親切にされた男
男は、リサイクル着物店を訪れ
店内の女性に声を掛けた。
「 男物の着物を探してるんですけど? 」
女性はちょっと困った表情で、
「 うーん、男物は少ないからねえ。」と応え
奥の男性の方を向いた。
その男性は、店の右端を指差し
「 そこに積んであるの、男物。」と応対した。
女性は椅子から立ち上がり
男物が積まれた所まで来て
「 どの着物がお好みですか?」と、男に尋ねた。
男は、積まれた着物の丁度真ん中辺りの一着を指し
「 この色丁度探してたやつです。」と女性に言った。
女性は、「 古着なのでサイズ合えば良いですね。」と応えながら
上手い手際で、その着物を取り出し
「 羽織ってみて下さい。」と男に渡した。
袖 丈共に丁度良い寸法だった。
「 いやぁ、丁度ですね。良いかんじですよ。」と女性は
男に微笑み掛けた。
男は、探していた品が手頃な値段だったので
あとの品と比べる事なく
「 これにします!」と、その着物を女性に渡した。
女性は、男から着物を受け取り
そのまま 奥の男性に 「 ご主人、お願いします。」と伝え
掛かってきた自分の携帯に出ると
「 もしもし、うん今着物探しに来てるねん。」と通話相手に応えた。
え、探しに来てる?
男は、不思議に思い男性の方を見た。
男性はちょっと微笑み
「 あの人、お客さん。」
親切な客だった。