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ルシフォールとセシルは二人の子供に囲まれ、穏やかな生活を送っていた。二人は、誘拐された子のことを忘れてはいなかった‥

 教会では今日もベルゼがルシフォールに教えを受けていた。まだ13歳のベルゼは遊びたくて仕方ない。

「こら、しっかりしないか!お前と同じくらいの王子も王女も立派になられているのに」

 従兄弟と比べらてベルゼは拗ねた。 

「ロードナイト王子は未来の王。インカローズ王女も他国に嫁ぐでしょうし、私とは立場が違いますよ‥」

 ベルゼは従兄弟達と自分の立場の違いをアピールした。

「‥教皇は、世界の王達と肩を並べる存在。ただ、王のような権力を持っていないだけだ。どの王も、教会の許可無しには結婚を認められないし、離婚もできない」

 ルシフォールが息子を諭した。

「父上は以前、この国の王太子だったのに悔しくないんですか?」

 ベルゼは不満そうに呟くと、ため息をもらした。

「父上も叔父上も欲が無さすぎる」

 ヘンブリー大公は結局独身を貫いた。母親のせいで女性を愛することができなくなり、アグダルのせいで男性にも嫌悪感がある。唯一心がときめいた女性は聖女で、兄の妻である。

「お父様、ベルゼ!お母様がお菓子を焼いから休憩をしましょうって」 

 ルイーゼが大声で呼びにきた。淑女としての品位に欠けるがルシフォールは注意しなかった。

「姉上にだけ甘いんだから‥」

 ベルゼはそうぼやくと、母の待つ部屋に向かった。ルイーゼはルシフォールと共に向かう。

「ねぇ、お父様。ウィドマン王が久しぶりに来るんでしょう?何年ぶりかしら」

 ルイーゼははしゃいでいる。

「ウィドマンが王座についたのが3年前。3年ぶりだな。楽しみなのか?」

「3年前に王太子になったオニキス王子。素敵な方だったわ!」

 ルイーゼは頬を赤く染めた。ルシフォールは焦る。

「ルイーゼ、アルタイ王国はやめておけ。アルタイの男達は節操がない」

 ルシフォールの困惑した表情をよそに、ルイーゼはうっとりとオニキスを想像した。オニキスは今、22歳だ。どんな素敵な青年になっているかと期待度が高まる。しかし、今回、エスケル国に来訪するのはウィドマンだけだ。オニキスはドロニノ共和国との和平交渉の話し合いに招かれていた。

「早くいらっしゃい。お茶が冷めてしまうわ」

 セシルが二人を呼んだ。ベルゼは既に食べ始めている。テーブルの席には、ルシフォールとセシル、そしてベルゼとルイーゼの他にもう一杯の紅茶が用意されていた。それは双子の姉の分だ。ルシフォールとセシルは、拐われた子をルーシーと名付け、いつ帰ってきてもいいようにルイーゼと同じ数のドレスなどを用意していた。

 四人は午後のひと時を、家族団欒でゆっくりと過ごしたのだった。

 

 ブレインビュー男爵家での生活が始まり、クリスタの暮らしぶりは贅沢になった。一方、ルディは剣の腕を磨くのに切磋琢磨していた。

「ルディ、ジュエラントの森の奥に剣聖と呼ばれた武人が住んでいる。そこを訪ねて、この奥義書を返してきてくれ」

 ルディの師範バストが、丸められた奥義書を手渡した。ルディは素直に頷いた。ジュエラントの森は、馬でも5日はかかる。チンターマニ王国とドロニノ共和国の国境にある山だ。

「シルビアには私から伝えておく」

 バストは若かりし頃、一時期だがクリスタの恋人だった。その関係から、ルディを弟子にすることになったのだ。クリスタと別れた後も、ルディの才能を見込んで師匠を続けていた。バストだけはルディが女性であることを知っている。

 その日、ルディはジュエラントの森を目指して、一人で旅だったのだった。

 

一人で旅立ったルディ。そこで彼女を待ち受けるものは??

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