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アロンノ討伐記  作者: 河村 そう
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第8話 自己投資と期待

予約投稿にミスがあり昨日アップできていませんでした!てことで本日は22時にももう一話上げる予定です。


ギルドを出た二人は目的地であった大問から中心部に進んだ場所に位置する武具屋街道へとやってきた。

ここでは何件もの武器屋や防具屋が軒を並べており、鍛冶師たちの工房も隣接している。


「よし、ここからはそれぞれ分かれて昼の鐘が鳴ったらまたここに集合しよう。」

「ああ、俺はまずあそこの古びた店に入ってみるよ。」

「ええ、アロンって変な性格してんのな。誰がどう見てもあの店には入りたくないよ。煙突から煙は立ってるけどまるで廃墟だ。俺はあの新しそうな店から見てくるよ。いい武器が買えるといいな。」

「ああ、後でお互い新しい装備を見せ合うのが楽しみだ。」


アロンはリュークに一時的に分かれると、一番に気になった店に入っていった。

入り口は大きく開かれているが、外見は古く、蔦が伸びた壁には、ラッセル武具店と書かれた木製の看板が掲げられている。


中に入ると木刀のような安価な武器から、高級そうな鉄ではない武器まで様々なものが置かれていた。また見たことない種類の武器までさまざまである。


「お前、見る感じ冒険者になりたてか。よく来たな。それで、何がご所望だ?」

奥の通路から出てきたのは髭が無造作に生えた大柄の男であった。


「お、おじゃまします。実は今使ってる武器が壊れそうで新しいのを買おうかと。」

アロンが男の風貌に気圧されながらそう答えると男はアロンの短剣を勝手に腰から抜いた。


「ほう、これはまた古い剣だ。手入れも長年されていなかったに違いない。それでお前に譲られて剣の寿命にとどめを刺したというわけか。」

「孤児院の倉庫にずっと放置されていた物なので、手入れの仕方も分からないですし。。」


「そうか、お前も孤児だったのか、よし、お前に合う武器を何個か見繕ってやるから、見てみろ。」

彼はそう言うと剣をアロンに返して通路の奥へと消えていってしまった。

「は、はい!ありがとうございます。」


ここにある武器は自分には合わないと思われたのだろうか。はたまた高すぎて買えないだろうとおもわれたのだろうかアロンは彼が戻ってくるまで飾られた武器を見ていくことにした。


入り口付近には木製の剣が鉄籠の中に詰められており、籠には1000マリーと書かれている。

木のみで出来た武器はその木剣しかなく他の武器にはどこかしらに鉄が用いられている。


だが、店の奥に飾られた剣や槍には木はほとんど使われておらず、何かしらの魔物の骨や牙、希少な鉱石類が使われ、彫ってある装飾も凝ったものになっていた。


値段も今のアロンでは全く手の届かないものが多い。武器に何百万も欠けるようになる時が自分にも来るのだろうかと考えていると、店主が奥から戻ってきた。


その腕には3本の剣が抱えられている。

「まだあるから、この短剣を見といてくれ。」

彼は大きなテーブルの上にそれらの剣を置くとまた奥へと向かった。


アロンは置かれた剣を見にテーブルへと寄っていく。

テーブルには柄の色が違う短剣が2本と、全てが鉄でできた店にも展示してあるのと同じように見えるものが置かれていた。


「これは、骨で出来ているのか?こっちは木だ。で、これはさっきの奴と何が違うんだろう。」

アロンは鉄のみの短剣を持ったが待っている間に持ってみた柄まで鉄製短剣と何ら違いが分からなかった。


骨の方はこれまでアロンが使っていた短剣や木の柄の物よりも軽く、もう一つの短剣はこの中で一番持ちやすく、使っている短剣と同じように使える代物であった。


「どうだ、よさげな剣はあったか。」

再び通路から姿を現した店主はテーブルの上にさらに二つの武器を置いた。


「これは、、とても重そうですね、、」

「ああ、この戦斧は今のお前には少々重いかもしれないが、毎日何百回もこいつを振り回してればいつの間にか使い物になるには違いない。」


店主が持ってきた武器は、二種類の戦斧であった。

二つともアロンの身長よりも大きく、店に飾られてあった戦斧よりもその刃は大きく、斧であるにもかかわらず先端は槍のようになっている。しかもその槍には返しまで付いている。


二つの違いは柄の素材のみである。

「こっちのはな、柄が青みがかっているだろ。これは隣の獣王国から仕入れたストーンエレファントの骨をヴァルモート鉱石で磨き上げたものだ。もう一つの赤い木材の方はスピアートレントから切り出したものだ。普通の木材よりも魔木の方が断然強度は高い。どうだ、俺としては短剣よりもお前にはこっちを使ってもらいてぇが。」


店主が我が子を自慢するかのように武器を見つめながらアロンに説明した。

短剣は戦斧のために除けられてテーブルの縁へと追いやられている。


「そうですね、でも僕にはこれを買えるだけのお金が、、、」

「金か、いまいくら持ってる?」

「全部合わせて19万マニーと少しです。これからの生活もあるし、武器に出せるお金は15万くらいかと、、」


「15万か、、」

店主は目をつぶって何かを考えているようであった。アロンはこの武器に興味を持っていかれていたが、自分の懐具合では、鉄製の武器を買うのが精いっぱいであろうと考えていた。


「よし、じゃあどっちでもいいから、この戦斧を400万マニーで買っていけ!」

アロンの頭には目の前の男が言っている意味が分からない。15万しか持っていないという少年にいきなり200万払えというのだ。そんな金は無いというのに、、

「えっと、僕15万しか出せないって言ったと思うんですけど、、」

「そうだな、今のお前は15万しかない。それは前金として受け取っておく。残りの185万はお前に貸し付けたことにする。少しづつ返してくれてもいいし、いつか大物になって一気に返してくれてもいい。どうだ?」


「でも、僕はおじさんにそこまでしてもらうほどの繋がりを持っていません。僕は冒険者です。すぐ死んでそのお金が払えなくなるかもしれません。だから武器は現金一括払いが当たり前と聞いてきました。なぜ、、」


アロンは疑問を店主にぶつける。

「理由か、それはお前が孤児だったからだ。実はな、俺も40年まえ孤児だったんだ。たまたま武器政策の才能があった俺は400万の寄贈もすぐできたし、今も悠々自適に残りの人生を生活するくらいの金は持ってるんだ。店がこんななりだがな、俺の名は結構有名なんだ。だれもこの工房にそんな有名な奴がいるとは思っていないだろうけどな。」


ガハハハッと笑う店主の名前をまだ聞いていなかったアロンは名を尋ねる。

「俺の名前か、いづれどこかで知ることになるだろうさ。だが誰にもこの場所のことは言わないと約束してくれ。」

「ええ、分かりました。名前を知ってもこの店のことは誰にも言いません。」


「いい子だ。それで、どうする?買うか?俺の武器を」

「じゃあ、ストーンエレファントの柄の方をいただきます。必ずのこりの185万は返しに来ます。」

「よし、その意気だ!お前、名はなんて言う?」

「アロンです。」

「そうか、アロン、この武器の名前はそうだな、、、蒼石斧グラントだ。大切に扱え!」


そう言って彼は両手でグラントを手渡した。

受け取ったアロンの手にずしっと短剣とは比べ物にならない重さがのしかかる。


「ほれ、構えてみろ。」

そう促されると右下に腰を落として構えた。

「おう、いいじゃないか。まだ武器にお前の格が合っていないのは不自然極まりないが。いずれこの武器にもおいつくだろう。よし、ちょっと貸せ。」


そう言うとアロンからグラントを受け取った店主は刃に何やら見慣れない文字の彫刻を施し、柄にアロンが肩から斜め掛けするための紐を取り付けた。


「これは俺が作ったことを証明するためのものだ。紐は余ってた魔物の革の切れ端だからおまけだ。ちゃんと返しに来いよ、アロン!」


そう言って店主は柄と同じ青色の太く丈夫そうな紐をアロンの首にかける。

それから基本的なこの斧の使い方・手入れの仕方をアロンは店主から教わった。


「こんなもんか、じゃあまた来るのをここで待ってる。期待しているぞアロン。」

「ええ、本当にありがとうございます。また来ますね!」

扱い方を学んだアロンはそう言って自分の身長より大きな青い戦斧を肩から斜めに下げて店を出た。


店を出ると同時にちょうど要塞都市フォルクに正午が来たことを告げる鐘が鳴る。

アロンは肩に食い込んで痛むのに自分の弱さを再確認しながら、待ち合わせ場所へと走っていった。


ポイント評価よろしくお願いします!2章を執筆するかの判断材料にさせていただきます。


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