番外編、闇の国の総統的なやつpart3
お久しぶりです。
人の大体は闇というものを怖がる。
それは視覚に頼ることを常としている人間だからこそ、光の届かない、何も見ることができない、何が襲って来るのかわからない闇を怖がるのである。
とある昔、フォースグランドが名の通り4つの大国が治めていた頃、ノルンヘルムという世界最高峰の硬さを誇る要塞を本拠地とし、自分の身に悪魔を憑依させて戦う最強の戦闘集団がいた。その集団を他の国は邪悪なる存在、自分たちの力が全く及ばない存在として闇の国と呼んだ。このことを誇りに思った当時の国主が闇の国としたらしい。
これは闇の国に昔から伝わる、伝承の1つである。この話の真偽はどうあれ、当時闇の国が各国に恐れられていたというのは確かなことであり、そのことは先の戦でさえ落ちなかった要塞ノルンヘルムが示している。神の兜を名に持つ城はその名に負けない歴史を辿っている。しかし現在その名城であるノルンヘルムは多数の闇を抱えている。その1つは貴族の腐敗であったり、スラムであったりとするわけだが
俺は腐った貴族の連中を見て来た。貴族の子どもというのは優秀なのもいないことはない…が、総じて屑の親の影響を受けて、権力を振りかざす愚鈍ばかりである。
対してスラムの子どもはどうか?
親がいないやつ、今を生きることに精いっぱいのやつ、生きる希望さえも見つけられないやつそんなやつもたくさんいる。しかし、ウノという女の周りの子どもたちを未熟ながらこの国を変えたいという強い意志を持っていた。
俺はこの女と一緒につるんでから、学校では魔法などの知識を得、スラムではこのウノたちと一緒に学校では学べないことを学び、俺からは学校のことをウノたちに伝えた。その中で俺はウノたちを仲間以上の存在となっていった。たまには貴族である俺がスラムの子どものように盗みやケンカなんかもした。そのことをじじいに伝えると、じじいは喜んで話を聞いてくれた。そして、両親はなおさら俺のことを嫌っていった。
ついに、ガナブノ家にとって悲願であり、俺にとってはただの悲である出来事が起きた。ガナブノの唯一の理解者であり、ガナブノ以外からは誰にも理解されなかった、ガナブノの祖父が死んだ。
他殺なのか、それとも病死なのか…
そんなことはどうでもいい、死んだのだ。
人はいずれ死ぬ。それは分かりきったことである。
なのになぜ涙が出るのだろうか?
他の家族も泣いていた。喜びの涙を流していた。厄介者がいなくなりやっと自由にできる。そんな涙だった。
では、俺の涙はなんなのか?
喜びの涙?自分にあれこれ言ってくる邪魔者がいなくなることによる開放感からの涙なのか?
そう、これは悲しみの涙である。
自分を唯一見てくれた、一族の中でも誇りを持って死んだ、そんな人への、哀悼、尊敬、そしてただただ悲しい…そんな涙であった。
「じじい…俺は、あんたが作ってくれた繋がりを絶対無くさねぇ…。そして、あんたみたいに誇り高くこの国を変えてやる。」
そう祖父の目の前で誓いを立てた。
そして、その誓いの1つは自分の目の前で消えて無くなった
じじいが、死んでからいく日からたったころ。それはほんの些細な、それこそ貴族でさえも普通は気に留めないような出来事が起きた。
場所はスラム街、たまたま走っていた貴族の馬車にスラムの子が轢かれたのである。よくあることとは言わないし、かわいそうだと思うのはもっともである。当時の闇の国では貴族にとってスラムの子は愛玩動物以下の存在であり、殺してもそれはそこらへんの虫を殺すのとなんら変わらない。そんな国である。
たまたまその殺された子がウノたちの仲間、つまり俺たちの仲間であったとしても、いつもだったら気にすることではない。別に昨日までいた子が突然いなくなるなんてことはスラムにはよくあることで、ウノ自身、自分の身は自分で守るべきという考えを持っている。たまに、スラム同士でいざこざの末なんて時には報復もあったりするが、貴族なんかに子どもの時に対抗できるだなんて思っていない。
そんなものは将来力をつけてから革命やらなんやらで倍返しにしてやればいい。
それが俺らが一味のリーダーウノの考え方だった。
だったらこんな偶然はどうだろう?
俺がこの前学校であった魔法大会で圧倒的に打ち負かした大貴族の子どもが、たまたま俺に怒りを持ち、たまたま俺がスラム街に出入りしていることを知り、たまたま俺を殺そうと思って馬車を出し、たまたま俺の目の前でその子を轢き殺したとしたら…
そして、そいつが馬車から降りて、俺の方を見ながら
「あーあ、車が汚れちまった。ここらのスラム燃やし尽くして」
なんて言ったら…
「おい、離せよ!てめーら!そいつらに手を出してみろ、ぶっ殺してやる!!!!」
「ヒャヒャヒャ、何を言ってるんだいガナブノ。お前を押さえつけてんのはうちの先生の拘束だぜ?解けるわけないだろ。お前はそこで自分のしでかしたことを悔やんでろよ!ヒャヒャヒャ」
俺の目の前にはスラム街の住人、そしてウノたちがいた。
この目の前のバカ貴族がスラム街の破壊を宣言してからスラム街の意見は割れた。新天地を目指す者、受け入れる者、そして徹底抗戦するもの。そしてその徹底抗戦する部隊の中心戦力となったのがウノたちであった。
この時のウノたちは、俺が学んできた魔法を少しばかりかじっていたこともあり、子供ながら力はスラムでも上位に入っていた。
いや、正確にはウノたちではない…ウノ以外の仲間が徹底抗戦を唱えたのだった。なまじ力をつけたのが原因だろう。
そんな俺も、スラムの地の利を活かしたゲリラ戦、学校でも首席に近い自分の力への自負、そして何より祖父との誓いを胸に徹底抗戦を説いた。
そのときウノは一瞬悲しい目をしたように見えたが、それでも最後は頷き俺らは戦に挑んだ。
最初は優勢だった…
いや、優勢だったように見せられていた。
敵の主力部隊をスラム街の奥の真ん中に誘い込みあとはボコボコにするだけだった。誘われたのは俺らだった。そして、人を殺す意志というのにも差があった。なんせやつらは俺以外のスラム街の奴らをゴミとしか思っていないから殺すことに躊躇がない。対してスラム街は生き死にが多発する場とは言え、実際に人を殺すことなんてほとんどないのである。
「ヒャヒャヒャ、お前がこいつらのリーダーか?」
そう言って貴族の子どもがウノの顔を上げる。ウノが汚いようなものを見る目で男を見る。
「よく見たら可愛いじゃないか?そうだ!一生俺の愛玩具として生きるなら許しやるぜ!ヒャヒャヒャ」
下卑た目で貴族の子どもがウノに言う。
ボッ
突然ウノとそいつの間に火柱がたった。
「っつ!!てめー何しやがった!」
「うるさいわねー、たかがその程度の火を触った程度で。じゃあさっきの提案に対する私の答えだけど…
そんな汚ねえ手で私に触るな!」
「くっそがー!!やっちまえ!!」
「やめろおおおおおおおおおおおお!!!」
貴族の子どもの一言で魔術師たちが詠唱を始める。
魔法というので大切なのはイメージと生まれながらの魔力量である。魔術書というのはそのイメージを補完、そしてそれに近い魔法を出すことができるものだ。そしてこのとき彼らが想像したのは骨さえ残さない高熱の焼却炉である。
もし、この時貴族のお抱え魔術師たちが魔力量に乏しければ、骨、それこそウノの防御魔法で防げたかもしれない。
「砂壁!!」
土魔法の中でも初歩中の初歩の魔法で周囲を囲むウノ。しかしその炎はそんな壁など一瞬に消し炭に変えウノたちを襲った。
ウノが火に包まれる瞬間、ウノはこっちを見て笑って、こうつぶやいた。
ご
め
ん
な
頭の中で何かが生まれそれが溢れ出すのを感じた。
後日談である。先日ノルンヘルムのB地区のスラム街で赤い火柱と緑の爆炎が立ち上った。
その禍々しい魔力と焦げた匂いを不審に思った憲兵によって発見されたのは地面に描かれた巨大な魔法陣と緑色の炎に囲まれた少年の姿で、そのまわりには焼け焦げて身元もわからない人型のナニカが転がっていたという。
そしてその少年はその後仲間を揃え革命を成し遂げ今の地位についた。
名をガナブノ・ゼブブという
ここまでお読みいただきましてありがとうございます。作者です。
ここまで半年以上の休載?というか更新停止申し訳ございませんでした。書きたいという意志と書くという意志が一致しませんでした。はい、すみません、言い訳です。
というわけでなんとか番外編終わらせてミズキちゃんの話に入っていきます。今回の話を書くにあたって何ヶ所か自分の振り返り兼ねて過去の話を読みました。なんというか文体などは見せられるものではありませんが、話は結構良かったです。はい、自画自賛です。しかし、なんかよく分からない設定とか多くあって、頭を抱えたのも事実です。笑
さて、目標なんて設定しても絶対守れない自信があるので、これからも頑張ります。ってことで許してください。
それと今回書くきっかけになったのはとある方の更新待ってますという感想でした。とりあえず読者を待たせていたクソ作者はぶん殴っといたのでこれからも感想批評などよろしくお願いします!