第1 おはよう!精霊さん!
どうぞ。
白い空間、一人の男性と浮遊している何かしかない空間。
天井も壁も床も白くて何も置かれておらず窓も扉もない密室の空間。
その何とも不思議な部屋で男性は浮遊した何かに頭を下げていた。
男性は細身、端麗な顔立ちではいるが人では無かった。
額には本来ならば人に無いはずの眼がありその後ろには細長い尾のような物が揺れているからだ。
「ありがとうございます!
貴方様のお陰で雑霊だったわたしが神格を得る事が出来ました!」
『・・・誰?』
見た人によっては悪魔とも言われそうな男性はどうやら神らしい。
浮遊した何かに強い敬意を表しながら礼を言っていた。
「生前の現人神である貴方様のご支援でわたしは新たな信教の神に成り得ました!」
『・・・生前?』
浮遊した何かは魂とも言える存在らしい。
その魂に対して神はまるで師や親に対するかのような雰囲気で話す。
「わたしは貴方様にご恩を返したいのです!
本来なら人として生き、死後、神格を得る筈だった貴方様が魂の輪廻に戻るなんて有ってはなりません!
わたしは自分の信者が憎い!
貴方様にあのような苦行を行うなど以ての外です!」
『・・・死後?』
神の表情には怒りと後悔の感情がありありと浮かびあがる。
どうやら彼の信者が魂、生前に何かをしたらしい。
「本当はわたしの為に死んで欲しくありませんでした!
例えそれがわたしの神格を得る事に必要不可欠だったとしてもです!
でも貴方様は死んでしまった!
貴方様が行う偉業も果たせぬままに!
ですからせめて貴方様の生前の願望を微力ながら手伝わせて頂きたいのです!」
『・・・願望?』
彼は興奮した様子で話し続けた。
魂にとっては生前の事など分からないと言うにも関わらず彼は猛り叫ぶように、まるで狂信者のごとく、誰が見ても悪魔だと答える形相で話す。
「今のわたしでは貴方様を魂の輪廻から解放する事しか出来ません!
貴方様の手で偉業を成し遂げて下さい!
それでは異世界に送ります!
貴方様に幸あれ!」
彼は悪魔のような形相で魂に向かって手を伸ばした。
それがどのような事を引き起こすのかは魂は分からない。
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夢を見た。
またあの白い夢。
何度目か分からない。
懐かしいような気がする。
退屈だ。
早く誰か呼んでくれないかな?
「ーーー!」
あ、聞こえた!
私を呼ぶ声が!
私は急いで声の元へ行く為に地面を蹴った。