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聖女はエスケル王国に戻るのか。オニキスはルディを恋人にできるのか??

 翌日、ウィドマンとオニキスは王城を訪れた。女王ウルアクは、ルシフォールを隣に座らせてそれを迎えた。

「我が国の聖女を、アルタイ王国の王女として育てていると聞きました」

 ウルアクが書状を見ながら言った。ウィドマンは臆せずに応える。

「我が国との国境の山に捨てられていたんです。そのままにしておけば死んでしまう。子ができないことで悩んでいた妃の子にして育てようと考えたのですよ」

 ウィドマンはシナリオ通りに説明した。

「その子が成長して聖女と分かったが、そのタイミングでドロニノとの戦争が始まり報告が遅れたということですね」

 ルシフォールが話を合わせた。

「ウィドマン王が、聖女の命の恩人であることは分かりました。しかし、聖女はエスケル王国の者。早急にお返し願いたい」

 ウルアクがウィドマンに迫った。

「クリオラは我が国の王女として教会でも登録されている。お返しすることは、我が国としては考えていません」

 ウィドマンは断った。その瞬間、場の空気が凍りついた。エスケル王国の者達が、ウィドマンを睨みつけている。ウルアクは怒りを抑えながら、ルシフォールに話しかけた。

「教会としてはどうお考えか?聖女をアルタイ王国に起き続けることを、神はお許しになられるのか?」

 ウルアクも成人して立派な女王になっている。簡単に宥められる相手ではない。ルシフォールは困っていた。

「ウィドマン王が救っていなければ、聖女は死んでいた。覚醒していない赤子に助かる術はない。そう言った意味では、返せ、とは言えないが‥」

 ルシフォールはウィドマンから目を逸らした。

「ロードナイト王子と、クリオラ王女を結婚させる、ということでエスケルに返せば、問題ないと思いますよ」

 周りから拍手が聞こえた。ロードナイト王子はまだ14歳で婚約者はいない。クリオラは18歳で年上になるが、無理な年齢差ではなかった。

 ウィドマンも、クリオラがアルタイの王女として輿入れし未来の王妃になるのなら、妥協するしかないと考え頷いた。

「ロードナイトの妃か‥。それは良い提案だ。ウィドマン王。両国の平和の為にもこの婚約をおし進めよう」

 ウルアクも賛同した。こうしてこの日、両国の婚約が当事者不在の状況で決まったのだった。

 ウィドマンは婚約の書類を持ち、足早に帰国した。オニキスは教会で学びたいと望み、一月ほど滞在することになった。

「ロードナイト王子が婚約したの!お相手は聖女なんて素敵だわ」

 ルイーゼが婚約話に花を咲かせている。

「立て続けに聖女が現れるなんて。その聖女はドラゴンマスターらしいわ」

 セシルは戦える聖女がどんな女性か気になっていた。聖女と言えば、大半は癒し系だ。戦える聖女の話は少ない。

「クリオラ姫は病弱だと、ほとんど姿も見せなかったらしいから、そんなに強くないのかもね」

 そこにオニキスがやってきた。オニキスの後ろにはルディもいる。それを見たルイーゼの顔が曇った。

「クリオラは弱くなんかない。強力なドラゴンマスターだ。クリオラの力で、ドロニノの魔獣の軍を一掃したと聞いている」

 オニキスがクリオラを庇護した。血は繋がっていなくとも、兄妹として育った。オニキスには家族としての愛情があった。

「ご、ごめんなさい。バカにするつもりはなかったんです」

 ルイーゼが慌てて弁明した。ルイーゼはオニキスのそばに寄った。そして執拗に近づくと、甘えた口調でオニキスに媚びた。オニキスはそれを不快そうにかわすと、セシルの前に進み出た。

「セシル様、私はルディに命を救われました。そしてそんなルディに惹かれています。私とルディの関係を認めて下さい」

 オニキスは跪いた。アルタイ王国の王太子が、教皇の妻に跪く。それは通常、ありえない光景だ。

「オニキス王子、立って下さい」

 セシルの言葉でオニキスは立ち上がった。ルディはオニキスの斜め後ろで俯いている。耳は紅潮していた。そんな娘の様子を見たセシルは、安心して微笑んだ。

「ルーシーのことを、女性として愛して頂けるのでしたら、どうぞ宜しくお願い致します。夫には私から伝えますね」

 セシルはオニキスに手を差し出した。オニキスはセシルの手に敬愛の口付けをした。その姿を、ルイーゼが睨みつけている。ずっと憧れていた隣国の王子。その恋人に、双子の姉が選ばれたのだ。それも、男のような身なりをして、庶民として育った女が。ルイーゼは納得できなかった。

 その頃、ウィドマンはアルタイ王国に辿り着いていた。ウィドマンはすぐに、王妃とクリオラを呼んだ。

「クリオラ、お前の婚約が決まった。相手はエスケル王国のロードナイト王子だ」

 クリオラの顔色が急変した。

「何故ですか?私は聖女としてこの国に残るのではないのですか!」

 クリオラは幼い頃から、聖女だと言われて育った。そして両親とは血が繋がっていないことも知っていた。

「私はずっとオニキスお兄様をお慕いしてきました!他の男の妻になんてなりません!!」

 クリオラはそう言い残すと、部屋を飛び出して行った。

「陛下‥」

 ミルビリリが不安そうにウィドマンを見た。ウィドマンはため息をついている。

「クリオラがオニキスを男として意識していることには気づいていた‥。放置していたのは、いずれオニキスの妃となって聖女として我が国の力となってくれればいいと考えたからだ。その為にクリオラを対外的には出さず、顔を知る者はわずか、という状態にしていたのだが‥」

 ウィドマンの中に、クリオラを別人としてオニキスの妃にする計画もあったのだ。しかし、クリオラのことが世界に知られ、エスケル王国から返せと言われた今、それは果たせなくなった。次の計画は、クリオラが納得しない。ウィドマンは頭を抱えた。

 

クリオラとルイーゼが慕うオニキス。そのオニキスが愛するのはルディだけ。聖女と双子の妹の憎悪がルディに向けられる。

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