16、一章のエピローグ的なやつ
ということで、アッシュさん視点でのエピローグです!
ズマナ村夜襲事件からもうすぐ数週間が経とうとしている。
僕は病院のベッドに寝転がりながら空を見上げる。傍にはボロボロになってしまった灰色のリストバンドが置いてある。
ズマナ村の復興は村長さんがあらかじめ国の兵士たちを呼んでいた事もあり急ピッチで進められている。今回の夜襲で特に被害の多かった西と東の集落では仮設の住宅の建設が進み、また他の地域や銀の国からは沢山の医療スタッフがおとずれ、けが人の治療やカウンセリングをおこなっている。僕とシレオが暴れた商店街も現在では未だ建物にきれつが入っていたりするが村の住人たちの頑張りにより以前のような活気が戻りつつある。
今回の被害としては怪我人は数百名と多かったが、死者数は十数名にとどまり、そのほとんどが魔獣や龍達に挑んだ冒険者や騎士達であった。彼らは英霊として大規模な葬儀が営まれた。また、民間の犠牲者は少なく、夜襲の規模から見れば良かったと言える方だろう。これも、ギルドの対応が早く、特に村長の孫娘であるロイエさんの避難誘導の賜物であるだろう。
村長は今回の夜襲から自身の不甲斐なさを実感したらしく引退を表明しかけた。しかし今回の対応の良さと冒険者達からの懇願により、引退を取り下げ引き続きギルドマスターを続けることを決めた。
黒頭巾と戦った僕の同僚たちは全員無事だったらしい。ただ、全くあの黒頭巾に歯が立たなかったことなどでショックを受けていた。しかし次出会った頃は勝てるようにと全員が再び鍛錬を重ねている。
今、ベッドで寝ている僕の傷はとても酷かったらしい。そこら中の骨は折れていて立っていたのが不思議なくらいであるそうだ。また、無理矢理魔素を吸収したことで身体の魔力回路の損傷がとても激しく魔法を使えなくなる一歩手前だったらしい。しばらくは魔法の類の一切禁止を言い渡された。
僕は多数の魔獣達を討伐、敵の主犯格の男を倒したことを評価され、多額の報酬と勲章を与えられることとなった。だけども僕はそれらを断り、報酬は村の復興に役立てくれるよう頼み込んだ。新聞などがそのことを一面として載せると"絶刀"の魔剣士は欲がなく、村の人々のことを第一に考える騎士の鑑として、評価はさらに急上昇しているらしい。貴族のからもぜひ我が娘となど見合いの話も来ているらしいが全て断っている。
ー少女1人助けられなかった騎士が持て囃されるなんてなー
あの日から1人の少女が行方不明となっている。
僕の目の前で僕を呼びながら黒頭巾の男に連れ去られていった少女。
あの日から数日、彼女の母代わりを宣言していたおばさんはしばらく宿を開けることができず塞ぎ込んでしまった。もし、あの時…彼女が連れ去られる時に目が覚めていたなら…死んでも彼女を行かせはしなかったのに…と。
だけども数日後おばさんは宿を再開する。
「たった一か月だったけど、あの子は私の大事な娘だ。あの子がなんかの拍子に逃げ出して帰ってきたときに、あの子が好きだったこの宿が開いてなかったり、私が塞ぎ込んでたら絶対悲しむだろうからね」
なんて、笑いながら言い、今日も働いている。それでも時折見せる悲しそうな顔や赤くなった目を僕らが見ない日はない。
彼女が僕の目の前で連れ去られてから数週間、時折、彼女が僕の夢に出てくる。暗い闇の中僕の名前を泣きながら呼ぶそんな夢だ。僕は彼女を早く助けなければという焦燥に駆られる
彼女は僕が森で熊に襲われていたところを助けた少女だ。彼女は不思議な少女だった。村の住民票には記載されていないし、自身を記憶喪失と偽る。まるでこの世界に初めて来たかのような世間知らずな少女。彼女は僕や村のみんなに受け入れられ、そして彼女の笑顔にみんなが励まされた。
そんな彼女は僕にとってもかけがえのない存在となった。おばさんしか家族のいない僕にとって初めての兄妹のように思っていた。気が強く生意気で、お調子もので、まるで少年のようでいて、だけど少女のようによく泣いて、恥ずかしがりやで、表情が見ていて楽しくなるほどころころ変わって…そして、何よりも人を惹きつける素晴らしい笑顔をしていた。
たった一か月の間だったけどそんなかわいい彼女は僕にとって無くてはならない大事な存在となっていた。
だからとても焦燥に駆られる
だけど僕の実力では黒頭巾に例え無傷で魔力が全快だったとしてもギリギリ勝てるかどうかというところだろう。魔法の使えない今なら尚更だ。
だから僕は今、傷を治すことに専念する。そして、いつか必ず彼女を助けに行く。
「だからミズキちゃんどうかお願いだから、僕が行くまで壊れないで」
僕は青い空を見ながらミズキちゃんの無事を願い続ける。
お読みいただきありがとうございます!
なんとか一章を書き終えた!っと息を吐く作者です。
前回も書きましたが、なんとかタイトルのところまで持っていくことができました。なんか、後から後から設定を付け足しまくりすぎて大変なことになりましたがまあいいでしょう…
本当はさっさとタイトル回収するつもりだったのに…どうしてこうなった…
しばらくはアッシュさんは怪我の治療や魔力回路の修復に動けません。だけども彼ならいつかはミズキちゃんと再会できるでしょう。その時一体ミズキちゃんはどうなってるのか…作者も分かりません笑(おいっ!
さて、次の投稿は番外編という形でアッシュさんとミズキちゃんのエピソードを入れるつもりです。しばらくは無い2人の絡みお楽しみください!
誤字脱字には気を付けていますが報告していただけると幸いです。
感想も待ってます!
では、