3、第1異世界人発見的なやつ
「…ここは…はぁ…どこ…はぁ…なんで…はぁ…だれにも…あえない?…もう…げんかい…つらい…ねむい…」
俺の座右の銘は『人間最終的にはどうにかなるし、終わり良ければ全て良し』である。しかし、そんなポジティブ思考も徐々に崩れていく。絶賛、森の中で迷子中だからだ。
大草原で目覚めた俺は、とりあえず太陽の方向へ!と東へ歩いていたが、突然の雷雨に見舞われた。俺は当然裸+裸足である。風邪をひくのは避けるため近くにあった森へ雨宿りも兼ねて駆け込んだのだった。そこで雨が止むまで待てば良かったものも、なぜかこっちに行けばどうにかなる気がして、今に至るわけである。暗い森の中のため、空の様子を詳細には伺うことはできないが、たまに見える木漏れ日からすでに目覚めたから1日程度経っていること教えてくれる。当然食事なんてしておらず、空腹と喉の渇きをかんじる。また、薄暗い森の中、女の子の姿で、裸で寝れる訳もなく、突然の来襲に怯えながら歩き続けているのである。眠気と緊張と空腹などなどその足取りは覚束なくふらふらである。
「はぁ…はぁ……ん?…あれって…はぁ…はぁ…道?」
ぼやけた俺の視線の先にはまるで道のように、切り開かれた空間が見える。それはよく見えないが、奥まで続いている。
(これは、きっと神様が与えてくれたチャンスなのかもしれない)
そう考えた俺はその道を信じて進んでいく。この道を抜けた先にはきっと村か町的な何かがある。その意志のみで足は一歩一歩歩みを進める。歩き続けること数時間ぼんやりとした俺の視界の先に黒い人影が見えた。
(あれは?人?)
「はぁ…はぁ…助けて…ください!」
疲労によって働かなかった俺の脳はみえた人影を人と信じ、大声を上げてその影へと駆け寄って行く。そして、ぼんやりとしていた人影が徐々に鮮明になっていく。助かった。そう思った頭が一瞬にして冷え上がった。
そこにいたのは
ー熊ー
だったのだ。
いや、熊なんて可愛いものじゃない地球上にいる最大の陸上哺乳類はホッキョクグマらしい。動物園で見たことある。確かに大きかった。でも目の前にいる熊…いや、熊らしいものはそんなのが話にならないぐらい巨大である。間違いなく5メートル以上はある。
(ヤバい!喰われる!殺される!まだ気付いてない!逃げなきゃ!)
そう思ってるのに足が震えて動かない。
「…ヒッ!!」
目が合った。
その目はどす黒く、感情は読み取れない。
グオオオオォォォォォ
低く重い声があたりに響く。
そして、徐々にその熊は自分の方へ駆け寄ってくる。自分の足は動かない。顔が恐怖で引きつっているのがわかる。どこにあったのかというぐらい涙が溢れてくる。目の鼻の先に熊の顔がある。そして熊は邪魔ものを払うかのように、前足を振り上げ、俺へと叩きつけてきた。
(あっ、俺死んだな、マジで意味分からんけど、よく分からん世界で、家族もいないところで、人知れず殺されるなんて…こんなことなら母さんと父さんにいつもありがとうって言っとけばよかったな…なんだかんだ言って仲良かった妹の夏樹が高校生になるのも見たかったな…俺のことを大事にしてくれてたばあちゃんとじいちゃん、先に逝ってしまってごめんね)
俺の脳裏には家族のこと、友達のこと、今まであった辛かったことや悲しかったこと、楽しかったことや嬉しかったことが浮かんでは消え、浮かんでは消え、たぶんいわゆる走馬灯ってやつだろう。そんな風に死ぬというのに、大泣きしているというのに俺の脳は冷静でスローモーションで迫ってくる熊の爪を見ていた。
「させるか!!!」
ガキンという金属音が当たりに響き渡る。
助かった?
脳の処理が追いつかないものの目の前には大剣を構えた青年が立っていた。青年は振り下ろされた前足を大剣で受け止めると、
「うおおおぉぉぉぉぉ!!」
そのまま前足を払い除け、そのまま大剣を熊の頭目がけて振り下ろす。どこかしら蒼く光ったよう見えた大剣は、まるで豆腐でも切っているかの如く熊を一刀両断した。熊は断末魔をあげるまでもなく息絶えた。
熊を真っ二つにした青年は大剣を背中の鞘に戻しこちらを振り返った
「良かった!大丈夫だった?怪我はない?」
「あ、ありが…」
突然のことにまだ、頭は追いついていないがひとまず青年に対しお礼を述べようとした。しかし、極度の疲労と生きながらえたこと、そして何より青年という人に会えた安心感からか俺の意識は濁りだし視界は真っ暗となった。遠くで青年の呼びかける声が聴こえてくるが何を言ってるのか分からない。そして、俺の意識は深い闇の中へ溶けていった。
読んでいただきありがとうございました!
ついに第一異世界人登場です!
何ですかこのかっこいい登場の仕方
そして少女に迫る敵を一刀両断!
この、光景に惚れない人なんていないでしょう。
さて、元々プロットなんて一切書いてない一発勝負のこの作品ですが次回はどうなるか未定です。明日をお楽しみに!
筆者の一発勝負には感想や批評などの応援があるときっと磨きがかかります。感想よろしくお願いします!
※5年ぶりに再編集しました。