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いきなり死にます

適当に読んで下さい。

「お前、死んだんだよ」


「……へ?」


 自分は何を言われているのか理解することが出来なかった。


 目の前にはふてぶてしい態度でワークデスクに両足を乗せて、ペンをぐるぐると指で回しているスーツを着たメガネの女の子がいるだけだ。


「し、死んだと言いますと。あの、死んだで宜しいのですか?」


「ゴチャゴチャ、うるせぇな。もう1回殺すぞ」


 この子は口がとてつも無く悪い様だ。親の育て方が間違っていたのだろうか。何とも初対面の人に対する態度がなっていない。


「死んだ」と言われると納得するしかない。私はしがないサラリーマンだ。いつも残業に残業を積み重ねて披露こんぱいだ。不注意とかで車か何かに轢かれたりなんだりしたのだろうよ。


 少しだけ落ち着いてきたので辺りの様子を見てみる。周りは白一色であり、そこにポツンと自分と対局の女の子と机がある。それ以外は何も無い。


「……あのー、自分はこれからどうなるのでしょうか?俺にはどうしてもやらないといけないことがあるのですが」


 俺には、どうしてもやらなくてはいけないことがある。それは自宅で飼っているペット達のお世話だ。


 俺には人間の友達と呼べる様な存在は1人もいない。学生時代もずっとひとりぼっちだった。


 そんな中、自分のことを必要としてくれて、俺に生きる希望を与えてくれる友達は動物だった。初めは猫を拾ってきて親に内緒で育てていた。次第に捨てられている子を見つけてしまうとどうしてもほおっておけなくなっていた。


 社会人になってもそんな性格が変わることもなく、人間の都合で捨てられてしまった動物達を保護して友達として迎え入れていた。


 そんな、友達を家に置いてけぼりにして死んでしまうなんてあってはいけない。何としてでも帰らなくては。


「は?知るかよ。神様にでも、お願いしろ」

「神……様?」

「そうだよ。神様だよ。この世の森羅万象あらゆることを司ってる神様」


 そんな存在がいるのか。自分でも驚く程に冷静に考えている。いきなり死んだと言われてもあまり動じなかったのだから、神様の1人や2人この際どうってことない。


「お前はそこそこ良い行いもしてるし、悪いこともしてないからいい線までは行くんじゃね?分からんけど」

「あなたは神様じゃないんですか?」


 自分が今、目の前で話している女の子のことが少しだけ気になった。俺はてっきりこの子が神様だと思っていたのだ。


「あー、私は違うぞ。ただの受付だ。来る人来る人みんな神様に合わせてたら神様パンクするだろ?ここで少しふるいに掛けてるんだよ」


 受付にしては態度わるいなぁとか思いながらも頷いている。


「後ろに人がいるだから早く行けよ」


 受付の女の子は親指で後ろを指しながら、キレ気味に言う。指の指す方にはさっきまで無かった木製のドアが見える。あそこに入れという事なのだろうか。


 俺は歩みを進めドアノブに手をかける。


「あー、神様によろしくな。粗相はすんなよ。私の業績に傷がつくからな」


 その言葉を片耳で聞きながら、ドアを開くと俺は中にへと吸い込まれて行った。一瞬だけ目の前が暗くなる。


 反転して、また白い空間に放り出された。勢い余って体を支えることが出来ずに床に手をついてしまった。


 何やら周りがざわついている。恐る恐る顔を上げると周りには複数の人がいる。老若男女関係なく、様々な人が同じ空間に集められていた。みんな、不安なのだろうか、周りの人間に一体ここがどこなのか?あなたは誰なのか?と尋ねている。


 そして、目の前のステージらしき所に1人の若い男性がいつの間にか立っていることに気づいた。周りの人も注目している。


「えー、そろそろ受付終了したのかな?まぁ、いいや。皆さん、こんにちは。神です」


 とても軽い感じに神様だと名乗る男が挨拶をし始めた。神様と聞いていたからもっとおじいさんみたいか、あるいは女神様みたいな美女を想像していたけど随分とかけ離れたのが出てきた。


「地球が人で溢れ過ぎていたので、皆さんは残念ながら間引かれる対象となってしまいました。故に私が殺したと言っても過言ではないでしょう」


 神様はいきなりとんでもない発言している。俺たちが選ばれて、そして殺されたと。辺りでは「ふざけるな!」とか「家に返せ!」等など怒号が飛び交っている。


「落ち着いてって。死んだことには変わりないのだから今喚いてもしょうがないでしょ?僕もね、悪いとは思ってる。だから、別の世界に転生か転移って形で許して」


 神様がごめん、ごめんと片手で謝っている姿が少しだけ滑稽に見える。それでも、怒号は止まない。


「あー、もう分かったから!実際に証拠見せればいいんでしょ?そこの目の前のチャラついたお兄さん、ちょっと前に来て」


 神様は1人の男性を使命して、ステージに呼んだ。彼はずっと神様の前で怒鳴り散らしていた男だ。


「君君、これから異世界に転生するけど何か要望ある。1個だけ叶えるよ?」


 神様は椅子によっこらせと腰を下ろして男に問いかけた。


「は?ふざけんなよ、何様のつもりだお前。いいから、さっさと地球に戻せよ、カス」


 男は神様にがんを飛ばしながら高圧的に話した。神様が軽い感じで話している事で自分よりも弱いと思っている節が感じられる。


「あっそ、お前ムカつくから消えて」


 神様が自分の指でスーッと宙を指でなぞると男が破裂した。それは正しく破裂と呼ぶに相応しいように白いステージの空間に赤い血が飛び散っている。


 目の前で生々しいスプラッターを見せつけられてしまい周りの人も言葉を失っている。いつの間に怒号もきえさっていた。


「僕は気が短いから早めに頼むよ。後、みんなが行く異世界は同じ所だからばったり会うかもね。そん時は仲良くしてね」


 神様が次々と使命していき各々欲しい力や武器、容姿などを注文していく。神様は無理と言うことも無く言われるがままに応じている。そして、願い事を言った人々は神様が指パッチンをすると共にどこかへ消えていった。


 そして、ある1人の男がステージにあがっていく。


 その顔を見た時、俺は一瞬目を疑った。あの他者を嘲る様な卑しい笑み。俺が大切に育てていた最初に拾って来た猫。みーちゃんを殺した男が目の前にいた。


 アイツは俺と同じ高校に通っていた男で同じクラスだった。みーちゃんが家から脱走した時に公園で火を付けて遊んでいたのだ。まだ、小さい体だったのに火だるまにされたみーちゃんは俺が止めた時には丸焦げになって死んでいた。


 その時に奴は笑っていたのだ。俺が大声で泣いている隣でクスクスと笑っていたのだ。


 俺は放心状態で殴る気力も出ずそこでうずくまっていた。それ以来、俺はあいつを許せない。


 そんな男が目の前にいたのだ。


 俺はいても立って居られずステージに駆け上がった。


「ちょっとちょっと、お願い事は1人ずつだって言ったじゃん〜」


 神様が少し嫌そうな顔している。


「お前、俺のこと覚えてるか?」

「んっ?あ、あーあのゴミクズの持ち主じゃん。元気にしてる?」


 悪びれる様子もなく、二タニタと笑いながら俺のことを挑発してくる。


「なに?どうしたの?そんな怒った顔をして。まだ、猫を燃やしたこと怒ってるのか。昔の事じゃんかよ、水に流そうぜ」

「あの子は雨の中、必死に鳴いていたんだ!誰かに見つけて欲しいって。それで俺が助けた命なんだよ!それをお前がぁ!!」


 俺は怒りに任せて奴を殴ろうとしたその時


「喧嘩は良くないよ。俺の前でするのは止めて」


 神様が真ん中に入って来た。


「どけよ、あいつは俺が絶対に許さない」

「僕、一応神様だよ。口を慎もうね」


 そう言うと神様が俺にデコピンをした。すると俺は勢いを付けて吹っ飛び白い壁に激突した。


「復讐とかするなら、異世界でしてね。どうせ同じ世界なんだから」


 動けなくなり、地面で這いつくばってる俺を尻目に神様は奴の願いを聞いているみたいだ。遠くなんて言ってるのかは聞こえない。


「お前、名前は何ていうの?」


 猫殺しの男が問いかけて来る。


「俺の名前は小野寺晴人」

「晴人ね、俺は遠山隆一だ。あっちで待ってっから。いつでも来なよ、じゃあーな」


 手を振りながら神様の指パッチンと共に姿が消えた。


 悔しくて涙が出てくる。俺にはいつも力がない。愛情も友情も全部あの子たちから分けて貰っているものだ。


 力が無いから死んでしまった。家で今頃、お腹を好かせているのではないか。自分の帰りを待っているのではないか。とても心配だ。


「ではでは、晴人くんとやらは願いあるかな?」


 神様は地面で倒れている俺に近づいて来て問いかけてくる。


 俺の願いはただ一つだけだ。


「地球において来た俺の仲間たちともう一度会いたい」

「そうかそうか、それだけでいいんだな?」

「あぁ、それ以外は何も要らない」

「分かった」


 神様は俺の願いを聞いてから後ろを向き自分の椅子に向かい歩いていった。そして、何かを思い出したようにこちらを振り向くと言った。


「君は少し騒ぎを大きくしすぎたから、しょうがないね」


 パン!と音が空間にコダマする。それと同時に俺の床に丸い穴が空いた。そして、俺は吸い込まれるように穴の中に落ちていった。

読んで下さいましてありがとうございます。何とか完結させたい……

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