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ルディはオニキスを守るために傷を負う。二人は助かるのか?

「‥痛‥」

 ルディは目覚めた。背中の傷が痛む。

「私はディーヴァに刺されたはず‥」

 ルディは記憶を辿った。オニキスを庇い、背に刀疵を負った。その傷が手当されているようだ。

「目が覚めたのか!」

 寝台の横の椅子で寝ていたオニキスが駆け寄った。

「痛みは?」

 オニキスは心配そうにルディの背中を見つめている。ルディは俯いたまま黙っている。

「痛むのか?戦場には神官は呼べない。医師が傷を縫った。もうしばらく我慢してくれ」

 オニキスがルディを労る。

「‥見たのですか‥」

 ルディがやっと口を開いた。気まずい空気が流れる。しばしの沈黙の後、オニキスは応えた。

「見た。女の身で戦い、私を守ってくれたことに感謝している」

 オニキスは誠意を持って頭を下げた。

「‥私は女として生きてはならないのです」

 ルディは低い声で呟いた。その表情は暗く、心に闇を抱えているかのように見えた。オニキスは思わずルディを抱きしめた。

「その苦しみから私が解放してやることはできないか?私は王子だ。それなりの力はある。命の恩人であるお前の為なら、なんでもしよう」

 その瞬間、オニキスの脳裏にルディの過去のビジョンが多量に映し出された。赤子の頃から母に男子として扱われ、男子だと言われて育った過去。その数々の場面が、オニキスには見えた。

 ルディはただ、涙を流して黙っている。オニキスはそんなルディをずっと抱きしめていた。

 ルディが泣き止むと、オニキスはルディの前に跪いた。

「お前の背中の傷は、私が父に話し、必ずや神官に消してもらう」

 神官の力は、各国の王族か、有力な貴族しか使えない。ルディのような一般人が頼めるようなものではなかった。オニキスはそれをすると約束した。

 オニキスはウィドマンの天幕を訪れた。ウィドマンは朝から酒を飲み上機嫌だ。これが城なら周りに女を侍らせているだろうとオニキスは思った。

「父上、昨夜、ディーヴァが私を狙って侵入しました」

 ウィドマンは驚いて立ち上がった。

「その報告は受けておらんぞ!」

 ウィドマンは怒り、オニキスに近寄った。

「して‥そなたは無傷か?ディーヴァはどうなった!ライラも逃亡し、未だ捕らえられていない」

「ディーヴァは死にました。私が倒しました。しかし‥ディーヴァの剣から私を守ったルディが、ディーヴァの剣を受け、怪我を負いました」

 ウィドマンは安堵しながらも、状況を怪しんだ。

「それならば何故、昨夜の内に報告に来なかった?」

 オニキスは毅然とした態度でウィドマンを見上げた。

「ルディの傷を第一に考えました。私を庇い、命を助けてくれた者を救いたい。その一心でした」

 ウィドマンは納得した。

「なるほど。そなたは部下の命を重んじる好き主君というわけだな」

 ウィドマンは未来の王の誠実さを評価した。王は時に冷酷であることが評価されることもある。優しさと甘さは表裏一体。ウィドマンは一抹の不安を感じながらも、オニキスを許した。

「父上。クリオラのことでこの後、エスケル王国を訪れると聞きました。どうか、私とルディも同行させてください。そしてルディの傷を、神官に治療させてください」

 オニキスはウィドマンに懇願した。ウィドマンはそれには納得がいかなかった。

「たかだか一兵卒に‥神官の力など、使えない。男が刀疵の一つや二つ、あるのは普通だ」

 ウィドマンはそう言うとオニキスに背を向けた。

「父上!!ルディは、男ではありません!女なのです!」

 オニキスがウィドマンを引き止めた。

「女?女が男の身なりで剣を扱うなど‥。ルディはドロニノ共和国の者か?確か、そなたと同じように種馬として捕らえられていたと聞いたが‥」

 ウィドマンはルディの姿形を思い浮かべた。ルシフォールに似た人間。男だから、他人の空似と思っていた。しかし、ルディは女だと言う。ウィドマンの中に一つの答えが見えた気がした。

 オニキスはウィドマンに、ルディから見えたビジョンの内容を説明した。

「きつい顔立ちの美人の母親が、女の赤子を男として育てていた映像か‥。その母親、髪の色は?」

「黒髪です。瞳は濃い青です」

 ウィドマンは確信した。

「ルディを教会に同行させてやる。ルディの傷の治療をしっかりして体調を調えろ。栄養のある物をルディに与えるんだ」

 態度が急変した父を、オニキスは呆気にとられて見ている。

「何をしてるんだ!朝食はまだだろう。ルディに朝食を用意させろ」

 ウィドマンはそういうと、教会に手紙を書き使者を出したのだった。


 


 


ルディの正体に気づいたウィドマン。ルディはこれからどうなるか??

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