第2話 灰色の悪夢
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アロンを置いてホーンウルフを追いかけていった6人はというと残る2匹のホーンウルフを追いかけていた。
先回りしていたサンタの弓矢によって一匹を負傷させたことによって、逃げ切れないことを察したであろう狼たちは作戦を変え、大木の前で冒険者たちを待ち構えた。
両者にらみ合う形となると、まだ健全な狼が負傷した個体をかばうようにリューク達6人を相手に戦闘へと臨む。
だが、そんな行為もあっけなく負傷していなかった狼を討伐され、残る弱った個体も一思いにニコが首を落とした。
「ふぅ、よし、これで全員分の討伐証明を集めることができたな。」
魔石と角を剝ぎ取ったリュークは皆に声をかける。
「ああ、これでさっきの狼も合わせれば8人分も狩ることができた。サンタの弓矢のおかげだな」
フィードがそう言いサンタの肩を勢いよく叩くと、サンタもそれに応える。
「ありがとう、近接戦闘では何もできないからね、ここで手柄を立てないとって決意していたんだ。」
「よかったわね、サンタ!私はまた何もできなかった、この隊唯一の魔法使いなのに、、」
ジェシカはそんなことをぼやいているが、他のメンバーはそうは思っていなかった。
ジェシカの火魔法のおかげで、この4日間の夜もある程度行動することができていたからだ。
また野営において火おこしに時間をかける必要が無いことは火おこしの技術が未熟な彼らにとってとてもいい影響を及ぼしてくれていたからである。
「そんなことないさジェシカ、一番はあのアロンだ。結局何もできず、やられてしまったじゃないか。」
「俺もあいつはいつかやられる気がしていたんだ。残念だけど、アロンには実力と気力が足りなかったんだ。」
その場に居た全員がこの場に居ないアロンがホーンウルフの突進によって既に息絶えているだろうと予想し、アロンに対する文句や哀れみの言葉を口にした。
「さて、でもここがどこなのか俺達には見当もつかない。ひとまず分かるところまで戻ってそこで野営をしよう。」
リュークがそうまとめると、座り込んでいた者も立ち上がり、リュークに従って走ってきた道を憶えている限り戻っていった。
だが、その時点で、森は夕暮れ時である。
走ってきた距離はかなりあり森は急速にその光を失い辺りは暗くなり始めていた。
またかどこを走ってきたのかなど魔物の居る広大な森に初めて入った彼らに確実に元来た道を戻るという離れ業が目印もなくできるはずもなかった。
「まずいな、これじゃあいくら火魔法があっても夜だと分からない。今日はもうここで見張りを付けて野営しよう。」
そうリュークが言い、彼らは狼を追い詰めたところから少し離れた場所で彼らは野営する準備を始めた。
野営の準備が整った頃、彼らは自分たちが今晩食べる食料が無いことに気がついた。あたりは既に暗いが、空腹は収まらない。
「リューク、あの狼食えないかな?まだあそこならここからでも場所が分かると思うんだけど。」
皆がリュークへと視線を向ける。
「そうだな、魔物の肉はまずいと聞くが、何もないよりはましだろう。ただ危険だから少人数で。そうだな俺とサンタ、それにバークも来てくれ。」
そう言って3人はたいまつを持って野営地を後にした。
茂みをかき分け、狼の死骸がある場所へとたどり着くと、そこにはまだ何も寄り付いてはいなかった。
「よし、ゴブリンもいない。さっさと肉を回収して戻ろう。」
ナイフを取り出した三人はたいまつを置いて食べれる分だけの6人分の肉を背嚢に詰め込み、元来た道を戻っていく。
だが彼らは、その靴についた血で足跡がくっきりついていることに気がついてはいなかった。
そのまま野営地へと戻った3人は残っていた3人に迎えられ、まずい肉を食べながらも、やっと帰路につける喜びにふけっていつの間にか全員が寝てしまった。
その夜中、ふと目を覚ましたのはリーダー格であるリュークであった。
リュークは近くから荒い鼻息と茂みをかき分ける音を聞いた。
「おい、、おきろ、、皆を起こせ。絶対に声を立てるなよ、、」
近くに居たジェシカを起こすと、ただならぬ雰囲気を感じたジェシカが順に皆を起こしていく。
6人全員が起きた時、焚火が消えていて目で見ることは出来ないが音で自分たちが何かに囲まれていることに数人が気がついた。
「おい、これやばいぞ、」
「どうするリューク、、」
口々に不安がるメンバーを黙らせ、リュークはジェシカに焚火にもう一度火をつけるように言った。
次の瞬間消えていた焚火後に火が再び付き、自分たちを囲んでいる物が想像以上に近いことが判明した。
「ングググガガガガゥゥァァ!!」
毛がなく細長い灰色の肉体に犬のような顔。コボルトである。
二本足で長い手を地面に引きずるように歩く姿はおぞましく、それに囲まれている彼らは初めての出来事に震えが止まらない。
6人の周りを囲むようにぐるぐると周回するコボルトたちはいつ彼らに襲い掛かってきてもおかしくはなかった。
「皆、ここは俺が犠牲になる、、!そこで開けたところから走って逃げるんだ!!う、うぁぁぁぁ!!」
六人のうちの一人がリュークの指示を仰ぐことなく先手を取って退路を開こうと単独で陣から抜け攻撃を試みた。
少なくとも三体はいるであろうコボルトは吠えながら長い手をふるって向かってきた彼をはたく。
バキッという音と共に飛び出した彼は近くの木まで吹き飛ばされ、微動だにしなかった。
彼らとコボルトではこれほどまでの差が現状あったのである。
「ひっっ!!!」
叫ぼうとしたジェシカの口をリュークが押さえ、さらに興奮状態となったコボルトたちを大木を背にしてにらみ続けた。
「「ウァォォォォォ!!」」
にらみ合いが始まって何分が経ったであろうか。突然一匹が遠吠えを挙げるとそれに呼応して3匹の遠吠えが続いた。
攻撃が始まるのを覚悟したリュークタイであったが、コボルトたちは何を思ったのか、動かなくなった彼を引きずって森の奥へと消えていった。
「た、たすかった、、」
「死んじゃうところだった、、、」
口々に自分が助かったことを喜ぶ4人にリュークはがこう告げた。
「なぁ、一人死んでるんだぞ。。あいつは俺らが動けない中一人で立ち向かったんだ。喜べる状況じゃない、、!!気を抜いたらおしまいだ。今から俺が見張りをするから次はニコ、頼む、、」
「あ、あぁ」
リュークはそう言うと一人離れたところへと移動した。
そう言われた4人も一人亡くなった事の重大さに息が詰まり何も言えず、すぐに横になって眠ろうとした。
翌日、準備を済ませた寝不足の5人は7人分の討伐証明であるゴブリンとホーンウルフ魔石と採取対象であるホーンウルフの角をしまって、帰路を探すことを始めた。
折れている枝や足跡を見つけては、新たな手がかり見つからなくなりひとつ前の手がかりまで戻ることを繰り返す。
彼らは太陽が真上を回って2,3時間経った頃ようやく小川を見つけた。
数分さかのぼるとそこには少し見慣れた開いた場所を発見した。前日の最初の戦闘現場である。
だが、5人の予想とは違い、そこには角が無くなった腐りかけのホーンウルフの死骸と顔が原形をとどめていないゴブリンの死骸が転がって、辺りは黒く染まっていた。
「どうゆうことだ。アロンのやつ生きてるのか。。」
「そんなはずはないわ、この目でアロンの背中が引き裂かれるのを見たもの。」
「だが、あいつの死体も狼の角もないし、ゴブリンの死体まで増えてる。」
それぞれがこの惨状を見て回っているとサンタが何かを発見した。
「ねえ!こっちにゴブリンの血痕が付いた葉っぱが奥に続いてるよ!」
見ると確かに奥へと血痕が続いている。しかもその方角は故郷であるフォルクがある方角だ。
「アロンは生きてる。アロンは生きてるんだ!」
サンタが思いがけない仲間の生存に喜ぶと、フィードがそれを遮った。
「あんな奴が生きてたって足手まといになるだけだ。思い出せよ。バークがあのホーンウルフに立ち向かって権を向けていれば俺たちはあいつを失うことは無かったし、こんなに披露していることもなかった!元凶はアロンだ!」
「落ち着いてフィード。確かにそうかもしれないけど私でも二頭に突進されていたら逃げていたわ。それはフィードの場合でも同じでしょう?」
「いいや、俺は勇敢に立ち向かったさ。あんな気の弱い奴とは違う!」
メンバーの雰囲気は最悪な状態に陥った。
アロンをかばうサンタとジェシカ、全ての元凶をアロンとしてアロンを恨むフィードとニコ、そして中立の立場に立つリュークである。
「やめろ!こんなところで喧嘩しても魔物の餌食なるだけだ!無事にフォルトの大門を潜り抜けてからにしてくれ!確かにアロンも悪い、だが俺達皆それぞれ悪かった点があるはずだ。今はアロンの後を追って大門を目指すほかに道は無いんだ、、さあ行くぞ。」
リュークは強引にメンバーをまとめゴブリンの黒い血の跡を追って森の中へと5人は黙ったまま突き進んでいった。
第2章を書くかの指標にするので下にある評価をよろしくお願いします!
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