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異世界転生が大好きです。姉妹がそれぞれに転生したらどうなるか書きたくてはじめました。初めてなので手探りですが、お手柔らかにお願いいたします。

 私、二階堂笑奈は、成績優秀で責任感も強く、人からは信頼されていた。一卵性の双子の妹の笑真は、お洒落で可愛らしい性格から異性にモテていたが、努力を嫌う所があった。つまり、私たちは、一卵性で見た目はそっくりだが性格は似てない姉妹だった。

 高校時代、私は学年一位の成績で生徒会長をしていた。その頃、副会長をしていた真山湊と意気投合し、次第に付き合うようになったが、彼はある日突然、別れを切り出した。

「同じ見た目なら、可愛い笑真ちゃんの方が癒されるから。笑奈といると劣等感があって疲れるんだ。ごめん」

そう言って、真山は笑真の元に去って行った。まあ、成績優秀な彼と、成績の悪い笑真の交際など、進学する大学が違う時点で長続きはしなかったわけだが。

 そして成人して、私も笑真もそれぞれ就職をして今に至る。理系の大学の薬学部を出た私は、製薬会社の研究員として日夜研究を重ね、実績を残していた。同じ会社の営業マンの富田篤とはそろそろ結婚の話も出ている。

「二階堂さん、このサンプルのデータ、解析して明日までに提出できる?」

チーフの三笘さんが一枚の紙を持ってきた。

「三笘チーフ、今日はちょっと用事があって残業できないんです。すみません。明後日で大丈夫ならやります」

「いや、いいよ。他の人にしてもらう。いつも二階堂さんの仕事が早くて完璧なもんだからついつい頼んでしまうんだよね。悪い、悪い。こういうのは均等に振り分けないとね」

いつもなら断らないのだが、今日だけは違う。今日は私の誕生日で、篤が食事の予約をしていると連絡があったからだ。もしかしたらプロポーズされるかもしれない。いつもは一つに束ねた髪で化粧も最低限度な私だが、今日だけは髪を結ばず、華やかな口紅を付けてきた。

 定時になり、私は早々に会社を後にし、待ち合わせのレストランに向かった。少し早く付いたのでまだ篤は来ていない。予約の時間までまだ時間があるので席に座り小説を取り出した。その小説は今流行りの異世界転生物で、趣味の少ない私の唯一の楽しみである。この小説も聖女により断罪イベントが発生し、婚約破棄される公爵令嬢クリスタが、悪役という立場を払拭し、隣国の王太子と幸せを掴むと言ったベタな内容である。ありきたりな話だが、迫害される者がその知恵を使い幸せを掴む所に私は共感するのだ。いわば心の栄養である。

「待たせてごめん」

背後から声がした。篤だ。しかし1人ではない。

「笑奈ちゃん、またそんな本読んでるの?好きだねー」

半分バカにしたような口調で笑真が言った。満面の笑みで抱きつきながら言ったので、篤には姉妹が仲良くじゃれあっているようにしか見えなかったようだが。

「え?なんで笑真が今日、いるの??」

三人の中で私だけが理解できずにいた。

「えーっ。笑奈ちゃんがお誕生日てことは、笑真も誕生日だからじゃん」

ヘラヘラと笑いながら笑真は笑奈の斜め前に腰掛けた。そして私の向かいに篤が座り、食事が始まった。誕生日だから、デザートはケーキだ。プレートに、ENA &EMAと書かれている。

2人きりのデートに水を差され、不快な私は黙々とケーキを食べた。普通は誕生日のデートに彼女の姉妹は連れてこない。いくら誕生日が同じでもそれはない。

 笑真はそんな私の表情も気にせず、ニコニコとご機嫌だ。今日も髪を巻いて、可愛いワンピースを着て華やかな姿。一見、一卵性の双子には見えないと思う。

 そんな私たちの空気の中に、篤が割り込んできた。

「笑奈‥。実は今日、お前に言わなければと思ってこの場を設けたんだ‥」

 モゴモゴ言いづらそうにしている篤の態度に、私はプロポーズを予感した。だから証人に家族を1人連れてきたのなら、まだ理解できる。私の胸はドキドキした。

「‥実は‥俺と笑真ちゃんは、一年前からお互いを知ってたんだ‥。CMの打ち合わせで電忠に行った時、受付にいた笑真ちゃんを見てびっくりした。笑奈と同じ顔だったから‥」

「一卵性の双子の妹がいるって話してたじゃない?驚く?」

 その時、笑真がクスッと笑ったのを私は見逃さなかった。

「一卵性だからそっくりだと思ってたんだよ。見た目というか、雰囲気とか、性格とか。なのに、見た目は似ていても全然違う華やかさ、可憐さが笑真ちゃんにはあって、目を奪われたんだ」

 ああ‥。その瞬間、私は高校時代を思い出した。篤も真山と同じなのか‥。私はもう全てがどうでも良くなった。

「別れて欲しい。俺は今、笑真ちゃんと付き合ってるんだ。将来、結婚も考えている」

 それを聞いた瞬間、私は立ち上がり笑真の腕を掴んで店を飛び出した。篤もすぐに追いかけようとしたが、食事の支払いを店に求められ、出遅れた。外は雨が降り始めていた。

「笑奈ちゃん、ごめん。でも、好きって気持ちは理性じゃないでしょ?私も笑奈ちゃんと同じDNAだから、同じ人に惹かれてしまうことがあるのよ。ね、許して?」

 悪びれもせずに笑真は言った。

「ふざけないでよ!!いつもいつも!宿題は私のを丸写し!私が好きになった人は真山君も篤も平気で奪う!あんたみたいな妹、欲しく無かった!同じ顔に生まれたことが悔しくて仕方ない!」

 私は泣きながら嗚咽のように怒鳴りつけた。

「‥笑奈ちゃん、女に生まれたんだから、男の人から可愛い、守ってあげたい、て思われた方が幸せよ。笑奈ちゃんはいつも頑張りすぎ。見た目も気にせず、男の人と張り合えるくらいに全力で頑張って、男の人の上にいくから。真山君も男のプライドが傷ついて嫌になったって言ってたよ?」

 笑真の言葉は、私のコンプレックスを刺激し続ける。私の中の怒りが絶頂に達した瞬間、大きな隕石が私と笑真めがけて落ちてきた。

「‥ん…」

気がつくとそこは真っ白な光に包まれた空間だった。上下左右に何もない。重力すら感じない空間だ。私は死んだのか?きょろきょろと辺りを見渡すと、上空から1人の青年が降りてきた。銀色の髪に青い瞳をしていて地球人とは思えない風貌だ。

「ここは?」

青年はじっと私を見ている。

「ここは狭まの世界だよ、エナ」

狭ま?天国ではなく?

私が理解できていないのを察したのか、青年は静かに説明しはじめた。

「ここは宇宙のあらゆる世界に繋がる場所。私はその番人。本来、君はまだ、寿命ではなかった。君の絶望の波動と隕石の波動があまりにぴったり合ってしまって、バグを起こしたんだ。隕石を引き寄せ、本来死ぬ予定になかった生命が失われてしまった。私はそのバグの修正をしなければならないのさ」

 小説の中のストーリーのような説明に戸惑った。番人は続けた。「バグはこちらの責任でもあるし、同じ地球には転生させられないから、せめて君の好きな小説の中に転生させようと思う。そこで、君の使命である沢山の人を薬で救う、というのを果たしてくれ」

 番人は私が死ぬ前に持っていた小説を差し出した。

「この中のキャラなら誰にでもなれるよ。でも女性の方がいいよね?」

「当たり前!ルシフォール王子が好きだから、婚約者のクリスタがいいかな‥、て、いきなり転生??そんなことまで小説みたいなわけ?夢じゃなくて?」

「夢じゃない。そんなに時間もないんだ。なら、クリスタでいいかな?君がクリスタを選んだら、君の妹の笑真が聖女セシルに転生するよ」

その瞬間、怒りで自分の顔が真っ赤になったのがわかった。転生するのにまた笑真と同じ場所に行かなければならないのが納得いかなかった。

「笑真まで転生するの?笑真にも寿命がまだあったから??あー!もー!!笑真が聖女とかになったら、ぴったり過ぎてむかつく!絶対私の邪魔をして断罪イベントに持ち込むわ」

私は鼻息を荒くした。時間がない。冷静に考え直さねば、と精神を落ち着ける。笑真の頭では、賢く立ち回って悪役令嬢が悪役令嬢から脱却するのは難しいだろう。聖女セシルは笑真にうってつけのキャラ。そう考えると、笑真にはセシルよりクリスタをさせた方が私が幸せになる道を開きやすいんじゃないか。結論は出た。

「私、聖女セシルになる」

私がそう言った瞬間、番人の持っていた杖が光り、私の意識は遠のいていった。

最後までがんばります。

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