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ff《フォルティッシモ》

勘違いヒロインを傍観する脇役

作者: 海影

こちらの作品を、8月から連載することに決めました!

題名は変更します(なにしろ、ヒロインはしばらく出てきませんから)

どうぞ、お待ちください!

こちらは乙女ゲーム転生もの。

主人公、ヒロインおよびその他数名転生しております。

 私は窓際の自分の席から外を観ていた。

そこでは、チグハグな会話がされている。


「……あきらくん。事故のせいだったとしても、あれだけの音が奏でられるんだもの。大丈夫よ」

「は? 確かに美樹みきの演奏は凄いけど、それは事故とは関係ないだろ? 自分で努力した結果なんだし」

「えっと、美樹さん? え、彰くんの演奏じゃー」

「オレは演奏なんてしないし、作曲の方が楽しいし……お、一曲思いついた! さっさと譜面に落として、美樹に弾いてもらわないと! きっと優希ゆきさん喜ぶぞ!」

「え? ユキさんって?」

「オレの嫁さん! それじゃ、急ぐからー」

「ちょっと、え、何それ⁉」


 ……ほんと、彰って優希姉さんのことしか頭にないのね。

私の事故からずっと彰を支えてたんだから、当然だけど。


「なに、観てんの?」


 不意に隣に立った男性の、低い声。

思わずゾクッとなりながらも、端末のメモ機能使って返事をする。


『例の彼女が、彰に事故のことを理由に近づこうとしたのです』

「あー。あの勘違い女か。

 で、お前は大丈夫なのか?」

『そういえば彼女、私には近づいてこないですね』

「彰を攻略するなら、お前に事故について説明をされる必要があったよな?」

『確かに。

 ですが、すでに事故については知っているので、必要ないと考えたのでは?』

「それで、攻略法は同じにするって、矛盾だろ?」

『だから、勘違いなのでしょう』

「確かに」


 あきれた様子の彼、ひびきとふたり揃って外を見る。

相変わらず呆然としたままの彼女。

確かにここがゲームと同じ設定の世界だとしても、私たち転生者が存在する時点で同じように進むとは限らなくなっているのに。


 このゲームとは乙女ゲーム。

ヒロインである彼女は、とある切っ掛けから覆面バンドとして有名なバンドのメンバーの秘密を知り、関わり合い、恋に落ちていく、というのが基本なんだけど……。

 実際は、その事を知る切っ掛けとなるはずの失明した彰はいない。

五体満足でピンピンしてる。

そこから大きな違いになってるんだけどね。


 本来、事故で失明するはずだった彰は事故には合わなかった。

というか、私が庇ったことで怪我をすることはなかった。

 庇った私はのどのに大怪我をして、……声を失った。

とはいえ、意思疏通はできるし、元のゲームとは違って、声楽ではなくピアノの方を習っていたので、音楽から離れることもなかった。

 ……まあ、辛くない訳じゃなかったけど、それよりも彰が無事でいてくれる方が良かった。


 私が昔関わったゲームの世界に生まれ変わったようだと気がついたのは、その事故の後だった。

 前世と思える記憶が意識不明状態の時に浮かんできて……意識が戻ったのは事故から一週間後、だった。そこで、ここがあのゲームの世界で、私は彰攻略のキーパーソンに転生したと気付いて……同時にゲームとは違うってことにも気がついた。

 彰は失明することもなく、かわりに深く落ち込んでしまったけど、優希姉さんのおかげで立ち直った。

当然だけど、そのことからもわかる通り、その後の出来事も大幅に変わる。

 彰は失明から家を継ぐ(ある会社の社長子息なので)ことが出来なくなり、代わりにピアノ演奏で才能を開花させるーーという出来事は無くなり、喋れない私の感情を表せるように、と作曲の方に進んだ。

会社はいずれ彰と結婚した優希姉さんが継ぐことになったので、かなり自由にしている。

 もっとも、彰は優希姉さんにベタ惚れで、姉さんはすでに海外で大学卒業済み。

優秀な後継者と孫を見るために、彰のご両親も大変乗り気という。

 ちなみに、姉さんは私たちの三つ上。

手がかーなーりー早かった彰のせいで、すでに一歳の双子がいたりする。

年齢の関係で籍はまだ入っていないが、実質はすでに彰の奥さんだね。

本当に仲がいい。

 バンドだって、失明した彰を中心に発足したのが変わって、彰の創った曲に惚れ込んだり、私の正体に気がついて近づいてきてたり、という風に変化してる。

 ちなみに響も転生者、それも私の婚約者だった相手で、一緒に事故死していたから……。

うん、お互いに出会ったときに改めて一目惚れしてたし……。

 というわけで、攻略対象にゲーム開始時点で恋人あり状態だったんだから、本来のゲームとは全然違っている。


「そもそも、あの勘違い女もおそらくは『転生者』みたいだし、その時点で、本来のヒロインとは性格が違っている以上、ゲームと同じ攻略なんて意味ないだろうに」


 まったく。

うんうんと頷く私の頭を軽く撫でてくる。


「ま、あいつはほっといて、さっさとスタジオに行くぞ」


 うん、とひとつうなずき、私は響の手を取り立ち上がる。

今日もこれからスタジオで練習だからね。

……本来のゲームとはとは違って、キーボードは彰ではなく私だから。

 ああ、だけど今日は……。


「今日はマトモな練習にはなんないかもな」


 なにか、姉さんのための曲を思いついたみたいだったし。


「それはそれで面白いからいいんだけどな」


 クスクス、とふたりで笑いながら教室を出る。

さて、彰はどんな曲を思いついたのかな?

楽しみにしながら、響に手を引かれて歩いていった。

ストーリーの変化は主人公の意図しないままに起こりました。

転生後、記憶なし、人格引き継ぎ状態だったためですね。

出てきてはいませんが、主人公の妹も、転生していたりします。

こちら、連載になった場合は、事故の後から書こうかと思っています。


追記 ご指摘があったので、追加事項を。

   美樹および彰の年齢は一七の設定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] うん? 結婚も出来ない年齢で女を孕ませる男は、たとえ愛があろうなんだろうと普通にクズなのでは? いや相手の女も相当だけど。
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