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アロンノ討伐記  作者: 河村 そう
11/15

復讐とこの上ない幸運

すっかり存在忘れていたけど書いてあるぶんだけは投稿しておきます!

翌日、アロンとリュークは午前中の内にこの一か月でテント内に蓄えた各動物の皮を売り払って、そのお金で出来る限り多く、尚且つ品質の良い物を選んでまとめて購入し、再び森の中へと入っていった。


3日後、2人はリュークがコボルトに襲われた場所に近いだろうと思われる森の深度にまで到達していた。

「リューク、これを見ろ!」


アロンが指さした先には大きく爪で削られたような跡が残った木が何本も生えていた。

「この爪痕はコボルトたちだ、、もうすぐそばにいるのかもしれない。ひょっとしたらこっちに気がついているかも。」

リュークが周りを見渡すが、辺りに動くものは見当たらない。


アロンもグラントを握る手に力を入れ上へと振りかざした態勢で少しずつ先に進んでいく。

すると数分後、四方から枝が折れる音が聞こえ始めた。

「リューク、後ろは任せていいか?」

「ああ、任せろ、横から来たら臨機応変に、奴らは腕が異様に長い。だから、、」


「俺のグラントが役に立つってことだな!」

「ああ、その通りだ。今度こそやられ訳にはいかない!」

少しずつ辺りの物音は大きくなっている。


「どうする、このまま奴らから仕掛けてくるのを待つか?」

「ああ、下手に動いてアロンのグラントが引っかかる場所に移動してしまうのが一番危険だ。」

「それもそうだな。早く来いコボルトどもめ!」

さらに音が近づいた時アロンは前方にコボルトが歩いてこちらをうかがっているのを確認した。


「いた、、!しっかりこっちの様子をうかがってやがる。うっとおしい奴らだ。」

「こっちもだ、後ろにも一体いるぞ。だが2体だけという事は無いはず、やつら横から急襲してくる可能性が高いぞ、、」


「分かった。どっちから来てもまずは俺がいくぞ、リューク。」

「了解だ。」


「ヴォォォォ!!」

前方のコボルトが遠吠えをあげた。

すると突然右の茂みから勢いよく黒い影が飛び出してきた。

「来るぞアロン!!!」

「オオオオ!!」

茂みから一体のコボルトが長い両腕を上へと高く伸ばして襲い掛かってきた。

「これでも食らえぇぇぇ!!!」

アロンは真上に振り上げたままのグラントを右後ろにかけて体を捻りながら全力で振り下ろした。


青色の戦斧がきれいな曲線を描くように、コボルトの腕を切り落とし、そのまま体を真っ二つに切り落とした。

「フンッ!!」

コボルトを切り落とした勢いを殺し、グラントが地面へと突き刺さってしまうのを防いだアロンはグラントの矛先を右下にした体制で再び自身の体だけを戻した。


コボルトたちはそれに慄くことなく前後から突進してきた。

「リューク!!いくぞおぉぉぉ!!」

「おおおおおお!!!!」


2人は同時に走ってくるコボルトへと走る。

「俺流二ノ型ァァァァ!!!」

アロンはそう叫びながら下に構えたグラントを左上にコボルトが攻撃範囲に入った瞬間に振り上げた。


先ほどと違って斜め上に振り上げられたグラントは黒い血をまき散らしながら再びコボルトを真っ二つにする。

「ヴァガッッ、、!」

コボルトは叫びかけたものを最後まで言えずに絶命する。


アロンはグラントを振り上げた勢いを利用してアロンはリュークが戦う後ろへと体制を変えた。

振り返ると丁度リュークがコボルトの右腕を切り落としたところであった。

「ヴォギャァァ!!」


腕を切断されたコボルトは切断面を左手で押さえて後ろへと跳ぶ。

「まだまだぁぁぁ!!」

リュークは剣を両手持ちに変え、深手を負ったコボルトへと突撃していく。


その時、突撃するリュークの真横からもう一体のコボルトが腕を伸ばして飛び込んできた。

「え、、、」

リュークは目の前の敵に気を取られ、横から飛び込む新たな敵に気がつくのがほんの少し遅かった。

「リュークゥゥ!!」


アロンはその存在にいち早く気がつき、グラントを力いっぱい右手でまさにリュークに襲い掛かる寸前のコボルト向けて投げた。

グラントは青いすい星のように一直線にコボルト向けて飛んでいく。


アロンは反動でその場に転んだ。

パッと視線をリュークの方へ向けると。そこにはコボルトの顎から頭の先にかけて剣を突き刺したリュークの姿が見えた。


アロンの投げたグラントはコボルトの肩に突き刺さり、その勢いのままコボルトは地面へと倒れたのだ。

リュークはそのおかげで、わずかに油断した片腕のコボルトの懐に入り込み剣を両手で突き刺したのであった。

「グッ、ヴォッヴォガッ」

口から大量の血を流して片腕のコボルトは絶命し、地面へと倒れる。リュークは剣を力いっぱい抜き取ると、今度はその剣をすぐ真横に横たわるもう一体のコボルトに突き刺し、その命を奪った。


辺りからは物音ひとつしなくなり、風で木々がなびく音だけが聞こえるようになった。

「はぁはぁはぁ、、」

アロンは立ち上がってリュークの下へと歩いていく。


リュークも剣をその場に突き刺しアロンの下へと走る。

アロンとリュークはお互いを抱擁し背中を叩いた。


「ありがとう、、!!アロン、、死ぬかと思った、、!」

「そりゃよかった、、お前に死なれたら気分が悪く成るどころの話じゃない。」

十分にお互いの健闘を褒め称え、アロンとリュークは自分の武器を拾いに行った。


グラントは倒れたコボルトの肩に戦斧として刃に届くまで突き刺さっていた。

「ははっ、アロン、、お前どんなけの力を込めて投げたらこんなに肩を貫いて奥まで刺さるんだよ、、」

「確かに、今同じ力で投げろと言われても絶対に無理だ。火事場の場鍛冶からという奴かな。明日は筋肉痛がひどそうだ。」


2人はひとしきり笑った後、協力してコボルトの体からグラントを引き抜いた。

死骸となって転がったコボルトたちは冒険者ギルドでそれぞれ討伐証明の魔石と、白い眼球、さらに長い爪が採取対象として売り払うことができることをアロンたちは出発する前に確認していた。


「よし、それじゃあ魔石と爪、それと気持ち悪いけど目玉を回収しよう。」

「そうだな、俺はあっちの奴から剥ぎ取ってくる。」

そう言ってアロンは少し離れた所に二つに断裂したコボルトから魔石と採取対象を剥ぎ取っていった。


「おおお、これがコボルトの魔石、、ホーンウルフより3倍はでかいな」

一体目の採取を終えたアロンは二体目のコボルトに取り掛かったが魔石を取り出すときに違和感を感じた。


「あれ、こいつ魔石が二個も付いていやがる。でも手触り的にこっちの奴は球体のような、、」

そういって腹の中から丸い方の魔石らしきものを引きちぎりだすと魔石と似たような紫色の玉がアロンの手のひらに転がった。


「なんだこれ、おい、リューク!こっちのコボルトからなんか変な玉が出てきたぞ!」

「なんだって!ちょっと待って!!」


リュークはそう言うと取り掛かっていた二体目のコボルトの採取を終えて走ってアロンの下へとやってきて、アロンの手のひらをのぞき込んだ。


「こ、これは魔玉だ、やったぞアロン!!これはすごく高く売れる!!」

「そ、そうなのか!確かにきれいだもんな、コボルトの腹の中にあったけど。」


アロンがコボルトの腹の中から見つけ出したのは魔玉と呼ばれる大変珍しいものであった。

魔玉は宝石と同等の装飾品として各国の貴族、金持ちの商家や親方の間で高値で取引されえいる代物であった。


魔物の体内で魔玉が形成されるのは極めてまれで、確率で言うと10000匹の魔物を倒して一つか運が良ければ二つ手に入るような貴重なものである。また魔物によって形成される魔玉の色は違い、その綺麗さや魔

物の種類でも価値が変わってくるものでもあった。


「これは傷つけないように別の袋に二重にして持ち歩く方がいい、アロン絶対に傷つけたらだめだぞ!!」


「ああ、分かってるって。こんな時のために小袋はいくつか用意してあるんだから。あとこれに目玉入れといてくれよな、そのまま排膿に居れたら魔石の間で潰れちまうよ。」


孤児院育ちのアロンは魔玉の存在すら知らなかった為、幸運だったなとしか思っていなかったが、リュークはその存在自体は知っていたため手に汗を握る程アロンの魔玉に対する扱いに緊張していた。


「よし、採取終わりっと。それじゃあリュークこれからどうする?俺としてはもう少し先に行ってもいいし、魔玉の安全を考えてもう帰路についてもいいと思っているが。」

「これは帰る一択だろう。もし無くしでもしたら一体いくらの損失になるかアロンは分からないだろう。」


「まぁ、分からないけど、リュークがそこまで言うのなら、よほどこれを見つけたことは大事なんだろう。慎重に帰るとしよう!」

こうしてアロンとリュークは冒険者候補試験で苦汁をなめさせられたコボルトの集団を見事に倒し、都市へと戻ることを決めた。


魔玉を抜きにしてもアロンとリュークの初めての遠征は、道中のゴブリンの集団との遭遇やホーンウルフの討伐によって1週間の討伐記録としては金銭的にも精神肉体的も大満足ができる結果となった。



彼ら二人のコボルトとの戦闘から3日後の夜、ようやく二人は森を抜けて草原へと足を踏み入れた。

「よし、ようやく森を抜けた、、今日は門もしまっているだろうしここで野営しよう。」

「ああ、そうだなすぐに乾燥した木を集めよう。これじゃあ足元しか見えない。」


アロンとリュークは持っているたいまつを地面へと置いて落ちた木の枝を探しに行った。

火が安定した時にはアロンとリュークのお腹はここ1週間で最高潮に減っていた。


「アロン、俺は何か食わなきゃ死んでしまうよ。」

「俺もだリューク、まだ干し肉ってあったっけなぁ」


そう言って地面に座って背嚢の中を探ってみると中からは干し肉の端切れが4個出てきたのみであった。

「リューク、、俺の背嚢はこんなけしか残ってないよ。」

「お前もかアロン、俺もおんなじだ。かけらが3つ。城壁の内側を行けばすぐ暖かい料理が食べられると言うのに。」


アロンとリュークはちびちびと干し肉のかけらを大事そうに食べきり、埋まらない空腹は腰から下げた水筒の水で満たし、テントの中でもう一晩過ごすこととなった。


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