23、奴隷娘と主人の1ヶ月〜クロノside〜
今日も12時に予約投稿です。
明日は出来れば0時出来なければ12時投稿予定です。
週別ユニーク2000人ありがとうございます!
これからも頑張って行きます!
ピピピ ピピピ ピピピ
私の頭の上で私お手製の魔導具時計が朝を知らせる。この時計は魔力を登録した人にのみ音が聞こえ目覚めさせるというもので、その人の魔力を感知し起きているということを確認するまで鳴り止まないそういう仕組みだ。
私が身体を起こそうとすると身体にしがみつくものがいる。彼女はズマナ村襲撃の際、私が連れ去ってきた少女で名前をミズキという。私が彼女の腕を払おうとすると、それを拒むように力を入れてくる。
「はあ…」
私は一つため息をつくと彼女の頭を撫でてやる。そうすると彼女は再び安心しきったような顔になる。その笑顔に私もつい微笑んでしまう。
私がこれまでにここまで一人の奴隷に心を動かされたことがあっただろうか。
彼女をこの屋敷に連れてきてからもうすぐ一ヶ月になろうとしている。
彼女と初めて出会ったのはズマナ村を襲撃した時だ。私たち闇の国はこのフォースグラントで多大な影響力を持つ海の国に損害を与えるために、国際手配されているシレオを用いてまでも襲撃を行った。しかし、結果は一人の青年によって阻まれることとなり失敗に終わったのだった。幸いだったのは私以外の全員が殺されていること、主犯であるシレオが闇の国から指名手配されていたことにより、一般テロリストによる反抗として片付けられたことだ。また、海の国が一介のテロリストによって海の国第二の首都と言っても過言ではないズマナ村が大損害を受けたことが他国にバレ、自国の威厳が失われることを防ぐために情報統制を敷いたのも功を奏したというものだ。帰ってきた私に対して闇の国の総統は暫くの謹慎を言い渡した。本当であれば工作の失敗した工作員というのは密かに抹殺されても文句は言えない。私が殺されなかったのはひとえに私が闇の国とって重要な戦力であるからだろう。犯罪者だろうが、失敗者だろうが使えるものは自国の発展のために大いに使う。それが今の闇の国の総統の考え方であり、私はその所々が世界大戦を引き起こした150年前の闇の国の総統であるヘイトに繋がるところがあるように感じている。しかし、彼は闇の中で葬りかけていた私を救ってくれた恩人である。彼のことは何があっても裏切るつもりはない。
さて、初めてズマナ村で彼女を見かけたとき私は一目で彼女がエルフの血を引いているということを感じ取った。それは亜人種が生来もつ魅惑を感じ取ったからだ。決して強い魅惑というわけではない。ほんの少し目立ってしまうという程度の魅惑だったが、長年調教師をしていた私が気づかない訳はない。
亜人種、特にエルフやヴァンパイアなどはなぜか本質的にとても強い魅惑の力を持つ。闇の国や昔の他国が亜人種を嫌っていた理由や奴隷にしようとしていた理由はそこにある。彼らは何者であろうとその自分たちがもつ魅惑の虜にしてしまう。その結果、国主が一人の亜人種に傾倒してしまい国が傾くなんてこともあったからだ。その結果彼らは色魔として嫌われるようになった。逆に言えばその溢れ出る魅惑は性奴隷として抜群の商品となり高額で取り引きされていたのだった。
闇の国でも遥か昔国がそのことで傾きかけてことから亜人排斥主義が強くなり戦争の原因となったのである。今では闇の国のそのような思想は薄まってはきているが亜人種奴隷が認められていることがこの思想の闇の深さを物語っている。
私はこの時から彼女に興味を持った。最初は奴隷として売れる金蔓として、しかし、二回目彼女に出会い街を道案内してもらった時、この心は彼女を自分のものにしたいという独占欲に染まった。こんなに可愛いく、元気そうで、それでありながら自分の心を覆い隠しているような少女を他人の奴隷になどしたくないと。この子は私の下で調教してやる。そう決めたのだった。そして、青年とシレオが戦い、青年が疲弊したところをついて彼女を連れ去ってきたというわけだ。
しかし彼女を連れてきて1日で私の予定は狂うこととなる。本当はじっくりと彼女を調教し彼女を私に従順な子にしようと考えていた。しかし、私の作ったー黒い部屋ーの効果が彼女にてき面だったのか、闇から出てきた彼女は闇に入る前の彼女とは正反対の性格をしており、すっかりわたしに従順になり半分以上心が壊れていた。最初私は彼女の演技かと疑った。しかし、これは彼女のうちに秘めていたもう一つの本当の性格出会ったらしく、彼女は私にべったり甘えるようになった。
極め付けは夜眠れないから一緒に寝て欲しいと言われたことだ。彼女についている首輪には少しだけ精神に働く効果がある。それを利用し私は彼女の一人称を変え、私の呼び方を変えさせた。
首輪にはもう一つ別の作用がある。それは、首輪に登録された主人と離れると一定の不安感を与えるという効果だ。これは主人から逃げられないように開発されたものである。
私の屋敷は決して広いわけではない。私と彼女にあてがった部屋もさほど距離は離れていないため、これについては心配していなかった。しかし、心の弱り切った彼女にはこの程度の不安感でも情緒が不安定になるほどの効果を示したらしい。それからというもの私から離れるだけで彼女は取り乱し、夜も一緒に寝るようになった。
初めの頃、私は自分の目が誤りであったと感じていた。彼女は自分にふさわしい奴隷ではない…と。しかし、彼女と過ごすうちにいつの間にか彼女に惹かれ始める自分をかんじていった。
そして、一ヶ月である。私は奴隷の調教を頼まれることはよくあるし、自分でも拾ってきた奴隷を調教することもある。しかし、総じてその奴隷たちに愛着を持つことなんてないし、一ヶ月も一緒に暮らすなんてことも殆ど無く、すぐに奴隷商に売り払うか心を壊しきってしまい使い物にならなくしてしまうかのどちらかであった。
しかし、彼女は違った。彼女はいつの間にか私にとって大事な愛玩具になっていたらしい。彼女は私がいないと何もできないと話していたが、私もいつの間にか彼女のいない生活を考えられなくなっていた。
私は孤児である。子供の頃はスラム街で過ごしていた。そのため人に愛されるということはあまり無い。私が今の総統に見出されて拾われてからも他の高位の人たちからは邪見され、下の者からも拾ってきた奴隷からも恐怖を向けられるぐらいだった。だからこそ心の平穏を保つためとはいえここまでまっすぐ自分を信じてくれるという者には会ったことは無かった。だからだろう。
「くくく、どっちが調教されているのやら…」
私は自分を笑う。自分は闇の国の最高戦力の一つである。今の謹慎が解け当然戦争へ出かけることになれば彼女を置いていかなければならないし、そもそも謹慎が解ければ城に出仕しなければならない。彼女は正直言って邪魔となる。しかし、彼女と今のままの平穏な生活を送りたいと願う自分がいる。
「もう少し、今の生活が続けば良いですね」
時計が鳴ってからそろそろ30分が経とうとしている。
「そろそろ、起こしましょうかね、ミズキさん朝ですよ。起きてください。」
そう言って彼女の肩を揺らす、すると彼女は「んっ…」という声とともにゆっくりと目を開ける。その目が私の目と合う。
「んっ…おはようございましゅ。ご主人しゃま。あっ!ごめんなさい、私ずっとご主人様を」
そう言って彼女は抱きついていた手を離す。私は申し訳なさそうな彼女の頭を撫でると気にしないように言う。それだけで彼女の顔は嬉しそうな笑顔に変わる。
「…そうです。その笑顔に私は惹かれたんです」
この一ヶ月何度も見た彼女の笑顔。それは私の心を癒し、そして私をより惹きつけるを
「えっ?ご主人様、なんか言いました?」
「いえ、どうでもいいことですよ。では食事としましょうか。お腹も減っているでしょう?」
その言葉に返事をするように彼女のお腹鳴る。彼女が恥ずかしそうに下を向く。
そんな彼女を微笑ましく思いながら彼女を連れて食堂へ向かう。
「くくく、今日はいったいどのような日になるだろうね?」
こうして、今日も私と彼女の1日が始まった。
お読み頂きありがとうございます!
タイトル詐欺&プロローグ詐欺を実感している作者です。
安心して…というのはおかしい気もしますがちゃんとあと数話くらいすればプロローグと同じ状況になる予定です。
さて、クロノさん視点です。本当は超ドSにしようとしていたんですが何故かこういうキャラへ…おかしい…もっと悪役にしようと思ってたのに…
次回は…まだ日常予定です。
感想、誤字脱字、批評などお待ちしております。
では、
※追記 少し読みやすくなったでしょうか?夜月さんのアドバイスを参考に文頭に空白を入れてみました!と思ったらなってない!なんで?夜月さんすみません…理由が分かるまでしばらくお待ちを!