第2 精霊さんに頼み事!
それは駆ける。
音も立てずに樹々の間を通り抜ける風のように駆け抜ける。
幅の広い川を飛び越え、苔むした岩を飛び越え、大型の芋虫を蹴り飛ばしながら森の中を走り抜く。
その間に木の実やキノコ、人が食べれる物を採取して背負っている大きな葉を折り畳んで作った籠に入れていく。
その籠の大きさはそれの体と同じ大きさの籠だった。
それは己を呼んだ声の方に駆ける。
森が終わる頃にはそれの背負っていた籠に森の恵みで一杯になっていた。
その籠を地面に降ろして思いっきり叫んだ。
「ジェーン!
アイル!
食べ物、取ったー!」
「キョウカちゃん、ありがとう!」
「うわぁ、カゴにいっぱいだぁ!」
しばらくするとキョウカと呼ばれた者の呼び声に応えるかのように二人の子供が茂みから姿を現した。
二人は幼い女の子と男の子であった。
男の子はキョウカに駆け寄って背負っていた籠の中身を見て間延びながらも驚嘆の声をあげた。
「もう、アイル!
ちゃんとキョウカちゃんにお礼を言って!」
「はぁい、おねぇちゃん。
キョウカ、ありがとぉ!」
「うん。」
キョウカは苦笑しながらうなづいた。
そしてキョウカは腰に付けていた袋を外しジェーンの方に向けた。
「ジェーン、これ、薬。
病気、治る。」
「いいの?」
キョウカが腰に付けていた袋をジェーンに渡した。
その袋からは独特な匂いが漂う。
「ジュリー、料理、美味しかった。
元気、なる、私に、作る。」
キョウカの独特な物言いに怪訝な顔一つせずにジェーンは薬を受け取った。
「うん、分かった。
お母さんに伝えておくね。
お母さんの病気が治ったら料理を作ってもらうよ!」
「薬、寝る前、飲む。
明日、元気。
薬、無い、来る、また、渡す。」
「うん、ありがと!
キョウカちゃん、また明日ね!」
「あしたは、あそぼぉね、キョウカ!」
「じゃ。」
キョウカは二人に別れの挨拶をして森の中へと走っていった。
「おねぇちゃん、キョウカってすごいねぇ。
ぼくと、おんなじくらいなのにねぇ。」
「そうだね、凄いね、キョウカちゃんは!」
二人で森の恵みで一杯になった籠を持ち上げて森から出て行った。