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やっと主人公2人がラブラブに!!!

ルシフォール王子は聖女を選び、悪役令嬢と隣国の王太子は断罪イベントに導かれる。

「大公殿下、明日には邪魔者はいなくなります。すぐに計画を実行なさいますか?」

 ビンスクが側に控えて言った。

「せっかくドロニノ共和国から熱病に感染させる蚊を密輸したのだ。もう少し、聖女としての働きを見せてもらおうではないか」

 ゲベルカミル大公はセシルを見つめた。

『王宮に忍ばせている者からの知らせで、聖女が現れたことを知り、更にそれがフェニックスマスターと聞いた。手っ取り早く聖女を呼び寄せるには病が必要だった』

 ゲベルカミル大公は、聖女を呼び寄せる為に病気を発生させたのだ。この国では知られておらず、感染が進む病気。ドロニノ共和国で住数年前に流行った蚊から感染する熱病を、ゲベルカミル大公は利用した。ドロニノ共和国とは交信がある。ゲベルカミル大公は、大公家の者たちにだけドロニノ共和国に生息するヒメハギ科の木の煎じ薬を飲ませて感染しないようにした。

 翌日、クリスタを送り出すのは大騒ぎだった。

「ルシフォール王太子殿下、必ずやすぐに戻ってきてくださいませね!!私、待っております!」

 クリスタはルシフォールにも共に首都に戻るよう何度も言ったようだ。しかし、王太子としての責務に重きを置くルシフォールはそんな言葉には耳を貸さない。クリスタは泣く泣く一人で首都に帰って行った。

「ウィドマン殿下、こちらも準備が整いました!」

 アルタイ国の騎士達が軍馬に乗り集まっている。道中のモンスター対策に魔導士も数名連れて来ているようだ。

 ウィドマンは軍服を着て、真っ黒い軍馬に跨った。流石は男主人公、と言わんばかりの美丈夫ぶりだ。私が恋愛経験豊富なタイプなら、ウィドマンに惚れてしまうかもしれないと思った。

「セシル‥」

 ウィドマンが私を見ている。私はウィドマンに貰った桜貝をいくつか繋いで腕輪にした。それを身につけた右腕を軽く振った。

「ウィドマン王太子殿下、道中、お気をつけて」

 桜貝に気づいたウィドマンの顔に笑みが零れた。

「私もまたこの国に参るつもりだ。その時を楽しみにしている。そなたはこの地の病気平癒を一日も早く実現して欲しい」

 そう言うとウィドマンは、ルシフォールの方を向き、軽く頷くとアルタイ国への帰路についた。

「‥‥やっと帰ったか‥」

 ルシフォールがため息混じりに呟いた。友人であるウィドマンが帰ったのが嬉しそうに見える。その感情が、ルシフォール自身初めての経験で理解できていなかった。

 クリスタとウィドマンが去っていくのを、ゲベルカミル大公は満足気に見ていた。この時はまだ、私はゲベルカミル大公の企みに気づいておらず、面倒な高貴な来客が減ったことを単純に喜んでいるのだろうと勝手な推測をしていた。

 その後、私とルシフォールは山小屋の療養所に向かい、重篤化した患者がいなくなったと報告を受けた。新たな感染者も出ていないようだ。薬とワクチンが効いたのだ。人々は聖女の奇跡と噂し、私を崇め始めた。

「聖女様!兄の熱が下がりました!!ありがとうございます!」

「うちは危篤状態だった父が、峠を越えました!滋養を付けて養生すれば元気になるだろうと医師に言われました!」

 人々は私に感謝しながら報告をした。ルシフォールは満足気にそんな様子を見ている。将来、自分が治める民達が元気になったのが嬉しいのだろう。小説のルシフォールはそこまでの人格者ではなく、聖女が病を治療しに各地に向かうと、その尻に付いてまわっている、という感じだった。私が読んだ小説のルシフォールと、この世界のルシフォールは別人だと改めて認識した。

「よくやってくれた、セシル」

 ルシフォールが柔らかな笑顔を浮かべた。こんな優しい顔で話しかけられたのは初めてだ。金髪碧眼の美しい顔立ちに胸がときめいた。

「あと数日様子を見たら、我々も王都へ戻ろう」

 ルシフォールは優しい口調で言った。ウィドマンがいる時には見せたこともない雰囲気だ。

「はい!そうですね」

 私が返事をしながら振り返ると、ルシフォールの視線が私の右腕に集まっていた。

「先程から気になっていたのだが‥桜貝で作られた物など、持っていたか?」

 桜貝はこの世界では採れる地域が限られている。ルシフォールはそれがフカンの桜貝だと気づいたようだ。

「‥これは‥‥ウィドマン王太子殿下が下さった貝をつないで作りました‥。アクセサリーを全く持っていないので‥」

 クリストファー男爵家とはほぼ断絶。教会は贅沢品は悪と考える場所。私はこの世界に着て、アクセサリーを身につける機会はほとんど無かった。招待された夜会などには、借り物を身につけていたのだ。

「そんな物を身につけるな」

 ルシフォールは私の右腕を掴むと、腕輪を引きちぎった。桜貝がパラパラと舞いながら地面に落ちた。

「ひどいじゃないですか!」

 せっかく苦労して手作りしたのに、一方的に壊された私はルシフォールに反抗した。が、王室冒涜罪とかで処刑される?と気づき、言った瞬間、青ざめた。肩を震わせ俯く私に、ルシフォールは近づいてきた。斬られるのかと身体に力が入った。

しかし、ルシフォールは斬りつけるのではなく、自らの金の腕輪を外して、私の腕にはめた。

「少しゆるいだろう。王都に戻ったらきちんとしたのを贈る。今はそれで我慢してくれ」

「え??」

 ずっしりと重みのある金の腕輪には、沢山の宝石も埋め込まれている。

「セシル‥。私は今、ようやく自分の気持ちに気づいた」

 ルシフォールの瞳が憂いを帯びている。

「私は、愛など王族には不要だと信じて成長した。女は権力に集まる。男を人として見ない。だから、私も女を愛することはなかった」

 ルシフォールは父親の愛が、母親を傷つけて苦しませてしまったことを憎んでいた。そのせいで母親から愛されずに、疎まれて育ったのだ。無償の愛を注いでくれるはずの母でさえ、息子を殺そうとし、疎んでいた。それがルシフォールの精神から愛を失わせたのだろう。

 ルシフォールは私に近づきながら話を続けた。

「ウィドマンがセシルを愛していると、求愛するたびに私の胸にどす黒い物が立ち込め、イライラして仕方なかった」

「‥それは嫉妬です」

 私は思わず声に出した。ルシフォールは何度も頷く。

「そう‥。これは嫉妬。私が初めて経験した嫉妬は、弟に対してだった。母の愛を一心に受ける弟、ミシェールへの嫉妬は幼い私を蝕んだ」

 ルシフォールは自分の胸に手を当てた。

「その苦しみから逃れる為に、私は愛を捨てた。諦めたのだ」

 次の瞬間、ルシフォールの腕が私を包み込んだ。突然のこの状況に私の胸は高鳴り、心臓は高速で脈打った。

「その捨てた愛を、そなたが思い出させたのだ、セシル」

 ルシフォールは強く私を抱きしめた。私もルシフォールの腰に手を回し、しっかりと抱き合う。

「愛している」

 ルシフォールははっきりと愛を口にした。

「私もです。私も愛しています、ルシフォール殿下」

 私が愛に応えると、ルシフォールは感極まった様子で、何度も何度も私を抱きしめ、頬に、首筋に、そして唇に口付けをした。何年も抑え込んでいた感情が解き放たれたからか、反動が大きい。私は二度の恋愛経験はあったが、身体の関係があったのは後の方だけ。真山とキスはしたことがあったが、こんな熱いものではなく、軽い挨拶のようなキスだった。

 互いに想いを打ち明けた私たちは、ゲベルカミル大公邸への帰路についた。今までは向かい合わせに座っていた馬車の座席も今は隣同士だ。ルシフォールは私の肩を抱き寄せ、大切な物を守るように優しく包み込んだ。

「王都に戻ったら、父上に婚約のことを話す。公女とは婚約を解消せねば‥」

 ルシフォールの表情が曇った。

「ルシフォール殿下?」

 私は不安気にルシフォールの手を握った。

「公女を傷つけてしまうのが、やはり気になってな。そなたを愛しているとわかった以上、公女とは結婚しない。しかし、それは公女を傷つけることになる‥」

 クリスタに対して気を遣っているルシフォールに私は真実を話した。

「ルシフォール殿下が罪悪感を感じることはありません。公女とウィドマン王太子殿下は不義密通を繰り返しています。教会の水晶には映像を記録する力があります。お疑いならその光景をお見せしましょう」

 アーレスに渡されたクリスタを映し出す水晶が役にたつ。ルシフォールは驚いたような、傷ついたような複雑な顔をした。

「私の婚約者と、私の友人が‥か‥。確かに怪しいと思う時はあった。まさか2人がそんな裏切りはしないと信じて追及しなかった‥」

 落ち込むルシフォールを私は慰めた。

「私がいます。ルシフォール殿下には私が」

 私はルシフォールを抱きしめた。ルシフォールは幼子のように私の胸に頬をよせ、一粒の涙を零した。

「私にはセシルがいる‥」

「そうです。ルシフォール殿下を裏切っていた公女への罪悪感はいりません。堂々と婚約破棄をしましょう」

「ウィドマンを巻き込んだ断罪イベントになるな。アルタイ王国は男女関係に甘い国。ウィドマンの評判が下がることはないのでやりやすい」

 こうして私達は、馬車の中で断罪イベントの計画をしながらゲベルカミル大公邸に戻ってきた。そこに大きな罠が待ち構えているとも知らず‥。


想いが通じ合った2人に忍び寄るゲベルカミル大公の罠。ゲベルカミル大公の野望は動き始めた。

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