番外編、絶対助けるからね!的なやつ
ふぅ…ギリギリぴったりセーフ…
総合ユニーク5000人突破ありがとうございます!
今回は唐突な番外編をお送りします。
「首都から呼び出しですか?」
ズマナ村にも冬が来ていた。冬になると森に住む魔獣達の多くは冬眠期に入る。そのため冒険者達はこの期間を休業する。逆に冬眠前で行動が活発となる秋期間は魔獣達による事件も多いため冒険者達はその時に冬の間の資金を貯めるのだ。
「そうだ。首都の将軍様がお前さんを軍に入れたいらしい。しばらくはこっちもあまり大きな事件は起きないだろうからな!首都はいいぞ〜、あっちはここなんかよりも娯楽が多いからな」
「で、でも…」
「心配するな! お前はちょっと根詰めすぎてんだよ。少しは気晴らしにでも首都へ行って来い!」
僕はログマさんの言葉に対する返答に悩む。
ここ、ズマナ村が襲撃を受けたのは、今から3カ月前だ。この3ヶ月の襲撃によりズマナ村は大変な被害を受けた。しかしここは冒険者の街である。すぐに冒険者が集まり村の復興が進み、村長の対応の早さもあってひと月経つ頃にはほとんど元の状態へと近づいた。
僕がシレオと戦った際に負った傷はひと月半する頃には完全に治った。この回復力には医者や治療師の皆さんも驚いていた。ただし、魔力回路の方はそう簡単には行かない。それでも僕は秋ということもあり剣のみで魔獣の討伐を手伝った。…何かを振り払うように
そして、やっと最近魔法の方が使えるようになってきた。まだ全盛期の半分ぐらいであるが、一度使えればそこからの回復は早いらしいのであと少しというところだろう。
僕のそのような姿を見て、新聞などは誇大広報し、首都での僕の評判は僕の想像をはるかに超えるらしい。村人のためを思う正義の味方としてだ。
当然、僕の育った村だ。僕に親切にしてくれた人たちのために刃を振るうことは当然だ。だけどもこれは表向きの理由だ。本当の理由は、可愛い妹一人でさえ目の前で守りきれなかった自分への苛立ちと、僕の目の前から悲しそうに連れ去られた彼女への一種の罪滅ぼしであった。
だからこそ僕は傷が治るとすぐに剣の腕をさらに磨いた。魔法が封じられて何もできなくならないように。僕は正直言って魔法に頼りすぎていた。だから途中で魔力切れを起こしてしまう。剣に魔法に を乗せて切る魔法剣の威力は確かに絶大だ。だけどもそれに頼りすぎてしまうのはよくないと思ってた。そう、内心では言いながらもあの時までは一瞬で敵を葬り去れる楽な魔法剣を自分は多用し、何もない状態での剣を疎かにしていた。村長が現役時代、鬼神と恐れられていた頃の村長は、あの黒龍でさえ刀で斬り伏せたらしい。村長は魔法というものを全くと言ってもいいほど使えない。それながらもあの硬い皮膚を持つ黒龍のことを斬っていたのだ。
(村長にできて、僕に出来ない道理は無い!)
僕はそう思いこの数ヶ月は魔獣討伐と同時に剣の修行をひたすら行った。僕にとって妖の森は修行場所としてぴったりだ。だけど僕自身、まだ自分の剣に満足をしていない。もっと高みを目指せるはずだと思っている。しかし、ここで首都へ行ってしまうと自主練を行う場所も時間も取れなくなってしまう。
(せっかくだけども…断わろう)
僕がそう思い口を開けかけた時ログマさんが耳元であることを呟く。
「実は前回の襲撃には闇の国が絡んでいて、あの嬢ちゃんも闇の国にいる確率が高いらしい。」
僕はその言葉に目を丸くする。
そして今回の招集の目的は闇の国が動き出した際の闇の国の首都への先鋒部隊を選んでいるらしい。お前がこの数ヶ月、嬢ちゃんのことを思って剣の腕を磨いていることは、お前は隠してるつもりでも俺は全部知ってる。だからこそ嬢ちゃんへ会える確率の高いこの招集は悪くねえと思う。それに、もしかしたらお前があの黒頭巾の男と戦う可能性も無くはない。やつは強い。これは俺も闘ったから分かる。だけどお前ならやれば勝てる確率の方が高いと俺は思う。修行で魔獣を狩ることは効果はあるに決まってるが、相手は人間だ。もっと柔軟な思考をしてやがる。だからこそ首都へ行ってもっと強い人間との組手で学べることもあるはずだ。」
「ログマさん、そこまで考えてこの話を…?」
「まあな! なんともねえ話ならその場で俺が断ってるさ。なんたってお前はズマナ村の大事な戦力だしな。ああ…あと娯楽云々も決して嘘じゃねえぞ。少し気を晴らす…それだけで新しい考えが浮かぶかもしんねえからな!…じゃあここまで言ってから聴くぜ? どうだこの申し出受けるか?」
ニヤリと笑って問いかけるログマさんに僕は黙って頷いた。
首都まで向かう魔導車の中僕は思う。この数ヶ月僕の功績を讃える人たちばかりを見てきた。だけども僕のことをちゃん見てくれ、僕のことを心配してくれる人もいたのだと改めて知った。
「何?暗い顔してんのアッシュ君。」
僕の隣で今回一緒に同伴するロイエさんが笑顔で聞いてくる。
「ん? いや、僕はずっとミズキちゃんのことを考えてて周りを見れてなかったけど、村のみんなは僕のことを見てて心配してくれていたんだなと思ってね。ミズキちゃんがいたら笑われてるよ」
「そうだよ! アッシュ君はあたしたちの希望なんだから、もっと笑ってくれなきゃ! ね? だから、一緒に頑張ろうね! 」
「なんですか、それ。まあ、そうですね、頑張りましょう!」
そう言ってロイエさんに笑い返す。
空には1匹の鳥が飛んでいる。
ーミズキちゃん!絶対に助けるからね!ー
お読みいただきありがとうございます!
最近の更新時間のばらつきがひどい作者です。
何というか…毎日連載の辛さが身にしみますね。毎日連載している作家さんたちが本当にすごい!それを1年以上とか、もはや私には想像できない高みすぎて…
まあ単純に「ストックをもっと貯めろ」とか言われそうですがね…現在ストック0ですから、ちょっと頑張らなきゃです。
さて、久しぶりのあの方の登場です。と言っても1週間ぶりぐらいですが…相変わらずのイケメン君ならミズキちゃんを助けてくれるよな気がします!頑張れアッシュ君!…ただアッシュ君がミズキちゃんに会う頃は果たして彼女は正常なのなどうか…
そして、皆さんお覚えでしょうか?ロイエさんのことを。長髪の男の部下3人のうち2人を滅殺した彼女です。ほんと、なんとなくで出てきた彼女がこの後どのような役割を担うのか、作者も楽しみです!
では、