第3 精霊さんのお薬!
ジェーンとアイルは森から出ると木で出来た塀の方に歩いて行く。
村は大人の二人分の高さのある塀に覆われていた。
魔物が村に入らない為に作ってある。
「ジェーンにアイルじゃないか!
また『暗黒の森』行ってたのか?」
ジェーンとアイルが村の門まで行くと若い男が声を掛けてきた。
「ラジーさん、こんにちは!
うん、そうだよ!」
どうやら若い男は村の門の門番のようで二人の知り合いだった。
「キョウカにたべものをとってもらったんだぁ。」
ラジーと呼ばれた若い男は少し顔を険しくして聞いた。
「精霊にまた会ったのか?」
「うん。」
「全く、あの『暗黒の森』も精霊も危ないんだ!!
もう会うなよ!!」
ラジーは二人に向かって怒鳴って警告する。
真剣な顔から二人を思っての言葉だと分かるが幼い二人には分からない。
「キョウカちゃんは危なくないよ、ラジーさん!」
「ともだちだもん!」
ジェーンとアイルがラジーに言い返す。
二人とも目に涙が浮かんでいた。
若いとは言え大人の男から怒鳴られたのだ。
怖いはずだ。
「あぁ、泣くなってジェーン、アイル。
あの森は魔物が住んでるから子供だけで行くなって言ってるだろ?
それに精霊は人じゃないんだ。
危険な奴なんだぞ?
ほら暗くなる前に村に入れよ。」
ラジーは二人が泣いてしまわないように頭を撫でてから村に入れた。
「家まで気を付けて帰れよ!」
「「うん。」」
二人はラジーと別れて家に向かった。
すっかり周りが薄暗くなったところで二人は家に着いた。
家の窓からは明かりが漏れていた。
「ただいま!
お父さん!」
「たべものをもってきたよぉ!」
二人は勢い良くドアを開けで、家の中に入った。
「・・・おかえり。」
家の中には天井に頭が擦れてしまいそうなほどの大男が居た。
二人はは大男の膝に抱き着いた。
どうやらこの大男が二人の父親らしい。
二人の頭を優しく撫でる大男の顔はとても優しげだった。
「・・・森に行ったのか?」
大男は二人が持ってきた森の恵みで一杯になった籠を見て言った。
「うん!」
「キョウカに取って貰ったの!」
二人は笑顔で答えた。
「・・・そうか。
・・・今度、お礼に行かないとな。」
「あのね、あのね。
キョウカちゃんね、お母さんの料理が食べたいって言ってた!」
ジェーンがそう言うと大男は嬉しそうに顔を綻ばせてた。
「・・・そうか。
・・・ジュリーの料理は美味いからな。
・・・お前達はお母さんの所に行きなさい。
・・・お父さんは料理を作るから。」
そう言って大男は二人の頭から手をどかし玄関とはまた違うドアの方に背中を押した。
「あ、そう言えばキョウカちゃんから薬を貰ったの。
はい、これ!」
ジェーンは大男に独特な匂いが漂う袋を渡した。
「・・・精霊の万能薬か。
・・・お母さんに一粒飲ませてあげて来い。
・・・これで明日にはお母さんも元気になるぞ。」
大男は驚きながら袋から一粒、黒い丸薬を取り出しジェーンに手渡した。
「うん、行ってくる!」
「まって、おねぇちゃん!」
二人は部屋から出て行った。
大男は丸薬が入った袋を戸棚にしまった。
「・・・作るか。」
大男は二人が持ってきた森の恵みで一杯になった籠の中身を確かめた。
色鮮やかで瑞々しい木の実。
地味な色だが味の美味しいキノコ。
大きな葉に包まれていた何かの解体された肉など色々な物が入っていた。
家族で食べても1日は持つぐらいの食料が入っていた。
「・・・精霊様に感謝だな。」
大男はそう呟いて料理を作り始めた。
一方、二人はベッドに横たわる女に声を掛けていた。
「お母さん、薬だよ?」
「のんで、のんで!」
「ケホ、ケホ。
その薬は何?」
「あのね、精霊の万能薬だってお父さんが言ってたよ。」
「キョウカからもらったんだぁ。」
二人は自慢げにそう言った。
「あらあら、二人で森に行っちゃ駄目じゃない。
でもありがと、私の天使ちゃん。」
女は二人を抱き寄せて幸せそうに笑った。