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クリオラはエスケル王国に侵入した。ルディは、初代勇者から、過去の勇者と聖女の話を聞き‥
エスケル王国では、ロードナイトが王になる勉強に励み、インカローズ はマナーや楽器などを習っていた。ウルアクは二人の子供の成長を微笑ましく見守っている。すると、外が騒めいた。ウルアクが窓から下を見ると、アゼツライトが王配宮に帰宅していた。昨夜は外出していたようだ。ウルアクは悔しそうにアゼツライトを見ている。
「また‥ブラヒン公爵家に行っていたのね‥」
アゼツライトはブラヒン公爵家の出身だ。その為、ブラヒン公爵家に行くのは自由だった。今のブラヒン公爵は、アゼツライトの愛人のララが産んだアタカマナイトだ。アタカマイトはまだ10歳の為、後見人が付いていた。その後見人はサントーバン公爵家の者である。
「このままでは、サントーバン公爵が多大な力を手にしてしまう‥」
ウルアクは何度もアタカマイトの暗殺を図ったが失敗していた。アタカマイトは王族の血を引いていないが、二つの公爵家の血を引き、腹違いの兄弟が王族だ。ウルアクは、いずれロードナイトにとって災いになるのではないかと懸念していた。
アゼツライトはウルアクが、ララやアタカマイトを憎んでいるのを知っていた。夫の愛人とその子を憎まない妻はいない。しかし、愛のない結婚を強いられたアゼツライトは、初めて愛した女性を諦めることができなかった。
クリオラはそんなエスケル王国の痴情を知っていた。そこでまず、アゼツライトを味方につけようとした。ウルアクはクリオラとロードナイト王子の結婚を望んでいる。味方に引き込むのは無理だ。ルディは教皇の娘。いきなり攻撃するのはリスクが高すぎる。クリオラは、アゼツライトを待ち伏せした。クリオラはルディを暗殺したい。アゼツライトは妻子を守りたい。互いの条件をのむことで、二人は手を組んだ。クリオラはしばらく、アゼツライトの宮殿で外国の客人という形で滞在した。
その頃、ルディは剣の訓練と共に、剣を通して天の声を聞く日々を過ごしていた。
『ルディよ。この国は対外的には平和である。故に多くの役割はないと思われるが、大きな仕事はあるようだ』
剣からの言葉にルディが反応する。
「大きな仕事?」
『この話を歴代の勇者にしたことは無かった。しかし、今の聖女は再び勇者と関わろうとしている。お前に真実を見せよう』
剣の声がそう言った瞬間、ルディの眉間に強い光が放たれ、ルディは意識を失った。
「ダイオジェナイト!」
金髪の美しい少女が、若い騎士を呼んだ。騎士は振り返る。騎士の髪は銀色で、顔立ちも整っている。ダイオジェナイトと呼ばれた騎士は、剣を鞘に納めると少女に跪いた。
「聖女様、どうされましたか?」
「もう!そんな堅苦しくしないで!!私だって、いきなり初代聖女だなんて言われてびっくひしてるんだから。私はしがない子爵令嬢よ。王宮の騎士団長の貴方の方が身分は高いわ」
この年に、教会は天啓を受けた。それは愛の女神の力を宿す聖女がめざめる、という物だった。そしてお告げ通り、エスケル王国の子爵家の令嬢の腕に聖女の証の紋章が現れ、聖女と認められたのだった。
「私と二人の時は名前で呼んで」
聖女がダイオジェナイトにすり寄る。ダイオジェナイトの中のときめきが増幅し、鼓動が高鳴った。
「ロシレム‥」
ダイオジェナイトは照れながら名前を呼んだ。ロシレムは嬉しそうにダイオジェナイトに抱きついた。
そのシーンの後、ダイオジェナイトは聖女に認められた騎士として、勇者の称号と剣を天から与えられる映像があり、更に場面は進んだ。
ダイオジェナイトとロシレムは結婚し、一人の子に恵まれた。その辺りから、ダイオジェナイトの様子がおかしくなってゆく。ロシレムに冷たくなり、外で他の女性と恋に落ちた。
「ロシレム、君の聖女の力は人の心を操る。誰もが君に惹かれ、君の下僕になる。それは私も同じだった。そうだろう?マーガレットが生まれ、聖女の力がマーガレットに移った為に、私の心は君の力から逃れた。私は君を愛してなどいなかったんだ!」
ロシレムはダイオジェナイトに縋り付く。
「愛の女神が私に授けた力は、気に入った男の心を手に入れられる物。それが聖女の力なのに!」
ダイオジェナイトはロシレムを振り払うと、そのまま家を出ていく。泣き崩れるロシレム。愛する人と新たな生活を始めるダイオジェナイト。
映像はそこで終わった。ルディは何とも言えない気持ちになった。
「つまり‥初代の勇者は、聖女に心を操られていた、ということ?」
『そうだ。そして神々はこの失敗を繰り返さぬように、愛の女神の力を持つ聖女の誕生をやめた。代わりに聖女は神獣の加護を持つようになったのだ。聖女を捨てた私に、神は聖女とその子供と生涯会うことができない結界をはった。そして人々に聖女こそ地上で最も尊敬すべき存在で、勇者は二の次だと擦り込ませたのだ』
ルディは、ダイオジェナイトとロシレムの間に生まれた子供が気になった。
「その子、マーガレットがダイオジェナイト族の始祖ですか?」
『そうだ。娘が裏切り者の父の名を忘れぬように聖女が付けたらしい。聖女の血を受け継いだ娘は、愛の力を操れる一族として名を馳せた。最も、聖女とは違って、何とも思っていない感情を愛に変えることはできない。あくまでも、好意を膨らませる力だ』
ルディは教会に来て、過去に両親の間に起きた事件の話を聞いていた。アグダルの力は正に、始祖マーガレットから受け継がれた物に間違いなかった。
『今回、勇者と聖女が再び出会い、争いが起きるだろう。神々は静観している。龍を遣う勇者と、同じく龍を遣う聖女の戦いだ』
ルディは衝撃を受けた。突然、争いを告げられても理解できない。
「何故??聖女は、アルタイ王国のクリオラ姫では?クリオラ姫はいずれこの国の王妃となられるはず。エスケル王国とアルタイ王国に戦争が起きるのですか?」
剣から光が消えた。これ以上、未来のことは話せないというかのようだ。ルディは呆然と立ち尽くした。
「‥自分で解決しろってこと?」
ルディは大きなため息をついた。そして来る戦いに備える為に、剣の訓練に励んだのだった。
聖女との戦いに備えるルディ。二人の対決はいつになるのか‥!




