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第3話 顔の分からない女性
君は自分の顔を忘れてしまったらしい
「どんな目鼻立ちをしていたのかしら」
首をかしげてる
君は大きな目をしていたよ
可愛らしくて キラキラとした光があった
君は小さな鼻をしていたよ
すっとした顔立ちに見えるけれど愛嬌があった
君は優しい口元だったよ
いつも穏やかに弧を描いていたんだ
君はやわらかい頬だったね
わずかに朱が差す瞬間がたまらなく愛しかった
君は細い眉だったよ
たまに困ると盛大に角度が付いてたんだ
君は少し耳たぶが広かったよ
ピアスに興味があるけど怖くてできないって言ってた
君が自分の顔を忘れてしまったなら
僕が覚えている君の顔を伝えてあげよう
「ストーリー」
鏡を見せて「はい、これが君の顔だよ」っていうのはしたくなかったかな。
だって、君の顔には僕が見つめて来ただけのたくさんの思い出があるから。