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ゲベルカミル大公の指示を果たすために王妃は動きはじめた。フカンの地では閉じ込められた聖女を、専属騎士が救う。ゲベルカミル大公の計画はうまくいくのか‥

 王都が王太子の死で混乱する中、セシルの専属騎士であるユリウスはフカンの地を目指していた。王太子の騎士団が守護して行われたフカン遠征に、ユリウスは参加を認められず、教会に待機させられていた。そして今、王太子の死という事件が起き、聖女からの連絡は途絶えた。ユリウスは聖女に何かが起きたと思い、自らフカンの地へ旅立ったのだった。一日中馬を飛ばしたユリウスが目的地に辿り着いたのは、その日の夕暮れ時だった。全く休まずに進んだ為、馬は疲弊しきっている。ユリウスは馬に水と食料を与えると、馬を引きながら歩き始めた。

「ゲベルカミル大公の屋敷は高台にあるらしい‥」

 ユリウスは道すがら、人々にゲベルカミル大公邸の場所を聞きながら歩いた。そうして日が沈む前に到着すると、門番に話しかけた。

「私は聖女セシル様の専属騎士です。聖女様にお会いしたいのだが」

 門番達は首を横に振り、ユリウスの進行を阻んだ。

「聖女様はお役目を果たしておられる最中。いかなる者も通すならと言われている」

 門番達は、ゲベルカミル大公に聖女を誰にも会わせぬよう言われていた。

「私は専属騎士。聖女様をお守りする者です。お役目の邪魔などしません」

 ユリウスがいくら粘っても、門番達は門を開くことはなく、ユリウスは追い返された。

『おかしい‥。セシル様は聖女として民衆の前に姿を現して直接お救いになられていると手紙には書いてあった。それなのに誰にも会えない?そんなはずは‥」

 ユリウスはゲベルカミル大公家の対応を怪しく思い、深夜に忍び込むことにした。

 その頃私は、食事を出され見張られていた。何をするのも監視が付く。食事も喉を通らない。何とか早く抜け出さねばと気だけが焦る。そんな私の前に、フェニックスが姿を見せた。

『そうだ!クロロホルムを使えば!!』

 私はフェニックスにクロロホルムを作り出してくれるようイメージを飛ばした。大きな瓶にたっぷり入ったクロロホルムが現れた。私は自分の口に布を当て、大量のクロロホルムを部屋にぶちまけた。メイド達がバタバタと意識を失う。そして私はわざと大きな悲鳴をあげた。

「きゃー!!!」 

 悲鳴を聞いた扉の前の護衛達が一気に部屋に駆け込む。そして次々と意識を失って倒れていった。

 私は隣の部屋に入り、その部屋にあった真っ黒い男性用のマントを羽織って外を目指した。護衛達は眠らせたものの、屋敷内には大公家の使用人が沢山いる。夜更けなので大方部屋に戻ってはいるが、全く誰もいないわけではない。私は足音を立てずにそっと歩いた。 

「静かにしろ!」

 背後から突然捕まれ、小刀を首に当てられた。

『見つかった!!』

 脱出は失敗か。何とか逃れる方法はないかと考えていると、私を掴んでいる腕が緩んだ。その隙に私はその者から逃れようと腕を振り払った。

「セシルお嬢様」

 ユリウスが跪いた。

「ユリウス!!来てくれたの!?」

 思わぬ味方の来訪に、肩の力が抜ける。

「王太子様のご遺体が戻ったのにセシルお嬢様は戻らず、手紙も途絶え、何か不測の事態があったのではないかと‥」

「そうなの。王太子殿下を殺したのはゲベルカミル大公よ。ゲベルカミル大公は王位を狙っている。だから私を閉じ込めたの」

「そんなことが‥!!とりあえず、ここを脱出しましょう。詳しくは後ほどお聞きします」

 そう言うとユリウスは、侵入してきた通路を戻り、テラスにくくり付けた縄を私を抱えてつたい、地に降りた。こうしてゲベルカミル大公邸を脱出した私たちは、ユリウスの馬に乗り王都を目指した。そして帰路でユリウスに、ゲベルカミル大公の野望について話した。

「セシルお嬢様を妃に、というのは教会の後ろ盾や、国民の支持を得る為でしょうね。妻ではなく、妃と言う所をみるに、ゲベルカミル大公が次の王位を狙っているのは明白」

 ユリウスに支えられながらとはいえ、初めての乗馬には苦労した。バランスを崩せば落馬してしまう。私は必死にユリウスに捕まっていた。

「いくら王太子殿下を殺しても、まだ国王陛下はご健在。しかも他に王子もいる。どうやって王位に就こうとしているのか‥」

 夜が明け太陽が完全に昇る昼頃に、私とユリウスは王都に到着した。そして周りに見つからないようにそっと教会に向かうと部屋に戻った。

「聖女様??お戻りになられたのですか?」

 神官の一人が驚いて言った。

「シッ!黙って。私が戻ったことはまだ内密に。教皇様を呼んできて。教皇様にも私がいることは周りに言わないように告げてね」

 神官はボロボロな姿の私をみて、緊急事態だと察知したようだ。黙って頷くと足早にアーレスを呼びに向かった。

「教皇様、少し宜しいでしょうか?」

 下位の神官が教皇に話しかけることなど滅多にない。

「何かありましたか?」

 教皇は神官の側に歩み寄った。神官は緊張で震えながら、たどたどしく小声で答えた。

「聖女様がお戻りです。教皇様をお呼びするよう言われました」

 教皇はそれを聞くと足早に聖女の部屋に向かった。神官は役目を終えたが、聖女がいるということを秘密にしなければならない緊張感で汗をかいている。

「聖女セシル‥」

 アーレスが扉の前で声をかけてきた。私は安堵して扉を開けた。

「随分な姿ですね」

 アーレスは何もかも分かっているような口調で言った。

「番人、あなたはゲベルカミル大公が王位簒奪を企んでいることを知っていたんでしょう?」

 私は怒りが抑えられなかった。

「ええ。‥でも私は言いましたよね。この世界で起きることに私は干渉できないと」

「確かに言っていたわ‥。でもヒントくらいくれても‥」

 私が納得がいかずにぼやいていると、アーレスは神殿を指差した。

「あそこの祭壇に、ルシフォール王太子のご遺体が安置されてますよ」

「今はまだ沢山の人がいる‥。夜になるのを待つわ」

 私はそう言うと、アーレスを追い出した。

「ユリウス、貴方も部屋に戻って疲れを癒して。これを飲んでね」 

 私はユリウスに栄養ドリンクとビタミン剤を渡した。勿論それは私が作り出した物だ。 

 その日の夕方、国王は王妃や側妃、王子達と晩餐をとっていた。

「陛下。この後、王太子を悼んで思い出話を致しませんか?」

 王妃が珍しく国王を誘った。王太子を失った悲しみに沈む国王は、そんな王妃の申し出を嬉しそうに承諾した。

「王太子が生まれた年のワインを用意して運んでくれ」

 皆の前で国王がワインの指定をした。その後、国王と王妃は国王の部屋に向かった。国王には専属の騎士がつき、王妃には侍女がついているので二人きりではない。王妃はそれが狙いだった。

 国王と王妃の盃にワインが注がれた。王妃は指輪の角をスッと押してその手で国王に盃を手渡した。そして自分の盃は別の手で持ち、国王と盃を合わせて乾杯をした。二人はそれぞれのワインを一口飲んだ。王妃は素早く右手の指輪を外してそれを懐に隠した。

「グフォッ‥」

 国王がいきなり血を吐いて倒れた。

「陛下!!」

 王妃が叫んだ。王の部屋にいた者達は驚き、混乱した。

「医師を呼べー!!陛下が毒を盛られた!!」

 護衛の騎士達は、国王をベッドに運んだ。国王付きの医師がすぐに駆けつけたが、その時にはもう、王の息は途絶えていた。

「陛下ー!!」

 王妃は泣き崩れた。王太子の死に続き、国王の毒殺。王宮はパニックに陥った。

「いよいよ死んだか‥。あの女もやっと役に立ってくれたな‥」

 側近から逸早く国王の死の報告を受けたゲベルカミル大公が嬉しそうに言った。

「もう少し。もう少しで玉座は我の物となる」

 ゲベルカミル大公が満足気に悦に浸っていると、そこにフカンの地からの急使が訪れた。

「大公殿下!!聖女様が逃走されました!何者かが手引きした様子!付近をくまなく探しましたが見つからず、移動は一人ではないかと」

「!!!愚か者どもが!!たかだか女一人捕まえておけんのか!」

 ゲベルカミル大公は知らせを伝えた配下を切り捨てた。

「聖女がおらねば私の計画は狂う‥」

 ゲベルカミル大公は悔しそうに唇を噛み締めた。血が滲む。その夜、ゲベルカミル大公は傭兵達に聖女の行方を探すよう指示を出した。

 その日は、国王暗殺でエスケル王国は眠れぬ夜となった。

国王崩御、エスケル王国の次代は。

そして聖女セシルがしようとしていることは?

聖女としての力が奇跡を起こすのか‥

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