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17 捜査続行①

捜査が続きます。

 朝になり、私たちは旅館の用意してくれた朝食を取った。それから私たちは13号室へ行き、捜査状況の確認をしてから、その日の捜査方針について話し合った。まずは、旅館の従業員全員から再び話を聞くことにした。事件当日の夜に二階の24か25号室に誰かが侵入したかもしれない件について尋ねたが、目ぼしい情報は得られなかった。


 私たちがお茶を飲んでいると、係長の電話が鳴った。

「おう、嶋村か。うん、うん、おう、本当か、うん、わかった、ご苦労」

 係長はホワイトボードに書き始めた。

「事件当日の吉村の携帯電話の履歴がわかった。夜8時まで、通話もメールもなし。そして夜8時頃に吉村にショートメールが2通届いている。いずれも同じ番号からだ。同時刻に熊田から吉村に通話があり、9時前に吉村が熊田に通話している」

「あれ? 係長、吉村にショートメールを送ったのは熊田じゃないんですか?」

「ああ、そうだ。ショートメールを送った携帯の持ち主は、神田正雄だ」

「えっ! 神田正雄ですか!」

「ああ、この旅館の主人の神田正雄だ。メールの内容は、こうだ。まず、8時2分に『吉村さん? コンパニオンのナナミです。車の中で服脱いで待っててね。もちろん全裸で』。次に、8時8分に『ごめんなさい、吉村さん。今日はやっぱり無理かも。吹雪の日に車の中で一人全裸って、素敵よね。また今度お礼します』というものだ」

「マジ? キモくない? 変態じゃん」

「ええ、変態ね」

「コンパニオンのナナミ? 誰だ? 神田正雄に話を聞くぞ」


 すぐに神田正雄を13号室に呼び出した。

「神田さん、あなた、吉村さんの携帯電話宛てに、事件当日の夜8時から8時半頃までの間にショートメールを2通送りましたね?」

「は? メール? ……おい、ちょっと待ってくれよ! 俺じゃない。本当だ。携帯を失くして見つからないんだよ、事件の起きた日の昼にはまだあったんだけど、それ以降、俺の携帯がどこにいったのかわからないんだ。本当だ、妻に聞いてくれよ。妻が持ってるかもしれない」

「女将さんが?」


 私たちは女将さんを呼び出した。

「女将さん、ご主人の携帯電話のことですが――」

「はい、お恥ずかしいのですが、私が主人から取り上げてしまいました。主人に返そうと思っていたのですが、どこに置いたのか忘れてしまいまして。えっと、見つかったのでしょうか?」

「女将さん、詳しく事情をお聞かせ願えますか?」

「はい、事件のあった日、ロビーで主人が岡倉さんと楽しそうに話しているのを見ました。それで、私は主人がもしかしたら浮気をしているのではないかと思いました。こんな殺風景な旅館に女性がお一人でお越しになるなんて珍しいことですので。それで、主人に携帯を見せてほしいと言いました。私が疑ってかかったものですから、主人もきつい口調で言い返してきまして、お恥ずかしいことに、ロビーで口論になってしまいました。ちょうどそこへ、映画研究会の方が来られました。主人とのケンカを見られてしまい、私は慌てて主人の携帯電話をテーブルの上に置いたはずなのです。映画研究会の方は宴会でカラオケを使いたいとのことでした。私と主人はカラオケの使い方を説明するために、彼らと一緒に宴会場へ行きました。その後、ロビーに戻って来て、携帯電話が見当たらないことに気づきました。その時は、主人が先に一階に下りて行きましたので、きっと主人が先に携帯を見つけたのだろうと思っていました」

「なるほど。しかし、ご主人は、女将さんが携帯電話を持っているのではないかとおっしゃってます」

「いいえ、私は持っていません」

「そうですか。映画研究会の方は、どなたが来られましたか?」

「えー、お名前までは覚えておりません。何分、16名いらっしゃるので。でも確か、おひとりは沖引さん、だったと思います。金髪でロン毛の方なので、覚えています」


 再び神田正雄を呼び出した。

「女将さんはあなたの携帯電話を持っていないそうです」

「俺も持ってないよ!」

「じゃあ、どこにあるんですか? あなたが吉村さん宛てにショートメールを送ったんじゃないんですか?」

「知らないよ! 大体どんな内容のメールなんですか!」

「はあ、まず8時2分に『吉村さん? コンパニオンのナナミです。車の中で服脱いで待っててね。もちろん全裸で』。続いて8時8分に『ごめんなさい、吉村さん。今日はやっぱり無理かも。吹雪の日に車の中で一人全裸って、素敵よね。また今度お礼します』という内容だ」

 係長が面倒くさそうにショートメールを読み上げた。

 神田正雄は不意を衝かれたように驚き、顔をしかめた。

「……えっと、変態ですね」

 神田正雄は困り顔でつぶやいた。


久々の変態トークが出ましたね。

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