東の島国の果し合い
名もない小さな神社の本殿前にて、二人のサムライが対峙していた。
「やっと見つけたぞ。宇都一益、もう逃げらないぞ。」
長かった。本当に長かった。
国を出て、3度目の夏を迎えようとしていた。セミはまだ鳴いていないが、若干汗ばみを感じる。
大きな都市や宿場町に立ち寄っては、聞き取りを行い、ただひたすら人を探す毎日であった。顔の特徴や背格好。または、剣術の癖や口癖だけで人を探さなくてはならなかったのだ。ほぼ全ての人が、知らない。との返事である。たまに、心当たりがあると言う言葉を聞くと心臓の鼓動が早くなりはち切れそうになるが、全てが別人であった。
何度、諦めて国に帰ろうと思ったことだろうか。
二度と見つからないのではないか。
もうすでに死んでいるではないか。
全く逆方向に逃げたのではないか。
心が壊れる寸前になって、偶然見つかった。
いつもであれば、人通りの多い道を歩くのだが、ふと路地の先に小さな神社があるのが見えて足を運んだのだ。
何となく、神頼みでもと思った。
特に意味は無かった。
思った以上に綺麗に整備されており、落葉もなく砂利もきれい整えられていることから毎日掃除されているのだろうと感じる。
参道の中腹には、石の鳥居があり、先には少し歴史を感じる本殿が構えてある。
先客が、手を合わせていた。
振り返る姿を見て、絶句と共に心臓の鼓動が今まで以上の速さで身体全体を叩くのを感じた。
数十秒ほど、声が出なかった。
自分が知っている宇都の姿と少し違っていたからだ。
体は、やせ細っており髪はボサボサ、着物にいたっては裾がほつれてボロボロで肩のあたりは穴まで開いている。
道場で何度も手合わせしていた時とは、全く想像が出来ない姿であった。
宇都の実家は、武士の中でも上流の地位にあり、着物や身なりはいつも整っていた。
髪にしても、毎日結い直していて憧れの眼差しを仲間から常に注がれていた。
そこからは、まるで別人であるが、探し求めていた本人であると確信していた。目の下のホクロと右肩下がりの姿。そして、全体から出される雰囲気は、以前と全く変わっていなかった。
鋭利な刃物を彷彿させる殺気が、身体全体からオーラとして表れていた。
腕前は、落ちていないのだろうな。
自然と、右手は刀の柄に手を掛けていた。
「なぁ、浅野よぉ。」
依然、刀に手を掛けていない宇都は、俺に声を掛けてきた。
「……」
俺は、無言で宇都を睨みつけて、続く言葉を待った。
「見逃してくれねぇか。お前も俺を探し回って疲れただろ。病死か野垂れて死んだってことにして、国に帰ってくれねぇか。」
「ふざけるなっ。やっとの思いで、お前を見つけたんだぞ。それに、同門の仲間を殺して許されるわけないだろ。ここでお前を殺して、国に帰らせてもらうぞ。」
「その同門殺しなんだが、俺じゃないんだよな。信じてもらえないだろうがな。」
「問答無用!」
これ以上の会話は、相手の流れになり俺の殺意を削ぐ作戦と考え、いきなり切りかかることにした。
刀を抜いたと同時に、振りかぶって切りかかった。
ガキっ
刀が同士がぶつかる音が、周辺に響いた。
いつ刀に手を掛けたのか、刀を横にして宇都は防いでいた。
宇都は、押し上げて返す刀で斜めに刀を振るう。
咄嗟に後ろに下がるように、かわすが裾が切られていた。もう少し、送れていたら腹を切られていた。
一旦、宇都が一歩下がり間合いを取った。
俺は、最上段に振り上げる構えをすると、宇都は下段の構えをしていた。
ジリジリと足をスライドさせる。
お互いが対照的に同じ動きをする。
勝負は、一瞬で決まるだろう。
誘いを掛けるつもりで、構えを最上段から右肩あたりにずらし刀の峰が肩に当たるような構えをした。
トンッ
一瞬、刀の峰が肩に触れた。
宇都の左足が一瞬、勢いをつけるように少し振り上げるのを感じた。
肩に触れ、跳ね上がる勢いに任せて刀を振り下ろす。
一瞬の出来事であったであろうが、興奮しているせいだろうか。宇都の動きがスローモーションのように見えた。
下段の構えのまま近づき、俺の横腹を目掛けて刀を振ってきた。
同時に、俺の刀の切っ先が宇都の首に到達するのが見えた。
宇都の顔は、勝ちを確信してのものなのか。諦めによるものなのか。どういった気持ちであったのか理解できなかったが口元が緩んでいた。
顔に生暖かく、鉄臭い匂いが入ってきた。
宇都の身体は、地面に伏しており首が無かった。
「ハァ。ハァ。ハァ。ハァ。」
肩で息をして、周りを見渡すと本殿の鈴の下に首が転がっていた。
しばらくの間、何も考えることが出来なかった。ただ、宇都の首を眺めていた。
口元が緩んでいた……
初めての投稿。
初めての作品になります。
まだまだ、未熟者です。
面白いのかも分かりませんが、よろしくお願いいたします。




