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1 事件発生

個人の記録という形式で物語が進行します。

 憧れの職業であった刑事になって五年が過ぎた。交番勤務で一年、県警の交通課で一年、制服警官として働き、その後所轄署の刑事課に配属された。刑事になる前は、テレビドラマのような派手な仕事じゃない、などとよく周りから言われた。しかし、私は子どもの頃から憧れていた刑事になった。刑事課の先輩方からは、そうそう事件は起こるもんじゃないとか、地味な聞き込みが主な仕事だとか、事件なんて実際は単純で退屈なものだとか、言われた。

 ところが、県警の刑事課に配属されてわずか数日後に、管内で殺人事件が起こった。私は組織の歯車の一つとして地味な聞き込みに徹するつもりでいたが、実際は謎を解くキーマンとしてこの事件に深く関わることになってしまった。とても複雑怪奇な殺人事件に。

 警察官として守秘義務があるため、他人に事件のことを伝えるわけにはいかない。だが、この摩訶不思議な殺人事件の真実をどうしても秘密のままにしておくことはできないと思い、個人的な記録としてこの殺人事件について書き記すことにした。

 ここでは、この奇妙奇天烈な殺人事件のことを、『男湯露天風呂殺人』と題すことにする。仮に、二時間ドラマで放送されたとしても、誰も興味を持たないタイトルであろう。間違いなくお父さん方は見ないだろう。それ以前に、このようなタイトルでドラマ化されることはそもそもないだろう。まず企画段階でアウトになる確率が高いと思われる。

 それはさておき、話がそれてしまったので本題に戻そう。私の名は、香崎小春、階級は巡査。首都圏に近い某県某市にある所轄署の刑事である。先述の殺人事件は、20XX年の冬に起こった。以下、登場する関係者の名は全て仮名である。会社名、団体名等も実在するものではなく仮名とする。ちなみに、私の名前は本名である。


 12月20日、私は夜0時ごろ、自宅で妹の夏子と一緒にホラー映画を見ていた。『現実に存在した恐怖の動画』という映画だ。レンタル店でホラー映画を五本借りてきて、翌日が返却日だというのにその一本だけまだ見ていなかった。

 映画が始まってすぐに、お決まりのストーリーだなという気がしてきた。雪深い山奥にある旅館で、宿泊客の若者数人がビデオテープを発見する。それには本物の女性の霊が映っていて、そのビデオテープが実在することを他人から聞いてしまい、呪いの電話がかかってきた場合、そのビデオテープをその日の内に見なければ呪われてしまうというような内容の映画らしい。そんなありがちなストーリーが進んでいくのだなと思いながら『現実に存在した恐怖の動画』を見ていると、私の携帯が鳴った。私と妹は急に鳴った携帯に少し驚いた。連絡は、刑事課の村田係長からだった。

「香崎、殺人だ。すぐに来い。場所は、○○町番外666番地。○○山の外れにある古い旅館だ。旅館の名前は、幽玄荘。高速道路のランプを越えて、ずーっと道なりに13キロほど走って、馬跳橋という橋を渡って、すぐに右へ曲がれ。そしたら一本道だ。行き止まりにある旅館だ」

「はい、わかりました。すぐに向かいます」

「何、事件?」

「うん、すぐに行かなきゃ」

「こんな遅くに? これどうするの?」

「たぶん私見れないから、夏子、見たら明日返却しといて」

「うん、わかった」

「それと、マフラー貸して」

「うん、雪降ってるから、気をつけてね」

 私はすぐに支度して、自分の車で現場へ向かった。


では、第2話へ続きます。

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