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貴方が隣にいる世界 -Cthulhu Mythos-  作者: 柳野 守利
第九章 鏡合わせの観測者
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第133話 引けない


お久しぶりなので前回のあらすじ


男女が反転した世界に来てしまった三人。実はこの世界仮想世界じゃねと気づいてしまう。


西条「こんなことできるやつひとりしかいねぇよなぁ?」


ニャル「だいせいかーい」


三人「ファッ!?」

「流石だね、西条 薊。君ならすぐに答えに辿り着くと思っていたよ」


 喪服を思わせるような黒の服に身を包み、見るもの全てを魅了するような美しい容貌を持つ女性。西条と翔平にとって、それは紛れもない事実。背丈が低めの可愛らしい女の子がコテンッと首を傾げるように、気の強そうな女性が腕を組みながら睨んでくるように、それは心の奥底にある理想の女性像を映し出す。


 ただそれでも、その滲み出る嫌な気配を本能で察してしまう。修羅場をくぐりぬけてきた彼らにとっては尚のこと。隠していた武器を握る手には嫌な汗が湧き出ている。


「……貴様がニャルラトテップか」


「そうだとも。初めまして、かな。それとも……久しぶりと言うべきか」


「会ったのは初だがな」


「そうかな? よく思い出すといい……君は『私』に既に会っているよ」


 含むような嘲笑を続ける彼女の言葉に、西条は一瞬思考を途切れさせる。会ったことがあるといわれたが、そんな覚えはない。いつ、どこで、どのタイミングで会ったというのか。


 しかしそれをこの場で考えるのはあまりに愚策。すぐに思考を振り払い、鞘に納められた刀をゆっくりと抜く。目の痛くなるようなバグだらけの空間で、彼の神秘を帯びた刀──最上は全てを癒すような淡い輝きを見せつける。


 鏡を思わせるような透明感のある刀を見たナイアは、一瞬眉をひそめた。当然だろう。この刀はノーデンスから授かった加護を持つ。最悪とまではいかずとも、少なからずナイアにとっては忌避感を覚えさせるものだ。この隙を逃すものかと、氷兎はナイアに問いかける。


「……一体、なんの目的で俺たちをここに連れてきやがった」


「目的? いいや、むしろご褒美と言って欲しいね。私からのささやかなプレゼントなんだ、これは。君にとって、とても重要な……ね」


「御託はいい。とっとと俺たちを元の世界に戻せ。さもなくば……ここでケリをつけるか」


 西条が地面と水平に刀を構える。霞の構えをとった彼に、しかしナイアはその余裕そうな嘲笑を崩さない。負けることはないと思っているのだろう。事実そうだ。彼女に一時ばかりの敗北こそあれ、完全な負けはない。ここで彼女を刺したが最後、それは己に返ってくる可能性がある。全人類でありながら個人である、なんて酷い話もあったものだ。


「少しは落ち着きたまえよ。別に、帰りたければ帰るがいいさ。この世界でVR室に行けば、君たちが使用していた装置がある。作動したままになってるそれを止めれば、君たちは元の世界へと帰ることができるとも」


「そんな話をバカ正直に信じろとでも?」


「だが、それ以外に帰る道はない。所詮この世界は作り物。データを元に作られた、仮想世界だ。でも……どうして仮想世界というものは存在するんだろうね?」


「話に耳を貸す必要なんざないですよ、西条さん。コイツの話は半分程度で聞き流した方がいいです。嘘と真実を織り交ぜて話すぶん、タチが悪い」


 話す表情や声音、心情を察することで氷兎と西条は嘘かどうかを見抜くことに長けているが、問題はナイアに顔がない事だ。それでは氷兎に見抜く術はないし、西条にとっても読み難い。


 唯一雰囲気でしか察することのできない翔平は、ただデザートイーグルを両手で構えながらじっと待つことしかできなかった。氷兎の陰に隠れながら機会を窺う彼には、いつだってナイアの頭を撃ち抜く準備ができている。


 それを知っているだろうに、彼女にはまったく慌てる素振りがない。厄介この上なかった。


「フフッ、考えるのを放棄するのかい? いや、それでも構わないとも。思考放棄した人間の行く末なんて見飽きたものだけどね。醜く死ぬがいいさ」


「……さっきっから聞いてりゃ、意味わかんねぇことばっかりだな。結局のところ、アンタは俺たちにどうして欲しいって言うんだ?」


「なに、少し話をしようと思っていただけさ。それが終われば一足先に帰るよ」


 彼女は通路の奥側の壁に背中を預け、腕を組んだまま正面にいる三人を見据えてくる。手を出す気はないという意思の表れなのか。そんなもの信用に値しないと、武器を収めたりはしないが。


「話を戻そう。仮想世界についての話だったかな。そもそもシミュレーションというのは、ある法則に基づいた模擬実験のことだ。地震や津波による建物の倒壊とかね。つまるところ、それを実験し、観測しなくてはいけないのさ。そして、観測者が失われた時……仮想世界は、その意味をなくす」


「……だからどうしたというんだ」


「わかりにくいかい? なら、ゲームで例えよう。君たちの世界をセーブファイルA、この世界をセーブファイルBとする。勿論君たちは真っ当に生きて、正史の歴史をAで歩んでいた。ところが手違いでセーブファイルがコピーされ、Bが作られた。プレイヤーが遊べるのは片方だけ。Aからやってきた君たちだけが、このBという世界で遊べるのさ」


「余計に意味がわからなくなってきたんだけどさぁ……なんでAの俺らがプレイヤーなの?」


「ちょっと黙ってろ。頭で整理してる途中だ」


 西条に黙ってろと言われてしまっては、何も言うことはできない。物悲しそうな顔をして前にいた氷兎の肩を叩くが、今は慰めも何もできないでしょ、と言いたげにため息をつかれる。余計に翔平の心が抉れた気がした。ノリでぴえんなんて言ったら最後、二人から蹴りが飛んでくるだろう。言いたくなるのをぐっと堪えた。


「さて、Bにいるプレイヤー。あえて観測者と言おうか。この観測者はAから離れてしまっただけで、Aという世界は君たちがいなくともつつがなく続いていくだろう。だが……Bはそうはいかない。手違いで作られたBは仮想世界だ。そこに観測者がきたことで、シミュレーションは再開された。当然……観測者がいなくなれば、この世界はそこで終わり。電源を落としたゲームのように、保険で作られた別データのように、二度と遊ばれることはない」


「……俺たちが帰還すれば、この世界は止まると。そう言いたいのか」


「その通りだ。無駄なシミュレーションを続ける意味はないだろう?」


 世界が止まる。だが、言ってることはこの世界の全てが終わってしまうと言い替えても問題はないだろう。観測者がいなくなってしまえば、この世界で物語が紡がれることはない。三人がいなくなったこの世界は、消えてしまうのだ。永遠に動き出すことはない。


 どの道バグだらけのこの世界は、いずれ崩壊する可能性もある。そうナイアは付け加えた。それを聞いて、一体どうしろと言うのか。勝手にこの世界に連れてきたくせに、と怒りが込み上げ、同時に変な虚しさや虚脱感を覚えさせる。


「君たちは重要なファクターであり、観測者(Observer)。その存在がこの世界にある限り、たとえ意識が途絶えようとも世界は存続するだろう。さて、この話を聞いた君たちは帰還することを選んでもいいし、残ることを選択してもいい。バグは残るが、遺恨は残らない。そうだろう?」


「随分とふざけた真似してくれたな……だけど、帰るって選択肢を選ばないとでも? 菜沙も、桜華も向こうで待ってんだ。俺の居るべき場所はここじゃない」


「当然だな。この世界に親はいない。復讐のために生きてきたのに、それを失っては元も子もないのでな」


「……まぁ、そうだよなぁ。家族とか、大事なもんとか全部向こう側だし。ここにいるってわけにもいかねぇよなぁ」


 三者三様ながら、帰還することを決意した。いや、帰還しなくてはならないのだ。どうあれ全て元の世界にある以上、それを手放すことはできない。家族、友人、恋人、復讐者。それらを捨てきることはできなかった。


 その答えを聞いて、ナイアは口元を片手で隠しながら嘲笑(わら)い始める。上品な仕草から放たれる神経を逆撫でするクソみたいな声。思わず眉間に皺がより、一発かまそうかと思ってしまう。


「ハハッ、アッハハハハッ、そうだとも! 君たちはそれを選ぶしかないんだ! 帰り給えよ、君たちの居るべき場所へと! フフッ、ッハハハッ!」


「──やかましいッ」


 透明な刀が一瞬の煌めきを放つ。瞬時に振り抜かれた刀は見えるだけの刀の範囲よりも遠くまで軌跡を描き、壁に傷をつけながらナイアごと斬りつけていた。


 斬られた彼女は胴体の中ほどから二つに分かれ、そのまま水のような黒い液体となって地面に溶ける。そのまま元から何もいなかったように消えてしまった。風俗店の通路には、天井から奥の壁、更に左の壁へと続くように斜め一文字の痕が残るだけだ。


「……仕留め損なったか」


「まぁ、いくらノーデンスの加護といえどもって感じですかね……そもそも、そこにいたのがやつの本体かってのも怪しいですが。案外分身かなんかだったのかもしれませんね」


「壁まで斬りつけちゃってまぁ……一瞬で数メートル先まで刀の範囲伸びるの、控えめに言って頭おかしいな。お前とはもう正面からやり合いたくねぇわ」


「最上がなくとも、正面から来るだけならば全部斬り落とすだけだがな」


「弾丸を斬るなって。五右衛門かよ」


 軽口を叩きながら、周囲をざっと見回す。氷兎も嫌な気配を感じなくなっていた。もう周りには何も潜んでいないだろう。それを伝えると、各々持っていた武器を隠していく。


 これからどうしようか。そんなことは話し出す前から決まっているようなものだった。刀を隠した西条が一足先に出口へと向かっていく。背を向けたまま語りかけてくる彼の言葉に、二人は何も言うことはなかった。


「帰るぞ。俺たちの世界へな」


 それが何を意味するのか、理解している者と、いまいち理解していない者。けれど時は進むばかり。足を止めている暇は、彼らには残されていなかった。




〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜




 元の世界のカードが使えることに安堵しつつ、彼らはオリジンのビルへと入り、エレベーターを使って地下に潜る。フードを被って顔が見えないようにしつつ、花が咲き、人が語り合う噴水広場を通り抜けた。向かうのは司令室のある本部棟。そのVR訓練室だ。


 足早に去っていく彼らの姿を見る者はいても、止める者はいない。そのまま何事もなくVR室にたどり着き、部屋に入っていく。


「……本当に、これで帰れるんですかね」


「さぁねぇ。ナイアの言うことを真に受けるならって感じだけど」


 三人で横並びになりながら、部屋にあるVR装置へと歩みを進めていく。彼らの歩む固い音が室内に響いていて、妙に鼓動を早めていた。


「信じるべきかって言うなら、俺は逆の見解ではあるんですけど……手段がこれしかなさそうってのも事実ですし。どうなんですかねぇ、西条さ──」


 疑問を投げかけるべく、二人の間を歩いていた西条に視線を向ける。しかし次の瞬間、ふと視界から消え失せた。そして、代わりに響いてきたのは鉄のぶつかり合う硬い音。


 一体何がと言葉にするより早く、二人は瞬時に背後に向き直る。そこにいたのは、透き通る鏡のような刀を鍔迫り合わせる、二人の西条の姿。そしてそれを背後から見守っているこの世界の唯野と鈴華だった。


 ギリギリという音が聞こえている。上から抑えかかるように斬ろうとしている薊を、西条が下から押しとどめていた。数秒の間の後、西条が強引に刀を流して彼女の体制を崩す。即座に真一文字に振り抜き、斬り伏せようとするが……それよりも早く薊は後方に飛ぶように下がり、彼女の前に唯野が槍を構えて立ち塞がった。


(音がしなかった……いつの間にそこにいたんだ……)


 西条が気づいていなければ背後から斬りかかられていただろう。元から部屋の中にいたのかもしれない。だとしても音もなく斬りかかるとは。西条の手腕を褒めるべきか、非常識な奴だと蔑むべきか。


 しかしその言葉を言う資格は己にないことを、氷兎はわかりきっていた。相棒は慌てふためき、事態がどうなっているのか理解できていないようだったが。


「……いきなり背後から襲いかかるとはな。不躾な奴だ」


「不躾だと? 貴様、一体どの口で言うか」


「ふっ、なるほど。貴様あの時、あの場にいたな。話を根っから聞いていたんだろう」


「当然だ。徹頭徹尾、聞かせてもらったとも。だからこそ……貴様らを帰す訳にはいかん」


 体勢を立て直した薊は再び霞の構えを取る。自然とその切っ先に視線を向けてしまいそうになるが、この場にいるのは三人。戦場を広く見ないと痛い目を見るのは身体に染み込んでいる。


 それなりに覚悟を決めているのだろう。無論、薊は覚悟なんてものをとうに通り越しているし、唯野もその表情から見て取れる。ただ銃も何も持っているだけで構えていない鈴華だけは、その場で視線を向こう側とこちら側を右往左往させていた。


「ま、まぁ待ちなって西条。ほら、とりあえず斬るよりも話し合いをさ……」


「先輩。甘えたこと抜かしてる余裕はないんですよ。ここでコイツらを行かせれば……この世界は終わる。私たちだけじゃない。菜沙や藪雨、加藤さんだって、全部消えてしまうんですよ」


「ハッ、そもそもの話だ。仮想世界だ、消えるだなんだと。頭のおかしなことばかり言ってくれるな……。この世界が間違っているだと。私たちが、元より存在すらしていなかっただと……巫山戯たことをぬかすなッ!! 私たちの現実は、ここだ!! 突然目の前に現れて、異世界から来ただのと喚きおって……貴様らこそが、この世界を終わらせる化物だったとはなッ!!」


 気まづそうな顔をしている鈴華とは違い、二人は完全に目の敵にしている。当然だろう。いきなり目の前に現れて、私たちは異世界から来ました。この世界は間違っています。だから全部消します。なんて言われたところで……ふざけるなよクソがと言いたくなるだろう。


 ただ彼らは帰りたいだけだ。しかしその帰るということこそが、この世界の破滅へと繋がっている。今更ながらにその現状を理解した翔平は、頭の奥底でナイアの嘲笑(わら)う声が響いてくる気がした。苦々しく顔を歪めて、デザートイーグルを取り出すが……構える気にはなれない。


「私たちの過ごした日々を、思い出を、記憶を。全て、全てが間違いだとアンタらは言うんだろ。構えろよ。異世界の自分だかなんだか知らないけど……殺して全部元に戻るって言うなら、やるさ。やるしか、ないんだよ」


 唯野の槍の矛先が、氷兎に向けられる。とっとと構えろと言いたいんだろう。


 選択肢は思い浮かぶだけでいくつかある。一人が全速力で駆け出して、装置を止める。ここで互いに殺し合うのもひとつの手だ。だがこの二つはデメリットが大きい。


 何より、向こう側の西条を無視できない。彼女はその気になればこちら側の西条の攻撃をくぐり抜けるくらいはしてくるだろう。守備と攻撃とではそこまで違ってくる。


 それにいくら西条とはいえども、唯野と鈴華の揃った三人を相手に耐えることはできない。三人纏めて殺り合えば……いかに西条を活かして戦うかという、残った二人からすれば遺恨の残る戦いになることは間違いない。それに、どこから飛んでくるかわからない鈴華の弾丸と、射程外から斬りかかってくる薊の相手なんて、混戦状態でしたくはない。


 だとすれば、ここですべき事はなんなのか。三つ巴の戦いではなく、タイマンに持ち込むことだ。


「……まぁ、ね。否定はしねぇよ。俺たちは帰らなきゃなんねぇ。けど、アンタらは俺たちを帰す訳にはいかねぇ。殺し合いで止めるってのも、まぁ納得のいく方法だろうさ。だが……この場で三人纏めてやるってのか? お互い並外れた力を持った西条だけを守りながら戦うのが目に見えてる。そんなの、随分と馬鹿げてると思わねぇか?」


「……なるほど。サシか。それなら全力を出せないだなんて言い訳もできない。なにより……自分を殺すのに、手元は狂わないだろうね」


 異世界の自分なら、殺すのに躊躇いはない。だが他の二人なら、万が一にも躊躇する可能性がある。特に氷兎が鈴華を、唯野が翔平を殺す時なんて特にだろう。


 思考の似通った氷兎同士。その提案は悪くないと返される。ならお互い一旦武器をしまえよ、と言い放ち、なんとか西条の武器を収めさせた。刀に手を添え、いつでも抜刀できるよう構えたままではあったが。


「幸い、他に使ってる奴もいねぇ。訓練室を使えば、やり合うのに邪魔は入らないだろ。それで……構いませんよね、西条さん」


「……俺は構わん。だが、勝敗はどうつけるつもりだ」


「奇数ですし、勝ちが多い方でいいのでは?」


「それじゃダメだね。生き残りで最後まで、だよ。それが一番だ」


 対面の唯野に睨まれ、タイマンに持ち込めただけでも良しとしよう、と氷兎はその言葉に頷いた。ただそれに納得しかねている人も、中にはいる。先程から聞いては慌てるだけで何も出来なかった翔平は、氷兎と西条に向けて頼むように言葉を紡いでくる。


「ま、待てって! なんで殺しあわなきゃいけねぇんだよ! もうちょっとこう……なんかあんだろ! この世界を終わらせない方法とかさぁ!」


「そうだよ! 私たちだって、殺し合いがしたいわけじゃないんだからさ! そうでしょ、西条! 今はともかく、話し合いで……」


『甘えたことをぬかすなッ!!』


 西条が同時に自分側の翔平を睨みつける。もうそんなラインはとっくに超えているのだと。その気になればすぐに帰れるうえ、一人でも残れば勝ちのこちら側と、殺す気で止めなければ終わりの向こう側とでは、そもそも敗北条件が異なりすぎている。


 たった一人でも、隙をついて装置を止めてしまえば、終わりなのだ。そんな危険な状態をこれ以上一秒たりとも長引かせてはいられない。


「帰るんだろう。それとも、こちら側にお前だけ残るか。いいじゃないか、円満で終わるぞ。俺は絶対に残らないがな」


「で、でもよ……アイツらにだって、俺たちと同じような……」


「だから引けないんでしょう。俺たちも、あの人たちも」


 それだけ言うと、氷兎は槍を背に括りつけて前へと歩き出した。向こう側の誰も変な動きをしないように、西条はいつでも斬りかかれるようにしつつ睨み続ける。


「……言い出しっぺですし、行きますか。死なんでくださいよ、二人とも」


 氷兎が彼女らの隣を通り過ぎると、唯野も身を翻して部屋から出ていく。他の訓練室へと向かっていった彼らの後ろ姿を、翔平たちは惜しむように手を伸ばそうとしていた。


 自分の相棒が死地に向かった。それだけで心臓に悪いのは明らかだ。けど、それを止める手立てを持たない。


「……では、俺たちも終わらせるとしよう」


「先に行け。背後から斬りかかられてもかなわん」


「ハッ、どの口が言う。先に斬ってきたのは貴様だろうに」


 それでもお互いのモラルはあるのか。刀は持ったまま、しかし右手をポケットに突っ込んだ状態で、並んで外へと向かっていく。


「ま、まてって……」


 止めるために伸ばした手は、何も掴むことなく落ちていく。なんでお互い殺し合いができるのか。唖然としたまま部屋に残された二人の翔平は、互いに銃を向けることなく、彼らが出ていってしまった部屋の扉を見続けていた。





To be continued……



ここ三週間くらい課題でろくすっぽ寝なかったりしてたので初投稿です


なんで夜から朝の七時とかまで課題をしないといけないんですか

そして一限や二限にでないといけないんですか

zoomで寝ちゃって発表できない人もいるんですよ

目元が死んでる人とか

家にいるからって暇じゃねぇんだぞ

毎週毎週課題出すのやめちくりー、図面書くだけで精一杯なのぉー


人間ってあんなアニメみたいな寝不足表現ができるのかと、驚きましたね



ちなみに今回は前々から書きたかった回のひとつでもある

パラレルワールドに来てやる事が自分殺しってマ?

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