表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/126

3

笑真の本心が明らかに‥

この世界で主人公たちが暮らすのは、エスケル王国。エスケル王国の貴族の中で、ブラヒン公爵家は王家に継ぐ権力を持っていた。笑真はそのブラヒン公爵家の令嬢、クリスタに転生していた。笑奈は転生ではなく、憑依に近い形でこの世界を生きることになったが、小説を知らない笑真は転生という形でこの世界に存在した。

「公女様、おはようございます」

メイドの声に、笑真は目を開けた。

「え??私‥クリスタ?笑真??」

 起床と同時に二人の人物の記憶が頭に浮かんだ。エスケル王国の尊い家系に生を受け、我儘放題に生きてきたクリスタとしての記憶。そして日本に生まれ、双子の姉と比較されながら生きていた二階堂笑真としての記憶。

「え??何、どういうこと??」

 クリスタは頭を抱えた。

「公女様は3日前、お屋敷の庭の落雷の音に衝撃を受けて気を失われて、今まで意識が戻りませんでした」

 医師らしき人物が説明をした。

「私は‥クリスタなのに‥。この記憶は何?前世の記憶?」

 混乱し、青ざめるクリスタに医師は気付け薬を処方した。

「ゆっくり召し上がってください」

 クリスタは素直に口に入れた。薬草の臭いがきつい。口に含むと、何とも言えない苦味が広がった。

「まずい!」

一口でカップを放り投げた。メイド達が慌てて片付ける。高慢で我儘なクリスタにはいつものことであり、周りは驚かない。医師は何を言われるかと恐れ慄いている。今までのクリスタなら、このような場合、鞭打ちなどを平気でしていたからだ。

「もういらないから下がりなさい。私は平気よ」

 クリスタはそう言い放つだけだったので、人々は胸を撫で下ろした。メイドや医師が立ち去ると、クリスタは頭を抱え込んだ。

「どういうこと??確か、私は笑奈と隕石に押しつぶされて死んだはず‥。その後に、クリスタに転生したの?」

クリスタはマジマジと鏡に映る自分を見た。紫色の長い髪、赤い瞳など、日本人、いや地球人にはあり得ない色だ。そしてクリスタとしての記憶。幼い頃からこのエスケル王国で蝶よ花よと育てられたのも事実なのである。

クリスタは、二階堂笑真という日本人だった、という前世の記憶を取り戻したのだと認識した。

「私が転生したってことは、笑奈も??でも、生まれ変わっていたとしても今回は私と双子ではないのね」

クリスタは冷笑を浮かべた。

「笑奈、私はあんたが嫌いだったわ。頭がよくて何でもできて。親もおじいちゃん、おばあちゃんも皆、あんたばかり可愛がってた。だから私は他の人に愛されたくて努力した。その結果、隕石の事故になんか巻き込まれて死んでしまったけど。今回の人生には私の邪魔をする姉はいない。今度こそ幸せを掴んでやるんだから!」

クリスタはそう言うと、机の上に山積みになっている手紙を一つずつ開封し始めた。

「王子様からのお見舞いの手紙はこれだけ?他の方々は複数なのに」

クリスタは不満気に言った。ルシフォール王太子とクリスタは婚約関係にある。クリスタは記憶を取り戻す前からルシフォール王太子を愛していた。

「昨日までの私には、愛されスキルがなかったからうまくいかなかったのよ。でも、笑真としての記憶を取り戻した今、男を口説き落とすなんて簡単。ルシフォール王太子もすぐに私に本気にさせてみせるわ!」

クリスタの赤い瞳が野望に燃えている。

そんなクリスタの様子を、水晶玉でセシルは見ていた。

「ふふ‥。お馬鹿さんね、笑真。あなたの得意とした愛されスキルは、悪役令嬢にはないのよ。悪役令嬢は一生懸命頑張って、賢くなって誠実に生きないと幸せを掴めないの。何もしなくても愛されるスキルは聖女の専売特許。だからこの世界のあなたにはそれを渡さなかった」

 私は笑真が私を羨んでいたなんて知らなかった。私から見たら、面倒くさがりで何も努力せず、可愛げだけで世の中を渡り、楽な人生を生きた人だったから。努力もせずに勝手に恨んで、姉妹の恋人を横取りするなんてあり得ない。私は笑真の本心を知ってもなお、彼女を許すことができなかった。

クリスタと、セシル。そしてルシフォールはいよいよ顔を合わせるのか。断罪イベントはいかに??

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ