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アロンノ討伐記  作者: 河村 そう
13/15

豪運の別報酬

翌日、アロンとリュークが朝食をすましてからギルドへと向かっていた。


「おお、ようやく来た。アロン、リューク、早くこっちへ来なさい。」

昨日のギルド諸君が慌てた様子でアロンたちを呼ぶので、2人は言われるがままはしってギルドマスター室へと向かった。


「失礼します。冒険者二名到着しました。」

職員が扉を開けて中に居たギルドマスターと高級そうな執事服を着た男に報告し、足早に去っていった。


「ジョシュアさん、この二人がこの魔玉を持ってきてくれたグラン・モントの二人です。」

「君たちが、、よくこのタイミングで貴重な魔玉を持ち帰ってくれました。グリット様もこれなら喜んで買って下さるだろう。君たちの今日の予定は伯爵への謁見に変わりました。早速準備して私と一緒に来てもらいます。」


「ええと、今日の予定まだ決めていないのでいいのですが、このままいくのですか?」

「ああ、冒険者だからその小汚い身なりも仕方がない物とみられるから大丈夫です。」

「リュークよ、急なことですまんな、この方について伯爵にあって来るのじゃ。帰ってくる頃には大金持ちになってるはずじゃぞ?」


ギルドマスターは難色を示したリュークに小声でそんなことを伝えた。

自分たちの予定を勝手に決められて、2人はいい気こそしなかったがついていくほかが無かったため、ギルドを後にして馬車に乗り込み、都市の最北部に位置する巨大な城へと入っていった。


「では二人ともついてきてください。」

もちろん城へ入ることも、今まで経験のなかった二人は、城を守る内側の城壁すら超えたことが無かったためその城壁を超えた瞬間から馬車の窓から見える明らかに自分たちの住んでいた場所とは違った凝った建築や整えられた庭、高級感漂う店を目の当たりにした。


そこからとてつもなく広い庭園を抜けて、城の正面玄関の前に止まった馬車から降りた二人は、数十段以上に及ぶ階段を上り、両開きの彫刻が為された扉をくぐる。


「さあ、こちらに来てください。ここは大衆用の謁見控室です。」

城の中を5分ほど進んでジョシュアは木の扉を開き、中の小さな部屋へと案内した。


「今回は謁見場にてお二人に魔玉に対する報酬が与えられます。グリット様がお座りになっている鉄の玉座から10メートルほどの位置まで進み、かがんで最敬礼を取ってください。

するとグリット様の側近が、魔玉をあなたたちが持ってきたことを伝え、魔玉が謁見場内に持ってこられます。

それに対する褒美としてあなたたちには金銭が与えられるでしょうが、その報酬に対して不満は厳禁です。どちらかがありがたく受け取りますといいなさい。それ以外に気を付けることはグリット様から発言を許されたら発言を、では後ほどまた伺いますのでこの部屋でお待ちください。」


「は、はい!」

ジョシュアは廊下へと出てどこかに行ってしまった。


「どうしよう、あの人が言ってたこと長すぎてよく分からんかった、、」

アロンはそう言って焦るがリュークはそんなことは無い、しっかり者であるためきちんと理解し、アロンにもう一度説き聞かせた。


「おそいな、、」

ジョシュアがこの部屋を出ていってから既に2時間は経過していた。


アロンとリュークは最初こそ緊張した面持ちで、座っていたが、さすがに集中力も切れて足を延ばしたり、部屋の中をうろうろしたりしてぼーっと時間を過ごしていた。


「俺らはきっとこの城で一番身分が低い謁見者だし、優先順位が低いんだろうよ。」

「くっそー、俺らも早く大物になって、伯爵が向こうから来るような冒険者にならないとな。」

「そうだな、にしても遅いな。」


そんな会話からさらに一時間が経過した頃、ようやく扉が開き、ジョシュアが中へと入ってきた。

「お待たせいたしました。グリット様のご準備が整いましたので、今から謁見へと向かいます。ついてきてください。」


「分かりました。」

アロンとリュークはジョシュアに連れられて、今まで出会った扉の中で最も荘厳で宝石や金が用いられた扉の前に立たされた。ジョシュアはアロンとリューク両方に一回頷いて端へと避けた。


「冒険者、グラン・モントのお二人。アロン、リューク!」

中からそう呼ぶ声が聞こえ、大きな扉が中の兵士によって開かれた。

「い、いくぞ、、アロン」

「おう、かましてやるぜ」


2人は同時に一歩を踏み出し、中へと歩んでいく。

中は数本の柱が教会のホールを何十倍もの広さの天井を支え、色のついたガラスや、宝石、金や銀が至る所にある。


アロンたちが歩く道は赤いカーペットが引いてあり、傍には何人もの鎧を着た兵士が槍を持って待機している。

アロンたちの目線の先には何本もの剣が刺さったような玉座にアロンたちよりも5歳から10歳くらい年上の筋肉質の男が座っている。


アロンとリュークが所定の位置まで進み、床にひざまずく。

「両名は魔物の森のコボルトを打倒し、魔玉をグリット伯爵に献上しに来た次第であります。」

伯爵の傍に仕える男がそう言うと、

「して、魔玉はどこに。」

と伯爵が答える。


「魔玉をこちらへ!」

側近が叫ぶと、アロンたちの入ってきた扉から金で縁取られた白色の高級そうなクッションの上に置かれた紫色の魔玉を運び、黒い布で覆われた木の台へと置いた。


伯爵は立ち上がって木の台の上に置かれた白いクッションから上に置かれた魔玉を手に取った。

「おお、ここ数年で最も素晴らしい魔玉だ。よくこれを我に献上してくれた。おい、ここへ!」

伯爵は魔玉を元の位置へと置き、もう一人の側近を呼んだ。


やってきた側近は両手で抱えるようにした白いトレーを持ってきた。その上には大きな金の装飾の入った白い袋が一つ乗っている。


「褒美だ、受け取るがいい。」

「ははっ!ありがたく受け取らせていただきます。」

アロンは近くによって伯爵からそのずっしりと重い袋を両手で受け取った。

「では下がるがいい。」

「「ははっ!」」


アロンとリュークは立ち上がって礼をした後、扉の外へと下がった。扉がドンッと閉まると、緊張から解放された二人は大きく息を吐きだした。


「お疲れさまでした。ではギルドまで馬車でお送りいたしますのでこちらへ。」

どこからか現れたジョシュアとアロンたちは同じ道を通って城の玄関へと行き、行きと同じ場所に乗せた。


行きとは違いあっという間にギルドへとたどり着き、2人は降りて馬車は城へと戻っていった。

「あ、もう帰ってきたのか。」

「なんかあっという間だったね。」


アロンの手にはきちんと高級感あふれる袋が握られていたが、城に居た時の記憶はあまり残っていなかった。

伯爵と喋ったのも一言で、待っている時間は狭い部屋に閉じ込められていたので、印象に残っていないのは当たり前だろう。


「ギルドマスターのところに行かないと。」

「ああそうだな、行こうか。」

2人はギルドへと入り、ギルドマスターの部屋まで行くために受付を通り、階段を上ったがそのわずかな間に、いくつものアロンの持つ袋への興味を示す視線が合った。アロンは若干その袋を隠すようにして受付の奥へと向かった。


「そうか、そんなにアッとゆう間に終わったのじゃな。それでもいい機会にはなったはずじゃ。どれ、まだその中身見ていないんじゃろう?ここだったらわししか見ておらぬため盗まれる心配もない。開けてみなさい。」


一連の流れを聞いたギルドマスターはテーブルの上に麻で出来た布を敷いた。

「ありがとうございます。さすがに下で開けると中の物が無くなりそうで怖いですからね。。」


アロンはそう言うと袋をさかさまにして中に入っていたものを取り出した。

中からあふれ出てきたのは大量の金貨。それに遅れるようにして二つのブレスレットが現れた。


「ほう、これはなかなか珍しい物を受け取ったようじゃな。」

「大量の金貨は置いといてこれは何ですか?」


そのブレスレットはどうやら金で出来ており、太陽に逆さ短剣の紋章が入ったグリット家の家紋が刻印された魔石が埋め込まれていた。


「これはじゃな、グリット家がこれを持つ者の身分を保証するという証じゃ。」

「それは、、すごい。どういう意味があるんですか?」

アロンがそう聞くと、首をがくんとリュークが落とす。


「お前、この凄さを全くわかってないだろ。」

「え、ああ、すまんな説明してくれ。」

「これから死ぬまで俺体はグリット家がその身分を保証するという事だ。つまり俺達は伯爵に認められた冒険者として、商人たちや他の貴族たちからの依頼を受けやすいし、他の都市に行っても面倒な手続きや検査をしないで都市に入れるんだ!」


「おお、めんどくさいことがすべてなくなるってことだな!すごい!すごいなこれ!」

「はっはっは、ようやくアロンも分かったようじゃな。さてこの金貨はどうする?ギルド口座に預けるか?それとも持っているか?」


「あ、えっと少し枚数を確認させてください!」

アロンは貰ったブレスレットを右腕につけ金貨の枚数を数え始めた。


リュークは左手にブレスレットを付けてアロンの数えている様子を眺めている。

「198、199、200!200枚、マリーに直すと4000万マリー、、、!!一人2000万マリー!」

「や、やべえ、そんな大金お父さんでも持ってないよ。」


ぽかんと口を開ける二人は手を震わして自分たちの幸運を再び喜んだ。

結局二人はお互い金貨5枚を手元に残して口座に預けることにした。


これでアロンの口座にはマリーにして1010万マリーが預けられていることになった。また手元にも銀貨が3枚と金貨が5枚、103万マリーがある。


これ以上ない冒険者のスタートダッシュを見事に決めさらに高まった将来への希望と欲望を胸にアロンたちはギルドの扉を抜けて、街へと再び繰り出していった。


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