22、壊れた心の埋め方的なやつ
今日は用事があるので予約投稿!
ユニーク3000突破ありがとうございます!
これからもよろしくです!
気がつくといつの間にか辺りが光に包まれている
(こ…こは…ベッドの…うえ?)
「おや、目覚めたようですね。ミズキさん体調は大丈夫ですか?」
「あっ!ご、ご主人しゃま!…ご主人しゃま!私を助けてくれてゃんですね…やっぱい、ご主人しゃまはやさしいでしゅ。」
そう言って『私』は重い体を動かしご主人様に抱きつく。あたたかい、闇の中で冷え切った心があたたまる。たった一晩で大きく変わった私を見てご主人様が目を丸くする。
「おやどうしたのですか?…一晩でこんな甘えっ子になって…ゆっくり調教するつもりでしたのに…それよりもいいのですか、こんなにも早く落ちてしまって?海の国ではアッシュくんがあなたの無事を祈ってるのですよ?」
そう問うご主人様。アッシュさん…考えるだけで胸が辛くなる。私はにいちゃんだと思ってたし、たぶんあっちも妹のように思ってたはずだ。だけど私はただアッシュさんを自分の安全装置にしか思ってなかったんだ。それなのにアッシュさんに合わす顔なんて…
「…グスッ…あ、アッシュさんには…合わす顔なんて…私には…グスッ…無いの。私は弱虫で…グスッ…卑怯な子だから…きっと…グスッ…私の気持ちを知ったら…おこりゅ…きらいに…なる。…ご主人様は…こんな…グスッ…私でも…奴隷として…使える?」
「くくく、安心してください、ミズキさん。私はあなたのことが気に入っているのですよ。たった一晩でこの変わり様には驚きですが今は手放すつもりはありませんよ。さあ、ほら涙を拭いて。お風呂に行きましょう。それで色々流してすっきりしましょう、ね。」
そう言ってご主人様は私の頭を撫でてくれる。ご主人様は私を大事にしてくれる。それだけで"壊れてしまった"私の心はご主人様の優しさで歪にその隙間を埋め合わせ始める。気持ちが暖かくなる。
お風呂にに入った後に朝食を食べる。昨日はご主人様を怖がって何も手をつけられなかったけど、私の中ではご主人様は信じられる人となっている。だから今日はたくさん食べることのできた。昨日、あまり食べられなかったのが本当にもったいないと思うほど美味しかった。
そして、午前中はご主人様に書斎に連れてかれた。ご主人様が奴隷と言っても勉強は大切だと言うので、この世界の歴史や魔法の概念などを教えてもらった。海の国で教えられた歴史とはまた違う視点からの歴史は元来の歴史好きの私の血を騒がせた。
お昼ご飯を食べた後はご主人様と一緒に外へ出かけた。ズマナ村の商店街は城下町といった感じだったがこの街は城塞都市というような雰囲気があり、それでいてズマナ村のお店同様活気にあふれていた。
闇の国の首都であるダンケヘイトは闇の国きっての要塞として知られ、大陸を二分した150年前の戦争の際も闇の国最強の防衛基地として機能した最強の防御力を誇る。歴史上一度も落ちたことはないらしい
「ご主人様、なんでここがそんなにすごい要塞として機能してるの?私が見た感じ至って普通の街って感じなんだけど」
「うーん…そうですねえ…詳しくはやはり私の奴隷ではありますが一応余所者のミズキさんに詳しくは教えるわけには行きません。まあ単純に言えばいたるところに隠し通路や罠を兼ね備えた家などがあるんです。そもそもがこの街をぐるりと囲むあの砦によって敵の接近を防ぎます。そして、もし敵に侵入されたとしてもその隠し通路を使ったゲリラ戦で戦うことが出来るんです。そして、この街はこの中央通りを除けば全ての道が入り乱れまるで迷路のようになってるんです。当然中央通りにも撃退の手段は存在するためこれがこのダンケヘイトが要塞と呼ばれる所以です。」
そもそも闇の国といえば建築技術や城郭などと呼ばれるほど技術力が高く、国の要所とされる都市は全てが要塞と化しており、容易には攻め落ちないのである。
さて、商店街の活気に当てられ、とても楽しんだ私はご主人様の手を握り満面の笑みで商店街を楽しむ。しばらく楽しんでいるとご主人様から帰宅の時間と言われ、家に戻ることとなった。
ご主人様の家に戻ると暖かいお風呂と暖かいご飯が待っていた。
ご主人様曰く今日の調教は無いらしい。私がたった一晩で従順になったことに驚いているようで、今日は疲れているだろうからしっかりと休めと言われた。
食事を堪能した俺はご主人様の言葉通り自分の部屋に戻り目を瞑り、寝ようとする。
唐突に心臓が早くなる。
闇が怖い
突然アッシュさんが目の前に現れる。
私はアッシュさんに駆け寄る
「アッシュさん!良かった!助けてくれると信じてたよ!」
私はアッシュさんに抱きつく。しかしアッシュさんは何もいわない。
「アッシュさん?」
するとアッシュさんは私を振り払う。私は勢いのあまり尻餅をつく
「あ、アッシュさん、何するの!?」
「僕は君のことを本当の妹だと思ってたのに、君は僕のことを便利な道具としか思ってなかったんだね」
「そ、そんなことはない!私はアッシュさんのこ…」
「嘘だ!君は嘘つきだ、うそつきウソつきウソツキウソツキウソツキ…」
「いやああああ!!やめて!お願いだから、やめて!お願いだから」
「ハッ!…夢?」
そこで目を覚ます。私はあまりの怖さに身体中が汗だくだ。私はアッシュさんを騙してたーいや違う、にいちゃんだと思っていたーでもていのいい道具だとーそんなことはない…ー本当か?私はせこい人間だろ!!ー違う!ーウソツキーお願い黙ってーウソツキー黙って!ーウソツキ
「黙って!!」
アッシュさんの言葉ともう一人の私の言葉が止んだ。相変わらず闇は怖い。身体が震える。だけど目を瞑ればまた、あの声が囁き、悪夢を見せる。
「どうしましたか?大きな声をあげていたようですけど」
そこへご主人様が入ってくる。ご主人様の声が冷え切った心を温め直す。
「あの…ご主人様?えっと…すごい失礼なお願いなんですが…私と一緒に寝ていただけませんか?もう、私、怖くて怖くて…こんなんじゃもう…私限界です…」
そう言って上目づかいでご主人様を見る。ご主人様はくくくと笑うと
「本当にたった一晩でびっくりするほど甘えん坊になったものです。本当に甘えん坊な奴隷娘ですねえ…良いですよ寝てあげますよ。奴隷の面倒を見るのも主人の役割の一つですからね」
そう言ってご主人様がベッドに入り込んでくる。私はご主人様にしがみつく。するとご主人様は私の頭を撫でてくれる。次第に心が安らかになり始め、そしてまどろみ始める。
「ご主人様、おやすみなさい。」
そう言って私の意識は落ちていく。最後まで頭にご主人様の手のぬくもりを感じながらー
お読みいただきありがとうございます。
さて、心が半壊状態のミズキちゃん。クロノさんの優しさで無理やり心を埋め合わせますが当然壊れたままと同義です。
ちなみに今のミズキちゃん状態はかなり幼児退行しています。街探索では楽しんでたようですがもしクロノさんが途中で急に姿を消したりしたらそれだけで震えて動けなくなってしまう。そういった状態です。
次回はクロノさん視点の予定です。
では、