。

『今、お前が指にはめた指輪‥。それは聖女の力の効力を消す指輪だ』

 ルディは指輪を見た。古いが宝石の輝きは強い。

「これは、オニキス王子のお母様の家に代々伝えられた指輪。聖女とは関係ないはず‥」

 ルディは薬指を握りしめた。

『‥我が娘マーガレットは、聖女の力を受け継いだ。聖女ではないが、力はあった。今の教皇のように。そして成長したマーガレットが恋に落ちたのは、我が息子ディバインだった。二人は姉弟と知らずに、異国の地で恋に落ち、マーガレットはその力でディバインの心を自分だけの物にした』

 剣が淡い光を放ち、ルディのサードアイにその光景を映し出した。仲睦まじい二人の姿が見える。

『それぞれ国に戻った二人は、結婚の意思を親に伝えた。そこで二人は、姉弟と知ることになる』

 映像には、嘆き悲しむマーガレットと、呆然とするディバインが映っている。

『神々は、聖女の力で心を操作されたディバインに気付き、この指輪を与えた。そうして、マーガレットへの想いが、小さな恋心程度に戻ったディバインは、マーガレットに別れを告げた。そしてディバインの子孫にその指輪が受け継がれたのだ』

 ルディは指輪を見つめた。オニキスは勇者の子孫。絡み合った系のような運命に、ルディは翻弄されまいと気合いを入れた。

「つまり私は聖女の娘で、オニキス様は勇者の子孫なのですね」

『そのようだ』

「先程、私の妹が誰かに襲われて負傷しました。その傷を、父が治そうとしましたができませんでした。その理由はわかりませんか?」

 ルディはついでとばかりに尋ねた。

『‥聖女の力が治せない傷は、聖女によってつけられた傷のみ。他に前例はない』

 その言葉にルディは衝撃を受けた。剣からは光が消えていく。ルディは剣を元の場所に戻すと、ルシフォールの元に向かった。ルシフォールは神官達とルイーゼの傷の治療方を模索していた。

「お父様‥」

 ルディの声にルシフォールが振り向く。ルシフォールの顔は疲れていた。ルディはルシフォールの耳元で囁いた。

「勇者の剣が言っていました。聖女によって付けられた傷は、聖女の力では癒せないそうです」

 今の聖女は王女クリオラ。クリオラが教皇の娘を襲ったとなれば、国際問題になる。ルシフォールは、周りにいる神官達に聞かれないように、ルディだけを連れて奥の間に入った。

「聖女が攻撃をした?ルイーゼの話では、相手はルディ、お前を狙っていたというが‥」

「聖女は私が邪魔なのかもしれません。もうすぐオニキス王子が、クリオラ姫を連れ戻す為にエスケルに来るので色々聞いてみます‥」

 ルシフォールとルディはとりあえずオニキスの来訪を待つことにした。

「お父様にも治せないなんて!」

 ルイーゼが泣きながら癇癪を起こしている。セシルは必死に宥めた。

「ルイーゼ、ルシフォール様はきっと治してくださる。その方法を探しているから落ち着いて」

 セシルの言葉も今のルイーゼには入らない。教会が騒めく中、オニキス王子はエスケル王国の首都に辿り着き、教会に向かったのだった。



オニキス王子の来訪。クリオラはおとなしく連れ戻されるのか??

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