4、少女が娘になる的なやつ
「ん…」
太陽の光の温もりを感じ目を開く。体には布団がかけられている。
(ん…ヤバいふかふかだ…)
働かない頭で布団の柔らかな感触を享受する。幾日か前の草原での目覚めと比べて、最高の目覚めである。外からは鳥のさえずりが聴こえる。徐々に頭が冴えてくる。傷だらけだった足には包帯が巻き付けられ、裸だった身体には日本の旅館で着るような浴衣のようなものが着せられている。そして今気づいたが、おでこには濡れたタオルのようなものが置かれている。
(ここはどこだろう?確か俺は、よく分からないで草原で目覚めて、1日中歩いてたんだっけ?森の中で、疲れてぼうっとしていて、人だと思ったのが熊だって、その熊に殺されそうになったところを人に助けられて、そして…そっから…えーっと…記憶がないな?気を失っちゃったのかな?でも、今ベッドの上ということは俺助かったのか?)
そんな風に考えていると床が軋む音と共に誰かが部屋に近づく音が聞こえ、その足音は部屋の前に泊まるとガチャという音と共に入ってきた。
入ってきたのは40代くらいのおばちゃんだった。
「おや?お嬢ちゃん、起きたのかい。大丈夫かい?傷は痛まないかい?」
「あっ、はい、大丈夫です。」
俺は突然話しかけられたことで若干の人見知りを発動しどもりながら答えた。おばちゃんは俺に近づくと額に乗せられたタオルをとり手を当てると
「うん、熱も下がったようだね。起き上がれるかい?」
そう尋ねてくるおばちゃんに私は返事と共に起き上がった。
ーぴきーんー
「ぐえっ」
身体中の筋肉が悲鳴を上げている。こんな筋肉痛いつ以来だろうか。ぷるぷるしながらなんとか身体を起こす。
「そんな無理して身体を起こさなくてもいいんだよ、」
「い″…いえ、大丈夫でず…」
「そうかい?無理してはダメだよ?ああ、そういえばお嬢ちゃん、お腹は空いてないかい?」
空腹か、そういえばこの世界に来てから何も食べてないな。とはいえ、急にお腹が空いたというのもなんか卑しい気がするな。
ぐううぅぅ
そんなことを考えると、腹の虫が思い出したかのように、声を上げた。俺は腹の音が鳴ったことに恥ずかしさを感じ俯く。きっと顔と耳は真っ赤に染まっているだろう。
「おやおや、そんな恥ずかしがらなくてもいいんだよ。はい、これをお食べ」
そう言っておばちゃんが差し出してくれたのはパンのようなものだった。俺はそれを受け取ると口の中に入れた。食感は少し硬めであったが久しぶりに食べるまともな食事であるためとても美味しく感じ、あまりの美味しさに涙が自然と溢れてきた。
「おやおや、泣くほどかい?急がなくてもパンはいっぱいあるから急がずお食べ。」
俺はそんなおばちゃんの好意を素直に受け入れ、2つ目のパンを口に入れる。
「ケホッ…ケホッ…」
「あらあら、そんなに慌てなくても逃げないわよー。はい、これを飲みなさい」
「ケホッ…ありがど…ケホッ…ございまず」
おばちゃんからコップを差し出され、一口飲む。ちゃんと水を飲んだのも3日ぶりぐらいだろうか?雨の水は飲んだが、対して飲めなかったし。あ、また涙が出てくる。その後バケットに盛られてたパンをたいらげた。一口一口食べるごとに涙を流す俺をおばちゃんが笑顔で見守る。
「…ずずっ、助けていただいてありがとうございました。これも、とても美味しかったです。」
「ほんと、目が覚めてよかったわー。気にしないでちょうだい。一昨日、アッシュが急いで帰ってくるから何事かと思ったら、裸の女の子を抱えてるんだもん。よく見たら、すごい熱だし、そんなの見たら助けてあげるに決まってじゃない。ほんと良かったわ目が覚めて!」
そんなことを言っておばちゃんは、豪快に笑った。
(そうか、あの熊を真っ二つにした人はアッシュさんって言うのか。あとで絶対お礼を言わなきゃな)
「それにしても、お嬢ちゃん裸で森の中にいたって言うじゃない?それにその衰弱っぷりから見るにしばらくの間森の中を彷徨っていたんでしょ?アッシュがたまたまあそこにいたから良かったものの、そうじゃなかったら今頃あの杜熊の胃袋ん中だよ。良かったわね、ほんとに。」
そう言っておばちゃんが俺の頭を撫でる。男の時は撫でられることなんて無かったからか、ん…少し撫でられるのが気持ちいい…。
「ところでお嬢ちゃんは、なんであんなところにいたんだい?」
「ん〜…あ、えっと…おr、いや、私は」
撫でられるのが気持ち良すぎて、ぼーっとしてしまってたが、どう答えれば良いのだろうか、俺は考える。
パターン1、ありのまま話す
おそらく異世界から来たということを告げ、そして自分の元の性別は…置いとくとして、その他のことは嘘偽りなく伝えるパターン。1番良さそうな選択肢だろうが、こんな荒唐無稽な話普通信じるだろうか。まあ、おばちゃんなら多少信じてくれそうだけども、これを毎回話すのは骨が折れそうだ。
パターン2、記憶喪失
よくある異世界転生の主人公が使う常套パターンだ。これの利点は森にいた理由を曖昧にできるところだ。ただ欠点として、いつかはボロが出るだろうし、少し罪悪感がある。
パターン3、亡国の姫
…いや、これはない。
「どうしたんだい?」
「あ、えっと…名前はミズキといいます。年齢は…えっと…わかんないです。なんであそこにいたのかも、気づいたら草原で…歩いたらあそこに着いて…ごめんなさい。よくわかんないです。」
パターン2の記憶喪失パターンであるが、後半は決して嘘ではない。俺がそう言うとおばちゃんは少し表情を曇らせる。
「そうかい、すまないね、辛いことを聞いて。おばちゃんにできることがあったらなんでも言うんだよ!」
そういって再び頭を撫で始める。
「んー…あ、ありがとうございます」
おばちゃんは撫でながら、少し考え込む。
「お嬢ちゃん、記憶が無いんだよね?」
「あ、はい、名前は分かるんですけど…それ以外は…」
「たまーに、そんな人が現れるなんて噂は聞くんだよね。それにその容姿だしね」
おばちゃんが俺の容姿に言及する。そういえば自分の顔とか見てないな。どんな顔してるんだ。
「うーん…そうだね…決めた!お嬢ちゃん、あなた、行くところ無いわよね」
「そ、そうですね」
「だったらお嬢ちゃん、うちの娘にならないかい?」
「え?む、娘!?」
「そうよ?しばらくうちにいなさい。そしたら記憶もいつか戻るだろうしさ。」
そう言って笑いかける。おばちゃん。なんて親切な人だろうか。よく異世界転生ものでは、異世界に来てから生活に慣れるまで苦労する話をよく見る。そういう人たちはチートスキルを使ってどうにかするが、俺には現状何もない。今は親切なおばちゃんと生活した方が、異世界に馴れるという点でも1番良い選択かもしれない。
「す、すみません、ご迷惑でなければ…その…よろしくお願いします」
「そんな、かしこまらないでよ!わたしも娘が欲しかったしね!ミズキちゃん…いや、ミズキよろしくね!」
「よろしくお願いしますって、ふぇっ…」
そう言っておばちゃんは笑顔で俺を抱きしめる。おばちゃんとはいえ、女性に抱きしめられるなんて、ここ数年無い。しかし最初は驚いたものの、だんだんと優しさと温もりが伝わってきて、気持ちが落ち着いてくる。そして、次第に優しさに包まれて眠気も襲ってくる。
「あら?ミズキ…まだ疲れてるようだね、ほらぐっすりおやすみ」
そう言って俺をベッドへ横にする。俺の瞼はそれを合図に閉じ、俺は夢の世界へと飛び立った。
お読みいただきありがとうございます!
正直言って何書いてんだ私?状態な作者です!
とりあえず書きたかったことは
主人公に後見人的な人をつけるっていう予定だっのにそこまで持ってくのが辛かったです。
今まで読み専で、いざ書いてみると作家さんたちの大変さが身にしみると言うか…それに文字数も少ないですし…一万文字とかどうやって書くんですかね?いずれそんだけ書けるようになりたいです!
さて、次回は説明回の予定です!大事ですよね説明回!正直いって全然設定とか伏線とか考えてないので、次回ちょっと頑張ります!
感想とか批評、誤字脱字がありましたら感想欄に宜しくお願いします!
※5年ぶりに再編集しました。