00 37歳元ラノベ作家、現状を語る
俺は37歳。もちろん独身。それどころか、社会的に孤立している。追々話すが、ぶっちゃけもう詰んでる。ジャンルを見てもらえればわかるが、この話はファンタジーじゃないから異世界にも行けない。猫型ロボットのAAでおなじみ『闘わなきゃ現実と』が隠れサブタイトルだ。
職業は、聞かれたらフリーライターということにしているが、もっともここ10年、職業なんぞ聞かれたことはない。
同居している親を除いて、コンビニのにーちゃん。宅配便のおっさん。スーパーのおばさん。ドラッグストアのぽっちゃりさん。千円カットのイケメン。言葉を交わすのは彼らだけだから、「はい」と「いいえ」で話が終わる。
友達と話すことはないのか?
話さないんだな、これが。
37にもなると、友人といえども、仕事をしているか、結婚をしているか、子供がいるか、このどれかを持ち合わせていないと共通の話題が一つもない。それが引け目になって誰とも会わなくなった。
俺は去年の年収が37万円で、携帯はプリペイドすら高く思えて解約、だから俺への連絡手段は消滅している。それで困ったという話を風の噂でも聞かないから、向こうも俺に連絡してきてないんだろう。
人付き合いがないんだから、広がるわけもない。お仕事は何されているんですかと聞かれることもないわけだ。
一応言っておくと、俺は別に人間嫌いとか人と話すのが嫌いというわけではない。むしろ人と話せるものなら話したい。その証拠に、以前、人との会話がなさすぎて夜中に頭がおかしくなりそうなほどの不安を感じて、次の日、親の貯金箱から五百円玉二枚を失敬して、不安を解消できるという薬をドラッグストアに買いに行ったことがある。
それだけじゃない。現実社会で話し相手がいないのであれば、インターネットではどうだと、無料のチャットサービスにアクセスしたこともある。
「こんにちは」
「こんにちは!」
「初めてです。よろしくお願いします」
「そうなんですか^^ こちらこそよろしく! ところで質問していいですか?」
「はい」
「大変失礼ですが、男性ですか? それとも女性ですか?」
「あ、男です」
そう打ち込むと、相手が一瞬でいなくなった。
真夜中、パソコンのファンの音だけが鳴り響く部屋の中で、会話してくれる相手を探し続けても会話できないという状況に改めて気がつき、泣きたくなった。
俺は25歳の時にライトノベルと呼ばれる類の小説を書いて、ある出版社の公募に応募して賞を取り、それからしばらく、三カ月に一冊のペースで本を出していたことがある。
あのときは想像もしていなかった。話し相手を常に知らない人間の中から探さないといけず、しかも見つけられないなんて。




