100
記念すべき100話は、最大の敵の誕生回になり、主人公は出てこず‥。
魔塔では、フィリフォームとチャロアイトの結婚式が密やかに行われていた。魔女や魔導士は表立って行動しない。王侯貴族と金銭により契約して動くのみだ。その為、一般人は魔塔の存在も魔女や魔導士のことも知らなかった。
魔塔主は大悪魔を呼び出して二人の結婚を承認させた。魂と血の契約だ。破ることは叶わない。つまり離婚はできないということだ。チャロアイトは嬉しそうに指をナイフで傷つけると、悪魔の盃に血を垂らした。フィリフォームもそれに続く。そうして二人は夫婦となった。結婚証明書にはロードナイトのサインがある。
その夜、チャロアイトは窓から夜空を眺めながら幸せに浸っていた。
「王子が扱いやすい奴で助かった。フィリフォームと結婚できるなんて、ラッキーだ」
チャロアイトは飛び跳ねている。今夜のチャロアイトは初夜に備えて魅惑的な服を身につけていた。
「ついでに魅惑の魔法も使うかな」
チャロアイトはベッドに魔法陣を描いた。そこにフィリフォームが入ってきた。
「何をしてる?」
フィリフォームはすぐに脱げるような簡易的なガウンを羽織っている。チャロアイトはフィリフォームに抱きついた。そして二人はベッドに横になると熱烈なキスを交わし、抱きしめ合った。チャロアイトは積極的に身体を開きフィリフォームを受け入れる。フィリフォームはチャロアイトと繋がると、その情熱をチャロアイトの身体に注いだ。
「ふぅ‥」
行為が終わると、チャロアイトは子供のように意識を失い眠ってしまった。フィリフォームはそんなチャロアイトを確認すると服を羽織り、ベッドから立ち上がった。
「フフ‥。計画通りだ」
フィリフォームの全身から黒い闇が放たれる。その禍々しい魔力は人の物とは思えない。大悪魔と遜色ない力を察知した魔塔主がフィリフォーム達の部屋に駆け込んできた。
「何事じゃ??」
魔塔主は息を切らしている。高齢な身体では、魔塔の中を走ってかけつけるのは苦労する。しかも、夫婦の初夜の部屋への突撃である。身体も心も躊躇しながらの行動となった。
「ご老体、わざわざ駆けつけましたか」
フィリフォームが不敵な表情で出迎えた。
「フィリフォーム、お前、何をした‥??」
魔塔主は青ざめた顔でフィリフォームに近寄った。フィリフォームの腕に触ろうとすると、電撃のような衝撃に弾かれる。
「触るな、無礼者が」
フィリフォームは魔塔主を睨みつけた。魔塔主は状況を理解できずに狼狽している。
「私は魔王となった。エスケル王国の王室に保管されていた古い書物に、遥か昔、魔王が現れた記述があるんだ。それをロードナイトが見つけて私に教えた」
「王室図書館の書物にそんな物が‥!!」
魔塔主は、魔塔に秘密にされた書物が存在したことに驚き、悔しさを隠せなかった。
「魔導士の力を手放した器が、魔女と血の婚姻をし、魔女と繋がることで魔女の力を全て吸収し魔王となれる、と書物に書かれていた。ロードナイトは私に提案してきたんだよ。私を魔王にする代わりに、勇者を妃にすることに協力しろとな」
「ロードナイト王子が!?ではチャロアイトはどうなったのじゃ?」
魔塔主はベッドに眠るチャロアイトに目を向けた。チャロアイトは静かに眠りについている。
「魔王を生み出す為に使われる魔女の命は生贄として消える。チャロアイトはもう死んでいる」
フィリフォームは平然と言い放った。
「我が孫娘を生贄にしたか!!」
魔塔主がフィリフォームに攻撃した。しかし、魔王であるフィリフォームに、年老いた魔塔主の魔術が効くはずがない。魔塔主の術は簡単に打ち消された。
「魔塔は今まで、散々罪のない人間達を生贄にしてきた。それを自分の孫だからと文句を言うのか?」
フィリフォームは嘲笑を浮かべている。
「お前にもう用はない。魔塔は私が統べる。死ね」
フィリフォームの手から大きな刃のような影が現れ、魔塔主の首をはねた。魔塔主の首が床に転がり、身体は前に倒れた。首からは血が流れ、床に血の池ができている。
「魔塔の者たちよ!よく聞け!今日より魔塔は魔王が統べる!異議がある者はかかってくるがいい!」
脳内に直接届けられた魔王の声に、下級魔導士や下級魔女達は従い、頭を下げた。こうして魔塔はフィリフォームの手に落ちたのだった。




