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双子の姉を拐ったクリスタ。クリスタは異国の地で生活をしていた‥

 それから18年の月日が流れた。女王とブラヒン公爵が結婚して12年が経ち、二人の間には王子と王女が生まれていた。女王が成人してからは、ヘンブリー大公はフカンの地に行き、ゲベルカミル大公に代わってその地を治めた。ゲベルカミル大公が死んでからは、大公邸は執事のビンスクが残った僅かな使用人と共に管理していた。ゲベルカミル大公の資産のほとんどは王家に取り上げられた為、嘗ての豪華さはない。女王は、ヘンブリー大公に、後見人を務めた謝礼も兼ねてそれなりの資産を渡した。それにより、フカンの地は活気を取り戻したのだった。

 教会では、ルシフォールの息子ベルゼが未来の教皇を目指して修行中だ。ベルゼの姉ルイーゼは超よ花よと育てられ、少し我儘なお嬢様気質に成長していた。その我儘も、ルイーゼが可愛くてたまらいルシフォールは黙認していた。

 平和なエスケル王国の隣国であるチンターマニ王国は、農業国である。主な輸出品は農産物や薬品で、長年戦争もなく平和な国である。エスケル王国、チンターマニ王国、アルタイ王国は三国同盟を結び、互いに侵攻しない約定を締結していた。

 そんなチンターマニ国の国境添いの町に、クリスタは住んでいた。クリスタは金で戸籍を買い、今はシルビアと名乗っている。

「シルビア、デートしてくれよ」

 40歳を過ぎてもまだ美しいクリスタの元には、男が頻繁に訪れた。クリスタはこの国に移り住んでからは、男達に貢がせて暮らしていた。

「嫌よ、トマス。私は今、恋人がいるの」

 クリスタが素っ気なく返事をすると、トマスは怒って家に踏み込んだ。

「今まで散々金を払わせといてなんだ、その言い方は!」

 トマスはクリスタの腕を掴んだ。

「痛い!」

 クリスタが叫ぶと、部屋の奥から人影が現れた。

「母様を離せ!!」

 若い男が剣を向けた。トマスは剣に驚き後ろに下がった。

「ルディ、お前、いたのか。剣技を学びに師匠についてると聞いてたが」

「ああ。もう、免許皆伝だ」

 ルディは不敵な笑みを浮かべた。トマスはルディを恐れて去っていった。

「ルディ、たまには役に立つわね」

 クリスタが素っ気なく言った。ルディは寂しそうな目をして立っている。幼い頃からクリスタはルディに厳しかった。

「!!ルディ!胸が緩んでるじゃないの!」

 クリスタはルディの胸ぐらを掴んだ。

「お前は男として生きるの!一生、私の騎士として生きるのよ!その為に育てたんだから」

 ルディは、クリスタと自分に血のつながりがないことを知っていた。ルディは女だが、幼い頃から男として育てられた。髪は後ろに一つにくくり、胸にはサラシを巻いていた。

「そうそう、お前に伝えておかないと‥。私、ブレインビュー男爵の愛人になったの。だから男爵家の離れに引っ越すのよ。お前のことは、私の騎士として連れて行くから」

 クリスタは嬉しそうに準備を始めた。公爵家から持ってきた資産が底をついて数年が経つ。持っていく物は少なかった。

 ブレインビュー男爵は、この辺りの町を治める貴族で、輸出入の商売もしている為、羽振はよかった。身分が高くないので、王都に呼ばれることはほとんどない。

「おお!!シルビア、よく来てくれた。さあ、こちらに!」

 ブレインビュー男爵がクリスタを歓迎した。ブレインビュー男爵の成人した息子ニールは、忌々しそうにクリスタを見ている。ブレインビュー男爵夫人は邸内で愛人の来訪を、断腸の思いで受け止めていた。

「‥よくも愛人などを我が家に‥」

 怒り狂う男爵夫人に、召使い達は近寄れずにいた。

「お母様、男はどうして一人の女性を大切にできないの?」

 15歳の男爵令嬢メアリが泣きながら尋ねた。今年デビュタントを控えた男爵令嬢だ。婚約する日も近い。しかし、父の愛人騒動で、結婚に対する憧れは皆無となっていた。

「リンダ!」

 ブレインビュー男爵が妻を呼んだ。

「どうして出てこない!今日からシルビアが我が屋敷に住むと伝えただろう!男爵夫人として挨拶をしないか!」

 愛人に挨拶をしろと言われた男爵夫人の顔は、怒りで真っ赤になった。

「お父様!!愛人をこの家に入れるなんて、ひどすぎます!」

 メアリが母親を庇った。しかし、ブレインビュー男爵は平然としている。

「メアリ、貴族の結婚とはそういうものだ。結婚は契約。恋愛はよそでするもの。人が人を愛するのは自然の摂理。どの貴族もしていることだ。お前の通う学校にも、婚外子が何人もいただろう?」

 開き直る父親をメアリは軽蔑した。確かに、貴族の夫婦で愛し合っているカップルは少ない。それでも、あからさまに波風をたてるのは納得ができなかった。

「愛人を作ったから怒ってるんじゃない。この家に入れたことを怒ってるのに‥」

 メアリがそう言うと、ブレインビュー男爵はメアリの頬を叩いた。

「貴族の娘に生まれたからには、貴族のしきたりを覚えておけ。シルビアは客人だ。失礼な態度は許さないからな」

 ブレインビュー男爵はクリスタを別邸に連れて行った。クリスタを迎える為に色々用意された別邸は、本邸なみに豪華だ。クリスタはそれなりに満足していた。元々が、ブラヒン公爵令嬢だ。ブレインビュー男爵がどんなに頑張っても同じレベルにはできない。クリスタはそれを理解していた。

「男爵様、ありがとう」

 クリスタは嬉しそうにブレインビュー男爵にしなだれかかる。ブレインビュー男爵は嬉しそうにクリスタを抱きしめた。

 ルディは別邸の一階の奥の部屋を与えられた。今まで暮らしていた家より快適だ。ルディはベッドに腰を下ろした。

「ここも‥いつまで持つかな‥」

 ルディはそう言うと一眠りした。クリスタとルディはこうしてブレインビュー男爵家で生活することになった。

 

 

 


双子の姉は異国で男として育ち、妹は教会で我儘に育った。二人の邂逅の時は来るのか??

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