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アグダルと同じ一族の者が現れた。復讐に燃えるルシフォールは力を蓄える。ゲベルカミル大公は王座に着実に近づいていく。

 ルシフォールは母親の処刑を直接見なかった。人混みに紛れて密かに見ることもできたがあえてそれはしなかった。ルシフォールの暗殺も試みていたような母親でも、情のようなものがあったのか。ルシフォールは外のことには意も介さず、ひたすらフェニックスの力を磨いた。 

「ルシフォール殿下、よろしいですか?」

 アーレスが一人の神官を連れてやって来た。異国の出身のようだ。

「私はダイオジェナイト族の末裔です」

 神官は深く頭を下げた。

「ダイオジェナイト族!?はるか昔、人の想いを操り、子孫をも作り出せたという‥」

 ジェパラと違い、ルシフォールは王族の歴史をよく学んでいた。

「はい。私はその力を少しだけ持っています。私には、人の感情を操作したりはできませんが、遺伝子が共鳴する相手を見ることができます」

『DNA鑑定みたいなものかしら‥』

 私は興味を持って耳を傾けた。

「世間でまことしやかに噂されております第二王子殿下の出生のことですが‥」

 ルシフォールが動かしていた手を止めた。

「第二王子殿下は、国王ガヴァリエール陛下と、王妃ジェパラ殿下の子供です。決して、ゲベルカミル大公のお子ではありません」

 私達は全員驚いた。当時、王妃とゲベルカミル大公が密会していたのも、第二王子がゲベルカミル大公にそっくりなのも事実だからだ。

「あんなにゲベルカミル大公に似てるのに?」

 私は思わず口走った。皆、同じ思いのようだ。

「恐らく、作為的に作られたお子なのでしょう」

「つまり、他にもダイオジェナイト族の末裔がいるということですか?」

 アーレスが尋ねた。神官は黙って頷く。

「王妃様がゲベルカミル大公の不義の子を産んだようにみせた者がいるはず‥。ただ、ダイオジェナイト族は数百年も前に追放され各地にバラバラになり、混血が進んだので見た目では判断できません。私がその存在がいると確信したのは、第二王子殿下と国王陛下の身体の周りに浮かび上がるオーラが同じで共鳴していたからです」

「オーラの共鳴が親子関係を証明するのですか?」

 アーレスが尋ねた。

「ダイオジェナイト族の手によって作られた生命は、特殊な光を放っているのです。ダイオジェナイト族にかつて、神がいてその血をダイオジェナイト族の者が引いているからでしょう」

 流石は小説の世界だ。聖女がいるなら神もいる。私が読んだ時はこの小説にダイオジェナイト族は出てこなかった。

「ミシェールがゲベルカミル大公の子であると都合がよい人物がいたということか‥」

 ルシフォールはゲベルカミル大公を疑っているようだ。

「でも、おかしくないですか?不義の子と疑われた方がいい、のはどうして?ゲベルカミル大公は不義の子の父と貴族達に噂されて北の地に籠ったんですよね?」

「いつか反乱を起こす時に、母を引き込む為ではないか?」

 ルシフォールは、王妃がミシェールを見ることでゲベルカミル大公を思い出していたのをずっと見て来た。

「なるほど‥」

 ルシフォールの一言に皆、納得した。

「第二王子殿下は今、ゲベルカミル大公の監視の元、王宮内に蟄居の身とか。実子でもないのに何故、ゲベルカミル大公が第二王子殿下を生かしているのかわかりませんが」

 アーレスが不思議そうに言った。

「ゲベルカミル大公は実子だと思っている可能性もあると思います」

 神官が意見した。

「ダイオジェナイト族の力を持つ者が、ゲベルカミル大公に黙ってしたことかもしれない、というのね」

「単に皆殺しでは民からの支持を集められないからではないか?ミシェールは民に人気がある」

 夜も更けたので、結論が出ぬまま私たちは各自の部屋に戻った。ルシフォールは部屋に戻ってもまだフェニックスの力を出す訓練をしている。訓練の結果、自らの剣にフェニックスが巻き付くようになった。まるで不動明王の倶利伽羅剣のようだ。倶利伽羅剣には龍が巻き付いている。

「明日、国王陛下達の葬儀が開かれますね。国民はルシフォール様も葬儀で送られる側だと思って、今日も弔問に来ていたようです」

「私のは、死んで日にちが経ち、腐敗が始まったからということにして空の棺を置いているだけだがな」

 ルシフォールは汗を拭きながら腰掛けた。イケメンは汗の匂いさえいい。私はうっとりと浸ってしまった。

「明日葬儀が終われば、ゲベルカミルは王位に就くと神殿に宣言しに来る。その時に、奴を倒す」

 ルシフォールは硬く拳を握りしめている。もう、むざむざと殺されはしないという気概に満ちていた。

「ゲベルカミル大公は王家の護衛を連れています。大公家の騎士達も、傭兵達も集まっているとか‥。気をつけてください」

 私は不安気にルシフォールに寄り添った。ルシフォールは優しく肩を抱き寄せる。

「私がゲベルカミルを倒したら、結婚しよう。私はお前を妃に迎える」

 ルシフォールはそう言うと私の唇を奪った。私達は何度も熱い口付けを交わしたが、それ以上の関係には進まなかった。それは私達の中に、ゲベルカミルを倒してから全てを始めようという想いがあるからだ。セシルとしての私は処女である。二階堂笑奈の私は経験はあるが、篤だけなので経験値は低い。これが、クリスタやウィドマンだったらすぐにでも身体を重ね合わせたことだろう。

 ふと私はクリスタの様子が気になった。無理矢理成立させたであろうミシェールとの婚約。それも今やフイになってしまったからだ。

「ゲベルカミル大公は、ミシェール王子を殺すつもりはないようだ」

 ブラヒン公爵が安堵している。ミシェール王子が処刑なら、婚約者であるクリスタも処刑されるのがこの世界の通例だからだ。

「お父様、明日、ウィドマン王太子殿下が葬儀に参列なさると手紙が参りました」

 クリスタがウィドマンからの手紙を差し出した。王家の紋章が押された立派な封書である。

「もはやミシェール王子と婚約していても、未来はない‥。婚約は破棄し、他の嫁ぎ先を探すとしよう」

 娘がウィドマン王太子と親しいことに狙いを定めた公爵は素早く婚約破棄の書状を書き、王宮に届けさせた。

「‥ブラヒン公爵め。ミシェールが王位に付かぬと判断した途端に婚約破棄の書状を送ってきおったわ」

 ゲベルカミル大公は書状を放り投げた。

「ミシェール。お前には、ゲベルカミル大公領をやろう。私が王になり、お前が大公。大公妃は自分で好きな女を選ぶがいい。腹黒いブラヒン公爵などとは縁がない方が気楽だ」

 ゲベルカミル大公はミシェールを我が子だと思っている。その為、父親らしい部分も見せている。王位は渡すつもりは毛頭ないようだが。

 こうして、明日開かれる盛大な葬儀を前に、各々の思惑が蠢いていた。

ゲベルカミルとルシフォールの対決は?ルシフォールが生きていたことでエスケル王国は大騒ぎとなり‥

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