おわり
転生初日は発見されるところからだった。
ワタシは最強の防具、ビキニアーマーに転生した。口はないため、しゃべることはできないが、最強の防具の所以か、万物の声を聞くことができる。
そのため、耳がないが、言葉が理解できた。そして気が付いた。
この世界には女戦士が一人もいない。
ワタシは扱えるものが誰一人いなかった。いや、いることにはいた。無理やり着ようとする屈強な男たち、数秒でワタシはそのすべてに反発し、装備者を殺してしまった。
普通の人間では許容できない、最強の防具は時として、最強の武器となってしまった。だが、そんなことに気が付く者は誰一人いない。そのため、ある王国の地下に呪いの装備として誰にも触れられないように管理された。
そして、何年か経ち、ついに魔王が誕生し、人間を滅ぼしにやってきた。
その間もワタシは王国の地下に管理されていた。
だが、そんなワタシに光が差した。
勇者と思えるような服装をした人が兵士をどけ、ワタシを掴んだ。この勇者が何をするかは知らないが、ワタシを有効活用してくれるならこの上なくうれしい。
その勇者の仲間たちも全員男だった。呪いの内容もしっかりと耳に入っていたため、装備されることは無かったが、勇者は言った。
「こいつは魔王への切り札だ。一時的に強力な力を手に入れることは把握済みだ」
勇者たちは我が身を犠牲に魔王を打倒そうとしている。そしてワタシは思った。この人たちならば、装備されてもいいと……。
そして勇者は魔王に挑んだ。何人も犠牲を払いながらも、戦いそして、立っているのは勇者一人だった。
「くそ、強すぎる……」
勇者は聖剣を持ちながらも、一切魔王に決定打を打ち込むことができなかった。
「ぬるいな勇者!」
「仕方がない、切り札を使うしかないな」
勇者はついにワタシを取り出した。
そして、装備した。
魔王が!
ワタシは思った。ああそうか。そういう落ちか……と。
魔王はワタシの反発する力によって消滅した。
「汚い花火だな」
そして、世界に平和が訪れた。
ワタシはビキニアーマーとしての生活が終わると思っていた。
魔王を討ち果たし、また転生できると思っていた。けれど、今は地下に管理されていた王国の国宝として、人々に祀られている。
あの女神様の言いつけ通り、魔王を討ち果たした。
けれど、ワタシは一度たりとも、女性の肌に触れられていない。
目があるならば、泣きたかった。
それが異世界での生活の感想だった。