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やっと。

適当に読んで下さい。

 ……ポツン。


「んんん?」


 淀んだ空気の部屋の中で俺は水滴によって起こされた。


「ここはどこだ?」


 辺りは薄暗く、壁に掛けてある古しい燭台のロウソクの火が微かに揺れている。


 ポツリ……ポツリ……と一定のリズムを刻みながら水滴が床に置かれたバケツの中に落ちる。やたらと湿度が高いな。


 ここはどこなのだろうか?俺は昨日、路地裏にボロボロの体で身を寄せて来るはずが無い明日を思い空腹に耐えかねて寝ていたはずだ。


 部屋は石造りでまるで牢獄のようである。簡易的なベッドは草が敷き詰められており、俺にかけられている毛布もボロボロで汚い。壁は長年の水による侵食により緑色になって、崩れそうな状態である。


 体をベッドから起こすと自分が服を着ていることが分かる。かなり小さめの小汚い服だが誰かが着せてくれたのだろう。


 一体、誰なのだろうか?


 ベッドに腰をかけながら長考する。もしかして捕まったのか?浮浪の身である自分には捕まる理由は沢山ある。


 考えれば考えるほどやばい未来しか想像出来ない。強制労働かあるいは死刑か。これなら社畜として働いていた方がまだマシだ。残業はあったが衣食住には一応困らない生活は出来ていたのだし…….。


 そんなことを考えていると壁に書かれている文字に目がいった。


 石で削りながら書かれた文字は"ごしゅじんにあうためにがんばる!"だった。


「なるほどな。"ご主人に会うために頑張る"か」


 !!


「なんで俺は字が読めたんだ!?てか、普通にこれ日本語じゃん!!」


 この世界に来て初めて日本に関するものに触れた。これは俺が1人で放り出された異世界で誰か同じ境遇の奴がいるということを表す意味を示していた。


 はて、ご主人とは何のことなのか。メイドでもしてた人がここにでも飛ばされたのだろう。神様によって異世界にきた人は多いはずだ。あの空間には200人くらいはいたような気がする。


 それにしてもかなり貧しい生活を強いられているようだな。こんな独房みたいな部屋で暮らしていく気力は俺にはない。きっとたくましい精神をお持ちのお方が住んでいるはず。


 そんなことを考えていると部屋のドアがミシミシと音をたてながら開いた。その瞬間、俺は体をこわばらせて部屋に入ってくる人に構えた。


 まさかとは思うが俺を殺しにきたのでは?そう瞬時に考えると絶望的である。


 部屋の外は更に暗く、目を細めて見たがうっすらしか見えない。


 ちゃぷんちゃぷんと水が跳ねる音が聞こえ、人影は何かを運んできている様であった。


「よいしょ、よいしょ」


 可愛らしい女の子の声が聞こえる。持ってきいるバケツに目を向けているためにこちらには気づいていない。


 部屋の中に入ってくるとロウソクの日がほのかに照らし、動く影の正体を映し出す。


「…んーん?犬耳?」


 女の子の頭には犬の耳が付いており、俺の声に反応したのかぴょこんと可愛らしく動く。


「あっ!」


 女の子が俺の存在に気づきこちらに目線を合わせてくる。その時に俺はあることに気がついた。


「えっ、ちょ!なんで全裸なの君!!」

「ご主人ー!!」


 女の子は持っていたバケツをその場に落として俺の方に走ってきてダイブしてきた。


 全裸の女の子に抱きつかれて、俺はただただあたふたしている。


「ご主人、やっと目が覚めたんだね。死んじゃったらどうしようかと凄く心配だったんだよ!!」


「…え?君が助けてくれたのか?いや、その前に何か服を着なさいよ」

「ご主人が着てる服しか私、持ってないの……」


 何?俺に服を着せているせいでこの子の着るものがないのか。でも、女の子が全裸でふらつくのは良くない。それよりは俺がパンイチの方が全然ましだ。そう思い服を脱いで彼女に返した。


「俺はこれで十分だよ。さぁ、服を着なさい」

「ご主人が風邪を引いちゃうよ!!」

「良いんだよ。俺はパンイチには慣れてる」


 そんな会話をして、女の子は服を着た。彼女のサイズだったためにか、俺が着ると小さく感じていたのだ。


「やっぱり、ご主人は優しいね」

「さっきから"ご主人、ご主人"と言ってるけど俺には君が誰なのか検討がつかないんだよ」


 俺はこんな子雇っていた記憶はない。しかも見たところ高校生くらいの年齢だろうか。こんな子をメイドとして雇っていたら犯罪者になってしまう気がする。


「ご主人!!私のこと忘れちゃったの?いっつも一緒に寝てたじゃん。やっとご主人に会えたと思ってたのに…」

「一緒に寝てた……」


 やばい、犯罪臭しかし無い。日本にいた時の俺は何をしていたのか。記憶が全くない。


「あっそうだ。これをしたら思い出すかな」


 そういうと女の子は俺のお腹にダイブしてきて顔を埋めながら鼻を擦りつけてきた。


 ふがふがっ


「はぁ〜、ご主人だぁ。この感じ懐かしいなぁ」


 女の子はとろんっとした表情を見せながら俺に上目遣いをしてくる。


 くっ可愛い……可愛い過ぎる


 なんだこの頭撫でて!!ね?撫でてよ!!と催促してくるような表情はこの顔どことなくコーギーのマルに似てる気がする……


 頭を撫でてやるとふにゃーという効果音が聞こえてくるような表情になり撫で回したくなる。


「お前、ひょっとしてマルなのか?」


 俺は半信半疑ながら尋ねてみる。


「ご主人!やっと気づいたのか、ほんとにニブチンさんだね。そうだよー。マルだよ」


 俺の愛くるしいコーギーのマルは可愛らしい美少女になって俺の前に現れたのだった。



読んで下さいましてありがとうございます。

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