滞空 Delay me from the world
こんばんは、シラスよいちです。眠いです、、、
今回はありそうでなさそうでありそうな青春短編です。
ぜひお楽しみください!
「俺にッ!」
セッターに叫び、仲間を信じて跳ぶ。
俺は御剣高校バレー部で主将を任されている高校3年、カイ・エリクだ。このチームのエースアタッカーでもある。
見てわかる通り、俺はイタリアと日本のハーフである。父親はイタリアで働いていて、俺は日本で母親とともに暮らしている。最近はバレー三昧の日々を楽しんでいる。
それだけで事足りる人間だった、昨日の夜までは…
今朝夢の中に、突然神様がやってきて、
「お前は抽選で選ばれたから、特別に異能を授けてやろう」
「は?なんで?」
思わず問い返すと、神様は神々の遊びだよと、冗談めいた返答をいけしゃあしゃあと口にした。
そんな冗談を一方的に宣言され、夢から覚めると得も言われぬ不思議な感覚が脳内にあり自分は異能者に作り変えられたのが分かった。
___自分以外の世界の時間軸を早くすることが出来る。
つまりは、時間を早送りして自分の動きを極端に遅くすることが出来る。世界から見れば、一人だけかたつむり並みのスピードで動くのだ。
全く使えない異能だ。マンガの主人公でもこんな能力が与えられたら嘆くだろう。
「今日はライバル校との練習試合があるってのに」
呆れつつ、自分に与えられた能力を発動してみる。窓の外の車、時計の針、全てがギュンと音を立てそうな勢いで進んでいく。
新しい事象を妙な感覚で楽しみながら、まぁポジティブにいくしかないかと開き直る。
なぜならうちの部のスローガンは「上昇志向」。くよくよしてる暇などないのだ。
いつも通りトーストにハムと目玉焼きを乗せてパッと朝食を終えると自転車に飛び乗り会場の高校へと急ぐ。良いウォーミングアップになるといいんだが。
ほどなくして試合の幕は上がる。相手は美楯学園、リベロの静守率いる圧倒的レシーブ力を誇るライバル校である。とにかくボールを拾いに拾って粘り勝つ守備力なら県内トップのチームだ。
それに対して、パターン化された攻撃を磨き上げ安定した攻撃力を売りにしているうちのチームは対照的だ。
「ずっと空飛べたら全勝だろうなぁ」
体育館の窓の外を悠々と飛ぶ鳥を眺めて、誰かがそんなことを言った。
「んなこと出来る訳ねぇだろ」
笑い飛ばして円陣を組む。もう脳内に異能なんて
第1セットをうちが、第2セットを相手が取って第3セット。クールタイム中、飄々としている彼は呼吸を乱さずいつもより落ち着いている。だが、自分の中で納得できないプレイでもあったのか珍しく何かに頭をひねる様子も見られた。
___あの完璧超人が
それを脇目に世界を加速させては通常速度に戻して遊んでいた。
得点は24-23。最終局面、ここを決めれば勝ちだ。
両チーム心身ともに限界、ここで決めなければ、次のローテーションは相手チームが最も有利なターンなのでここで決めなければあとはない。
どうにか相手を崩したい。そのとき試合開始時誰かが言った一言がふと思い出される。
___ずっと空が飛べたら?あの役立たず能力があれば出来るかも
頭の中にあるアイデアが降ってくる。
バレーボールのスパイクにおいて、ジャンプ力と滞空時間はとても重要だ。
アタックもブロックも、完璧に打てるのはほんの一瞬だけ。そのほんの一瞬の滞空時間を長くするには、高いジャンプ力ときれいなフォームを保つ体幹が必要だ。
ならボールの落下点に先に入って世界を加速させて自分にボールを自分の手に落下させれば、確実に叩き落せる。しかも自分の時間軸が遅くなっていることになるので、滞空時間も長くなる。
そこで最初のシーンに戻るのである。
相手のサーブを受けて、体制が整わないためとりあえずゆったりとしたペースでボールを返す。そこから返ってきたボールは、微妙にゆるいボールだ。
コート右のセッターにボールが回ると分かった瞬間、コート左に走り込みネットに向かって全力で跳ぶ。
「俺にッ!」
ジャンプした瞬間、最高到達点で世界に加速を、自分に遅延をかける。
自分の手に猛スピードでボールが吸い込まれていく。
ドンピシャ、相手コートがら空きのセンターにボールを叩き込める。
俺はそう確信した。
いかがだったでしょうか?正直某バレー漫画のせいでバレーに興味しかない状態です。
そんなこんなで書き散らしました。深夜2時の現場からは以上です。次回作もご期待ください!