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新国王を決める議会で繰り広げられた裏切りと人々の欲望。次の王に選ばれたのは‥?

「次期国王を決める前に皆に申しておきたいことがあります」

 王妃が立ち上がった。貴族達は全員注目する。

「昨日、第二王子ミシェールと、ブラヒン公爵令嬢の婚約が決まりました」 

 辺りは騒めいた。

「逸早く手を打つとは‥」

 ブラヒン公爵の派閥でない年頃の令嬢を持つ高位貴族達は不満気である。

「先の国王陛下の次子で王妃である私の子。そしてブラヒン公爵令嬢を妻にするミシェール王子こそ、次代の王に相応しいのではありませんか?」

 王妃が毅然と言った。貴族達は黙って聞いている。

「私ブラヒン公爵と、この家門は全て、王妃様のご意志に賛同致します」

 ブラヒン公爵が書面を差し出した。明らかに過半数を超えている。ブラヒン公爵と敵対する貴族達は悔しそうに首を傾げた。王妃とブラヒン公爵がミシェール王子の即位決定をしようとしたその時、ゲベルカミル大公が声を上げた。

「前国王陛下を弑した罪人、王妃ジェパラを捕らえよ!」

 ゲベルカミル大公の命令に騎士達が動く。

「離せ!何をするのです!!ゲベルカミル大公、気でも狂われたか??」

 王妃は騎士に取り押さえられながらも抗い、叫んだ。ゲベルカミル大公は冷徹な表情で王妃を一瞥すると、ユニコーンの指輪と毒薬の瓶を証拠品として見せた。

「この瓶に入っていた毒は外国の毒。即死するほどの効力があると医師の調べは付いている。そしてその毒がこの指輪にも付いていた。この毒も指輪も、王妃の部屋から見つかった」

 ゲベルカミル大公の言葉に、周りは騒めいた。王太子を嫌っていた王妃。国王を愛していなかった王妃。王太子、国王、そして側妃二人の産んだ王子も二人亡くなった。全ては第二王子を王位に着けようと考えた王妃の策略かと皆が思った。

「ゲベルカミル大公、私を騙したのですか?何故!」

 王妃がゲベルカミル大公にくってかかった。

「王妃はご乱心だ。地下牢に閉じ込めよ」

 ゲベルカミル大公は王妃が多くを語る前に皆の前から追い出した。

「こうなってはミシェール王子に王位を、というのはどうだろう‥」  

 サントーバン公爵が声をあげた。サントーバン公爵はゲベルカミル大公の従兄にあたる。すると、ブラヒン公爵と敵対する貴族達が皆、サントーバン公爵に賛同した。

「王位を継ぐに相応しい王子はもういない。ということは、先先代の王子であるゲベルカミル大公殿下が王位に着くに相応しいのではないか」

 イミラック侯爵が言った。ブラヒン公爵は何も言えずに会議の場を過ごすしかなかった。結局、国王を決定する会議では、ゲベルカミル大公が国王になるということで議決した。

 本日の会議には入らないように言われていたミシェール王子は、部屋の中で仕事をしながら時を過ごしていた。そこに、クリスタが現れた。

「ミシェール殿下」

 クリスタは菓子を用意していた。

「少し休憩なさいませんか?」

 メイドたちが素早くお茶の用意をした。

「公女、私は今朝、我々の婚約について母から聞きました」

 ミシェールが顔を少しだけ赤らめながら言った。ミシェールはまだ19歳で恋愛経験はあまり無かった。クリスタはうぶなミシェールを可愛く思った。同じ王子でも、ルシフォールは女に無関心で王太子としてのお役目が一番、ウィドマンは女慣れしている女たらし、それがクリスタの判定だった。

『この王子なら私に夢中にさせて、私がこの国で一番の女になれる』

 クリスタの目が野望に燃えている。

「私、ウィドマン殿下とは手も繋がないままでしたの。ミシェール様とは愛を育みたいと思っています」

 クリスタはミシェールに寄り添うと、手を握った。ミシェールは緊張の余り固まっている。その時、外が急に騒がしくなった。

「何だ?外がうるさいな‥。今は議会が開かれている時間なのに‥」

 ミシェールがそう言うと、扉が開き騎士達が部屋に入ってきた。

「ミシェール殿下。王妃様が国王陛下暗殺の疑いで捕らえられました。あなた様も加担した可能性があります。取り調べがありますのでこちらへ‥」

 騎士達は呆然とするミシェールを強引に連れて行った。残されたクリスタは顔面蒼白である。

「そんな‥。ミシェール様は国王になるんじゃないの‥?」

 クリスタはガクンと膝をついてその場にしゃがみこみ、暫く動くことができなかった。そこに父親のブラヒン公爵がやって来た。ブラヒン公爵は娘を立たせると、手を引き急いで馬車に乗り込んだ。

「お父様‥。ミシェール様が連れて行かれてしまいました。一体どう言うことなんですか?」

 クリスタは真っ青になり、ガタガタと震えている。ブラヒン公爵の顔色も悪い。

「国王陛下の暗殺は、王妃の仕業だったのだ」

 ブラヒン公爵の表情は暗く、ひどく落胆している。

「あの王妃が‥まさか国王暗殺などという大事を起こすとは」

 ブラヒン公爵は、王妃ジェパラの勢力は大したことがないと、たかを括っていた。王妃の実家であるセイムチャン伯爵家は今もそこまでの権力はない。力のなかった伯爵家が、王妃の実家となったことでそれなりの力は得たが、公爵家や侯爵家に比べたらまだまだである。

「王妃様が一人でしたのかしら?国王陛下だけを王妃様が?」

 クリスタの問いかけにブラヒン公爵は手を止めた。

「確かにおかしい‥。国王は王妃の仕業としても、王太子は北の地での病死。第三王子と第四王子はプロの仕業の暗殺。一人でここまでできるだろうか‥」

「王太子様が病死されたことで、他の王子達に王位をとられたくなくて、国王と二人の王子を殺したのでは?」

 クリスタは深く考えずに言った。

「王妃がそう考えるだろう、と思わせようとしている者がいる‥」

 ブラヒン公爵の頭に、一人の男の顔が浮かんでいた。

「しかし‥我が一門の力だけでは、今のあの男には勝てない‥。下手に動けばこちらが潰される‥」

 ブラヒン公爵はしばらく黙った。馬車の中に沈黙が広がる。

「クリスタ。今回の王家のことは、他言ならぬ。先程のような発言もしてはならない。我が家は何も知らない。それを徹底するのだ」

 ブラヒン公爵は、厳しい顔つきで言った。クリスタは詳細は分からないが、まずい事態だと言うことは理解した。

「ミシェール様も捕まったのですよね?私の婚約はどうなるのですか?犯罪者の妻なんてごめんです」

 中世ヨーロッパや中国などもそうだが、罪人の出た家は一族郎党皆殺しが基本である。クリスタにそんな知識はなかったが、本能で恐れを感じていた。

「婚約は破棄だ。まだ結婚したわけではない。妻なら同罪になるが婚約者は他人。お前のことは私が守る。心配はいらぬ」

 ブラヒン公爵は不安に怯えるクリスタの肩を優しく抱いた。

『私は絶対に素敵な人と幸せになるの!帰ったらすぐ、アルタイ王国に手紙を出すわ!ウィドマン王太子なら私を助けてくれる。うまくいけば、ウィドマン王太子の妃になれる。いや、なってみせる!』

 クリスタは生き残り、幸せを掴む為に頭をフル回転させた。そして帰宅すると、ウィドマン王太子宛に助けて欲しい、会いたいと綴った手紙を書いたのだった。

クリスタの手紙がウィドマンを呼ぶのか。捕まった王妃と第二王子の行く末は‥。

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