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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ネオ・ブリザードの万華雹

もふもふ最強うさぎ勇者あらわる!

 

 いせかーい、異世界の事でした。


 ある所に、白くて、耳が長くて、もふもふな一匹のうさぎがおりました。


 実はこのうさぎ、こちらに住む異世界のある王様が、魔王を倒す為に召喚した勇者うさぎだったのですが、うさぎ側としては、勝手に召喚されたのが大変面白くなかったのか、異世界に呼ばれた瞬間に、所謂チートパワーで周りの城を滅ぼし、人間界を壊滅させ始めたのです。



「なあんで兎のアタシが、人間の為に魔王を倒さなきゃならんのじゃあ!?」



 因みにこのうさぎは女性でした。



 もふもふ最強うさぎは、人間界、魔界関係無く壊滅を続けます。


 これで割りを喰ったのは魔界に住む魔王でした。



 部下が、魔王に進言します。



「魔王様! 大変でございます! 何か、もふもふした白い毛玉が周りの町や城を破壊ながら、この魔王城に迫りつつあります!」



 魔王は玉座から立ち上がるとこう言いました。



「ええい! 兎ごときに何をてこずっておる!! 大体、アスタロト隊長率いる魔騎士大隊はどうした! 先手を打って、出陣させたはずじゃろ!?」



 部下は、目を反らしながら答えます。



「二秒で全滅しました」


「な、何だってえぇー!?」



 魔王は両手両足をぴぃんと伸ばし大声を上げると、背中から玉座に向かい卒倒してしまいます。



「魔王様! 魔王様! 大丈夫ですか!?」



 部下が声をかけると、魔王は頭を左右にふりながら、目を覚まします。



「うう……すまない、あまりの事に気を失ってしまった」


「ですが、いかが致しましょう……? このままでは、魔王城が壊滅してしまいます……」



 力なく魔王に語りかける部下……その時です。玉座の間が開き、何者かが入って来ました。



「……魔王さま……! 魔王さま……!」



 それは、死んだと思われたアスタロト魔隊長でした。

 歓喜の声をあげる魔王。



「おお! アスタロト! 生きておったのか!?」



 アスタロト魔隊長は、剣を床につき、ぼろぼろになった身体に鞭打ちながら魔王に近付いていきます。



「……ええ、奇跡的に。実は魔王、私がこうして戻ってきたのは、あのもふもふを倒せる、唯一の弱点が解ったからです!!」


「な、何だってー!?」

「な、何だってー!?」



 魔王と部下は、寸分違わず背筋と両手両足をぴぃんと伸ばし、足がちょっとだけ地面から離れます。



「そ……それで、その弱点とは!?」



 部下が食い入るように聞いてきます。



「聞いて驚かないで下さい……それが、どうやら水みたいなんです!」


「水!?」

「水!?」



 魔王と部下は、狐につままれた様な顔をします。



「ええ……何故かは解りませんが、奴は……水を体内に取り込むと苦しんで死ぬらしいんです!!」


「ま、魔王様! これは――!」


「うむ、あのもふもふ毛玉を仕留められるかもしれん!!」



 もふもふ最強うさぎの弱点を知った魔王は、玉座から威勢良く立ち上がると、右腕を横に振り、部下とアスタロトにこう命じました。



「良し! お前達はこれから城中を散策して集められるだけの水を集めてこい! そして、それを城の前に給水場として設置するのじゃあ!」


「ははー! 魔王様! 仰せのままに!!」

「ええー!? 城にいる他の部下に命じて下さいよー!」



 魔王に命じられた部下は快く、アスタロトはしぶしぶ水を集めにいきます。


 そして集めた水を、城の前に給水場として設置すると、魔王と部下とアスタロトの三人は、玉座の間で、もふもふ最強うさぎが水を飲むのをひたすら待ちました。



「……本当に大丈夫なんじゃろうな……?」


「ええ……情報に間違いはありません!」


「今思ったけど……それ、どこ情報?」



 三人がそんな事を話していると、もふもふ最強うさぎが周りの岩や木々を塵にしながら魔王城の入口までやって来ました。



「しっ! みんな、顔を隠して!」



 部下が両隣のふたりに注意を促し、三人は窓から身を潜めます。



 一歩一歩……魔王城の門に近づく、もふもふ最強うさぎ……



「……ん? なんだい? こりゃあ?」



 と、もふもふ最強うさぎは、給水場の存在に気がつきます。



「魔王様! 給水場の存在に気がつきましたよ!」


「う、うむ!」


「どうです! 私の言った通りでしょう!?」



 途端に騒がしくなる、玉座の間の三人。



 その三人の期待に応えるがの如く、もふもふ最強うさぎは給水場に近付いていきます。



 ……そして……



「給水場……?」



 もふもふ最強うさぎは、水の入った水筒を手に取ります。



「飲め~! 飲め~~!!」

「飲め~! 飲め~~!!」

「飲め~! 飲め~~!!」



 玉座の間から両手を出し、念を送る三人。



「……ふむ」



 少し警戒しているもふもふ最強うさぎでしたが、やがて水筒の蓋を開けると、遂に、中の水に口をつけました。



「やっったーー!!」

「やっったーー!!」

「やっったーー!!」



 三人は、玉座の間で狂喜乱舞します。















 …………しかし…………















「あ、あれ? 魔王様!? 何か、様子が変ですよ!?」


「え!? まじで!?」


「そんな馬鹿な!?」



 急いで玉座の間の窓から給水場を覗き込む三人。

 そこには、給水場の水を美味しそうに飲み干す、もふもふ最強うさぎの姿がありました。



「魔王様! あいつ、けろっとしてますよー!?」


「おい! アスタロト! これはどういう事じゃあ!?」


「あれれー!? 聞いてた話と違うー!?」



 玉座の間の三人は、一転、慌てふためきます。



「ぷはー!! なんてぇ美味しい水なんじゃあ!! 身体の底から力がみなぎってくるようじゃあーー!!!!」



 給水場の水を美味しく頂いたもふもふ最強うさぎ。何の躊躇もなく魔王城にショルダータックルで突っ込みます。




「死にさらせー! 魔王ー!!」



「ぎゃああああーーーー!!!!」

「ぎゃああああーーーー!!!!」

「ぎゃああああーーーー!!!!」




 もふもふ最強うさぎが突っ込んだ衝撃だけで、魔王城は崩壊を始めました。



「どこじゃ! 魔王!! 出てこんかーい!!」




「無茶苦茶だーー!!」


「わしの! わしの城が一瞬でー!!」


「慈悲! お慈悲をーー!!」



 崩壊する城と一緒に、もふもふ最強うさぎのいる一階に落下していく魔王、部下、アスタロトの三人。そのまま瓦礫の山に埋もれてしまいます。



「ぷは!」

「ぷは!」

「ぷは!」



 そして、息を合わせたように瓦礫の山から顔を出す三人。


 そこには、もふもふ最強うさぎが立っていました。



「そぉこかあー! 魔王ー! 覚悟しろー!!」



「ぎゃああああーーーー!!!!」

「ぎゃああああーーーー!!!!」

「ぎゃああああーーーー!!!!」



 三人は必死になって、もふもふ最強うさぎから逃げ出そうとしますが、もふもふ最強うさぎはピコ秒で三人を星にします。




「うはははーーーー!!!! 兎の気持ちも考えずに、召喚魔法何か使うからこんな事になるんじゃあー!! 思い知ったかあああーーー!!!」




 瓦礫と化した魔王城の山のてっぺんで、もふもふ最強うさぎは声高々に叫びます。




 そして真上を見上げると、天に突き抜けるようなかん高い声でこう言いました。





「残りの敵は天界に住むお前らだけじゃあ! 覚悟せいやあぁーー!!」




 もふもふ最強うさぎはその場で脚に力を入れると、そのまま天界に向かって飛び跳ねて行きました。



 ……おしまい。



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― 新着の感想 ―
[良い点]  色んな意味でも最強でした。 [気になる点]  けれど、異世界ではそれでも勇者とされるのですね。 [一言]  きっと私もそうすると思います。  初めてチート転生者に共感を持てました。人じゃ…
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