第7話 過ぎ去る一か月
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アロンが店から既に見えていた待ち合わせ場所に走って近づいていくとそこには既にリュークの姿があった。
彼の胸には蛇のような模様が入ったワイン色の丈夫そうな胸当てが装着してある。
「リューク!お待たせ。いい防具が手に入ったかい?」
リュークは大きな戦斧を背負ったアロンに開いた口が塞がっていなかったが、アロンが問いかけると意識を戻したようにハッとして答える。
「ああ、これはなこの都市付近のヘルキー大洞窟の固有種レッドハウンドサーペントの皮膚を何層にも重ねた防具らしい。これでも14万マニーを払うことになったんだが、アロン、、お前それ盗んできた訳じゃないよな、、」
「ははは、ちゃんと買ったよ。500万借金してだけどね。実は店主の人が俺と同じ孤児出身で借金して買ってもいいからこれをって勧めてくれて。」
笑いながら話すアロンにリュークはまたしても口を開けて驚愕した。
「5,500万の借金、、アロンそれは利子だけでもとんでもないから今すぐ返してきた方がいい。」
「いや、利子も返済期限もないんだ。俺は一括でこの武器が買えるような大物になったら代金をあそこのお店に返しに行くつもりだよ。」
「そ、そうか、俺とは心臓の強さも考え方もかけ離れてるらしい。まぁ、お互い気に入ったものが手に入って何よりだ。」
新たな装備を手に入れた二人は街道を離れ、ギルド近くの安い食堂を見つけて昼食を取る。
「アロン、明日からはどうするんだ?俺達魔物の居る森へ行くために必要な物資を買ったらもう金は無くなるぞ?」
リュークは自分の頼んだ安いが、凄く硬いステーキを嚙み千切りながらアロンに尋ねた。
「俺は今日合わせて1か月は森の傍で野営しようと思ってたんだが、どうだ?」
「確かに、俺らの野営技術はまるで無いに等しい。ジェシカの火魔法に頼って火おこしすらまともにできないから名案だと思う。食料も自分たちで調達すればいいし、そうしよう!」
午後、2人はこれからの冒険生活において必要になるであろう二人用テントやさほど高額でないポーションをお金を出し合って購入し、アロンは残りのお金で新しい靴や、丈夫そうな古着、紐の食い込みを和らげる魔物の革を購入した。
荷物は比較的大きいものをリュークが、グラントを背中にかけているアロンは小さいもの全般を背嚢にしまってなるべく武器が取り出しやすいように工夫する。
日が落ちる前、2人は大門を抜け都市を後にして森と草原の境目へとやってきた。
「よし、ここが俺たちの家だ!」
ようやく野営の準備が整った頃には辺りは真っ暗で火が無ければ何も見えない状態になっていた。
アロンたちは今日だけはと買っておいたパンと干し肉をほおばり、魔物の心配がないこの場所で野営生活一日目を終えた。
翌朝早朝からアロンたちは各々で訓練や狩りを開始した。
アロンはまず草原でグラントを扱う練習をこなし、筋力を増加させるためのトレーニングも限界を迎えるまで行うことに決めた。
そのせいもあって一日の終わりにはリュークの狩ってきたウサギ2匹のほかに得た食料は無かったがアロンはリュークに感謝して満足のいく食事ができた。
次の日は前日の失敗から学んでアロンは先に野営地から離れた所に孤児院時代に習った罠をいくつも森の中に仕掛けてから厳しいトレーニングを筋肉痛に悩まされながら行った。
そのおかげもあって、その日何狩ることができなかったリュークの代わりに同じウサギを罠で捕まえることができたアロンはリュークと分かち合った。
一週間に一度はギルドへの挨拶と所用で街へと戻っていたアロンとリュークだったが、代り映えのないひたすらトレーニングをし続け、2人ともが一か月後には見違えるほどの野営技術を身に付け、アロンはグラントの扱い方、リュークは自分の剣の扱い方にさらに磨きをかけていた。
特にアロンには外見の変化が著しかった。
毎日重たい斧を振り回し、筋トレも欠かさなかったアロンの肉体は肉を食い続けたこともあってだろうか、一か月前より二回りほど大きく見えていた。
もちろんリュークの肉体もかなり改善され冒険者らしい体つきに近づいていたが、アロンの変化は以前の彼を知る人が見たら、かなり面白く映るまでになっていた。
「野営も今日で最後か、なんだかんだあっという間に一か月過ぎたな。」
「そうだな、だがいろんなことを学べた一か月だった。筋肉も予想以上についたし。これでまたこの森の奥へと挑戦できる。」
「ああ、明日干し肉を買い込んで、バークを殺したあのコボルトに俺は復讐するんだ、、!」
「そうだな、、俺が今と同じくらい自信と強さを持っていたなら防げた犠牲だった。協力して打倒そう!」
「おう!じゃあ、明日のために早く寝るぞ、アロン。」
「ああ、おやすみリューク。」
こうして二人の一か月に及ぶ肉体改造野営合宿が終わりを迎えた。
晴れの日も雨の日も関係なく自分自身を追い詰めた彼らは精神的にも肉体的にも冒険者候補であったときより数段上をいる。彼らがコボルトを倒す日もそう遠くはない未来になっていた。