最終話 旅立ちとライバルの影
アロンがラッセル武具店へと足を運んでから2週間後。
昼の鐘が鳴り終わり1時間ほど経った頃、アロンとリュークはいつものテーブルでギルド貸し出しの図を広げていた。
「ここが、要塞都市フォルク、それでこれから向かうのはここ、前線都市ダーグ、やっぱ遠いな。」
アロンたちはそろそろ前線都市と呼ばれる魔物が都市付近まで掃討できていない開発途中の都市へと拠点を移動することを決めていた。
そのために、宿を出た後森で狩猟生活を送り、猪や兎その他動物から干し肉を作ることを行っていた。十分な食料を手に入れたところで、片道4週間はかかる道のりへと今日出発しようとしていた。
「まあ、それだけ2級冒険者に上がるチャンスも上がるはずだ。よし!行こうアロン!」
リュークが地図を丸めて立ち上がる。
「おお!」
アロンとリュークは受付に地図を返却し、以前から伝えていた通り拠点を変えることを受付に伝えて、大門へと向かった。
昼時の大門はいつも通り人や馬が沢山おり、出ていく人、これからどこかへ向かう人さまざまである。
大門にはリュークの家族とアロンが孤児院の子たちの次に仲がいいパン屋の女の子も父親と来ていた。
孤児院には既に一昨日にアロンが足を運び別れを告げていた。
次にアロンたちが帰ってくることには孤児院に住む子供たちも少なからず変わっているはずである。これで一生合わない可能性のある子供たちが泣き止まぬ中アロンはその場を後にしていた。
「父さん、母さん、クルト!」
リュークが声をかける。
「リューク、アロン君としっかりやるんだぞ!お前が都市の英雄として帰ってくることを夢見ているからな父さんは!」
「ちゃんと生きて帰って来なさいね、、アロン君、どうかこの子をよろしくお願いします。」
小さなリュークの弟は父親に抱きかかえられ、顔を父親に押し付けて泣いている。
「大丈夫だって母さん、俺が次に帰ってくるときにはアロンのような高級な武器や防具を全身に付けて帰ってくるから楽しみにしておいてよ!クルトもお母さんとお父さんを助けてやるんだぞ?」
リュークは小さな弟の頭を優しくなで、家族全員を抱擁した。
実はリュークは自分の稼ぎである魔玉の分け前の半分である500万マリーを家族へと渡していた。何事もなく
家族三人が2年は慎ましく暮らせるような金額である。父親が大工のリュークはそんなに稼ぎが多くないのを知っていたため、強い反対を受けながら家の金庫の中に金貨を銀貨に変えて、500枚放り込んできたのだ。
銀貨に変えたのには使いやすさもあるが一般家庭で金貨が何枚もあることは怪しまれる要因になるためである。
一方アロンはパン屋の女の子と別れを告げていた。
「お兄ちゃん、私ようやく白パンを焼くことができたの。だからこれも持って行って!」
「お、よかったなサナ。俺が帰ってく頃にはお店を任されるくらいにはなっておけよ?」
「任せてよ!だからまた帰ってきてね、絶対よ?」
「ああ、ちゃんと帰ってくるよ。」
「娘の黒パンをいつも買ってくださっている冒険者さんは貴方でしたか。その斧?を背負ったあなたを何度か見かけたことがあります。
一人っ子のこの子にとって兄と慕うあなたがいなくなることはつらいかもしれませんが、良い思い出となったことでしょう。次の都市でも頑張ってください!」
彼女の父親とアロンは握手を交わした。
「ではまた三年後、皆さんと会えることを願っています。じゃあ、いくぞリューク!」
「ああ、皆元気で!!」
2人は大門の外へと向かった。
大門の外にはなじみの門番が今日は外の警戒をしていた。
「お、新人たちじゃないか?今日はどこへ行くんだい?」
「実はこの都市を今日離れることにしまして。」
彼は一瞬暗い顔をしたが、すぐに笑顔を取り戻す。
「そうか、冒険者だもんな、、俺の友達もそうやって去っていったよ。元気でやれよ!」
「ええ、お元気で!」
手を振って彼と別れた二人は踏み慣らされた草原を東の方角に進んでいった。
背中に大きな荷物を抱え、その肩にに戦斧を掛けたアロンはこれから未知の場所へ向かうことにわくわくが止まらなかった。
何せ一度もこの都市を出たことが無い彼にとってはこれから見る景色は、きっとこの都市いたら見れないものになると感じていたからだ。
出会いと別れを繰り返しながら自分たちが決めた道をただひたすらに仲間と進んでいくのが冒険者である。
その道には夢を追いかけ半ばで倒れた脱落者や進むべき道を変えた者が数多く存在し、それでも歯を食いしばって生き残り、一つの夢を追い続けた者達が、1級冒険者として畏敬とその名誉、そして莫大な財を享受する。
アロンとリュークはそんな道を突き進む第一歩を既に踏み出している。
彼らがこの先志半ばで倒れてしまうのか、夢を勝ち取るのかこの時は誰にも後のアロンとリュークの物語の結末を知るものはいなかっただろう、、、、
前線都市ダーグ付近の森では2,3か月前から新たな若い新人の冒険者が中心となって新人同士の連合パーティーを作り、着々とその成果を上げていた。
「おい、ニコ!!後ろから来てるぞ!!」
「死ねぇぇぇぇ!!」
ニコは飛び上がって大剣を振り落とし、やってきた矢がいくつも刺さり火傷も負ったオークの頭を真っ二つにした。
「よし、次だ!!行くぞお前ら!」
森にフィードの声が響き渡り、十数名の冒険者たちが一斉に動き出す。
この国でもっとも冒険者の多い前線都市ではこの大人数ではっきりとした役割を決めて自分よりもはるかに強い魔物を追い詰める作戦が新人たちの間で流行りつつあった。
ゴブリンを少人数で狩るよりもその方が稼げるからである。
クラン作戦と呼ばれるこの作戦はパーティー連合として一つの組織として動きつつあった。これは新人たちの間から、中堅者、ベテランの間へと広がっていくのはもう少し先であったが、一番最初のクランを作ったフィードとニコは着実にその名を轟かせていた。
アロンたちと彼らが衝突するのはもはや同じ場所を拠点にすることで避けられない運命である。
こんな拙い文章を読んでくれてありがとうございました。また気が向けば二章を、もしくは内容は変えることなく11話続いた状況描写やセリフ等を上達させた文章を投稿するかもしれません。
小説を書くってとても難しいことが自分で書いてみて分かりました。よかったら見るだけとなっている人も一度このような拙い文章でもいいので書いてみるといいかもしれません。
本当に何十、何百も話数を投稿している人が凄いことを痛感しました!!
僕はまた気が向くまで見る専に戻りたいと思います!