11、突然の奇襲的なやつ
少し長いかもしれません。
「大丈夫ですか!?」
1人の騎士がハースさんの宿屋に入ってきた。そとにも数人の騎士と冒険者がいる。
「はい、大丈夫ですよ、こっちの方では爆発はまだおきてませんしね」
駆け込んできた騎士にそう答えるハースさん、しかしその顔はどこかしら強張っているように見える。
村に響き渡ったあの轟音の後、俺はハースさんの宿に身を潜めていた。俺は元の世界にいたころ好きな教科が歴史だったこともあり、いろんな戦いを個人的に調べてたりしていた。その中でも夜襲というのは敵に物理的だけではなく精神的にもダメージを与えることができる。そんな中、事件が起こったのが、宿に帰る途中ではなく宿に到着した時だったというのはついていると言えるかもしれない。
元々ハースさんの宿に泊まっていた冒険者たちは轟音聴くと状況を知るために次々とギルドへ向かい、今は宿にいた数人の商人とそれを警護していた冒険者数人しかいないため、宿の空気は暗く重かった。そのため、騎士の来訪は少しばかり宿の空気を和らげた気がする。
騎士の話を聞いたところ夜襲が起こったのは村の東の地区らしく、現在そこを中心として黒龍をはじめとする龍種があばれているらしい。
黒龍は昼間、俺とアッシュさんを襲った朱龍よりも気性は穏やかであるが、龍種のなかでも上位に位置する龍であり、本気になった時の危険度は朱龍以上である。
また、妖の森付近の西側では大型の魔獣達が森からでてきているらしい。つまりは西に位置する森からの魔獣達と東からの龍たちの挟み撃ちの攻撃らしい。
「ここは今はまだ安全ですが、いつ標的になるか分かりません。なので僕たちについてきてください」
騎士の人の話では、元々狩りに行ってた冒険者達がいつもと違う森の魔獣達の異変を報告しており、またアッシュさんの龍と戦ったという証言をもとに、ギルドマスターである村長がこのようなこともあるかもしれないと想定し準備をしていたらしく、現在ギルド周辺は一大防御施設と変わっているらしい。
村の比較的西に位置しているこの宿はいつ魔獣達に襲われるかわからなく、また龍種の動きも分からないため騎士の人の指示のもと隊列を組みギルドを目指すこととなった。前と後ろを騎士の人たちが隊の外側には冒険者の人たちがそして比較的安全な中央には非戦闘員が置かれた。俺もそこに配置された。
「では、出発します。敵に見つかってはいけませんので少し急ぐこととなります。子供とはしっかりと手をつないでいてください」
騎士の人の声とともにギルドへと歩き始める。騎士の人の言葉を聞いてハースさんが俺の手を強く握る。どことなしか震えてように思えるその手を俺も強く握り返す。
ある程度時間が経ちあと少しでギルドの防御範囲に入るところまで来た。幸いなことに魔獣達は冒険者の方々が必死で食い止めているらしく、途中で襲われるなんて事はなかった。あと少しでギルド、隊の中のみんなが安堵感に包まれた次の瞬間、
突如先頭を歩いてた騎士の頭が消えた
いや、切られたと言うのが正しいのかもしれない。
決して騎士の方が油断していたわけではいない。しかし突如天空から降りてきた1匹の龍とその背に乗った男に気づいた時には首と胴がはなれていた。
隊に悲鳴が広がる。すぐに戦闘モードに入ろうとした冒険者達が次々と襲い来る炎の矢や玉によって討ち取られていく。
慌ててギルドの防衛範囲へと走り出す商人たち、しかしその行く手には無数の飛竜、そして断末魔が響き渡る。
そう、俺たちが目指していたギルドを中心とした防衛施設はすでに陥落仕掛けていた。
次々と、冒険者達がやられていく、敵の男の数は4人のようだ。その中でもリーダー格らしき長髪の男がこちらを見て笑う。
「ははっ、騎士の奴らは西の森に釘づけのようだな。相変わらずクロノの龍の使役はすごいぜ、いくらあの絶刀の魔剣士でもあの数の龍種は手に余るだろうな。お陰でギルド奪取が簡単に済んだと言うもんだ。確か海の国一の冒険者で鬼神と言われた老いぼれもいたらしいが、全く話にならんかったぜ。ギルドで俺に抗う冒険者達全員もたった一撃で地に沈むしな。ほんと簡単だぜ」
そして、こっちを見ると黒光りする剣を抜き、地面に突き刺し
「こっから逃げようだなんて思うなよ?逃げたら最後、龍達の胃袋の中だぜ!まあ…ここで死ぬか、男は強制労働女子供は奴隷やらで生きていくの些細な違いだがな」
そう言って高らかに笑う。聞いた話は正直言って胸糞が悪い。しばらくすると商人の奥さんが抱いていた子供が泣き出した。
「おいおい、うっせえなあ、さっさと黙らせろよ、じゃなきゃ、あまりのうるささにイラついた龍が動き出しちまうぜ!」
長髪の男の言葉とともに龍が1匹前へ出る。商人の奥さんは子供を必死に泣き止まそうとするが一向に泣き止まない、そして龍が奥さんの前に立ち止まる。
「させるか!!」
商人の男の人が奥さんと子供を龍から守るため前に出る。しかし龍はそれがどうしたと言うように尻尾を揺らしそして一発
商人の男の人は近くの家の壁に激突し事切れた…
奥さんが悲壮な表情をする。子供はやはり泣き止まない。
「あ〜あ、動くなと言ったのに、バカなやつだ。安心しろ女、今すぐその男と同じところへ子供もろとも送ってやるよ」
そして龍は再び尻尾を振り上げる。
奥さんの表情が死を悟った顔となる。
(そんなこと、させるか!!)
俺は立ち上がると、先ほどアッシュさんに教えてもらった魔法を展開する。そして、俺はアッシュさんが俺を守ってくれるために張ってくれた防御壁を思い出す。そして、日本にいた頃の漫画に出ていた街全体を覆う膜のようなものをイメージして唱える
「"なんでもいいから俺らを守れ防御膜!"」
奥さんに迫っていた尻尾は奥さんに叩きつけるかに見えたが、その直前で不意に何ものかに阻まれる。
(くっ…!?衝撃はつらいけどなんとか防御膜を張れた)
「あんた!いつの間に魔法なんか、」
ハースさんは驚きの声を上げる。それは長髪の男も同じようで、俺が魔法を使って龍の攻撃を防いだことに驚きを隠しきれていない。しかし、すぐに表情を戻すとニヤリと笑い俺の方を見る。
「ほう…龍の攻撃を防ぐか、その年齢でやるではないか!ははっ…だがその魔法いつまで持つかな?おい、お前らこの膜を破壊しろ。ふっ…お嬢ちゃん、もし、この膜が壊れたらどうなるか分かってるよな?じゃあせいぜい頑張りな、応援してやるよ」
そう言って男は下卑た笑い声をあげる。
(えっ!?魔法なんて今日覚えたばっかなのに、そんなの…)
しかし、そんな俺の心の叫びなんて知らないというように龍や手下の男達が攻撃を繰り返す。
「…くっ!!」
「おらおら、どうしたお嬢ちゃん?膜にヒビが入ってきてるぜ?ほら、頑張らないと壊れちまうぜ!」
俺が苦悶の表情を浮かべていると、長髪の男は俺を挑発する。攻撃を防ぐのを続けていると次第に身体中が悲鳴をあげ始める。
(…っ!?これが、アッシュさんの言ってた、魔力切れ!?もうダメだ、耐え…られない…くっ!)
そして、1匹の龍が大きく尻尾をあげて振り下ろす。その一撃で魔力は尽き、俺の作り上げた膜は消えてしまった。
魔力切れの作用なのか身体が全く言うことを聞かない。俺はその場に崩れ落ちる。ハースさんの俺を心配する声が聞こえる。
「おっ?お嬢ちゃん、その年齢にしては頑張った方じゃないかい?だけども負けは負け、その、健闘を讃えて最初にお嬢ちゃんを殺してあげるよ!」
そして、龍が俺の方を向き俺に迫ってくる。
ハースさんが俺の前に、俺かばうように立つ。
「はっ…ハースさん…ダメだ…死んじゃうよ…」
「馬鹿言わないの!娘をみすみす殺させるような母がいますか!」
ハースさんは大声をあげる。その目は涙が浮かんでるようにも見える。
そしてハースさんの前に龍が立つ
尻尾を振り上げる
「くっ…やめて!お願いだから!やめて!」
龍はそんなことどこ知らずと尻尾を振り上げるのをやめない
(やめろ!やめてくれ!それだけは!お願いだから)
俺が声にならない悲鳴をあげる
そして龍の尻尾が振り下ろされる
(お願い!とまって!誰か助けて!アッシュさん!アッシュさん!)
「お願いだから、アッシュさん助けてよおおおお!!!」
"精霊障壁"!!!
龍の一撃が止められ、そして龍の尻尾が爆発する
「ごめんね、ミズキちゃん、ちょっと遅れちゃった」
目の前には背丈ぐらいの光り輝く大剣を担ぎ、息を切らし、身体中が血や泥で汚れながらも
いつもながらの笑顔でアッシュさんが立っていた。
お読みいただきありがとうございます。
今日の0時ぴったりの投稿を目指しながらも間に合わなかった作者です。
ほんとはもっと、短い予定だったんですが途中で切ると短くなりすぎる気がしてこのような結果になってしまいました。
アッシュさんここで間に合うあたりカッコ良すぎますね!自分のキャラながら嫉妬するレベルです。
さて、次回はミズキちゃんと別れたあとのアッシュさん視点でお送りする予定ですのでお楽しみに
細心の注意は払ってますが誤字脱字がきっとあると思います。報告頂けると幸いです。
感想、批評も待ってます!
では、
3月3日、少し内容の加筆・修正をいたしました。
3月5日、少し内容の加筆・修正をいたしました。