10、事態は急展開する的なやつ
ついにプロローグを除けば10話目です!今回もほとんど説明回ですね。
「「…へっ?」」
村で何か起きているのかもしれない、原っぱから急いで戻ってきた俺とアッシュさんであったが、いつもと至って変わらない平穏な時間が流れていた村の様子に二人して変な声が漏れてしまった。それはまるでさっきまでのアッシュさんと龍との戦いが夢だったのでは無いかと疑うほどである。
「ミズキちゃん、僕はさっきのことの報告も兼ねて村長のところに行ってくるよ。ミズキちゃんは疲れてるだろうし先に宿に帰った方がいいかな。宿の前まで送るよ、あとおばさんにはこのことは内緒の方がいいかも、おばさんがうっかり口を滑らしたら危ないしね」
先ほどあんなことがあったばかりの俺はできれば俺が見つけた安全地帯であるアッシュさんから離れたくは無かった。だけどもこれ以上アッシュさんに迷惑をかけるわけもいかないため、俺はこくんと頷いた。
たわいもないことを喋っていると、いつの間にか宿の前についてしまった。アッシュさんは俺にしっかり休むように言い、俺が軽口を返すと笑って村長さんのところへ向かった。
この村は妖の森の隣に設置されていることもあり、国からは少しばかりの自治権を得ている。それは、冒険者ギルドの存在も一つの要因である。妖の森も含めこの大陸にはいくつかの魔素の濃い場所が存在している。そこに住む生物の多くは魔獣である、魔獣の中には複雑な進化というか変化というかをした生き物が多く、その体の部位の多くが日常生活の様々なことに使われている。俺が最初に襲われた杜熊は厚い毛皮が冒険者の防具兼防寒具にへと、爪はその耐久性と切断力を活かして武器や農耕具などに使われている。しかし、魔獣の多くは大変強く並の人間では到底叶わない。そこでそのような魔獣の討伐を生業とする冒険者が生まれたのだった。
その冒険者たちに仕事を斡旋したり、危急の際は指揮をする役割にあるのが冒険者ギルドである。この村は各国に点在する冒険者ギルドの海の国本部であり、村長はそこのマスターつまり、海の国の全冒険者の頂点に立つ存在なのである。
そのため、アッシュさんのように国から騎士が派遣されてはいるが実質この村自体が冒険者によって運営され、有事の際は冒険者主導で行われることが多々あるのだ。
ただし、決してこの村と国とが仲が険悪ということはなく、国が戦争を行うときは国に傭兵の斡旋も行うし、逆に妖の森などで魔獣の大量発生が起きたら国からの兵士が派遣されたりするのである。それでも騎士達の中には冒険者たちを見下す傾向が無いわけでは無いが…
アッシュさんは子供の頃は冒険者として活躍していたらしい。その姿をたまたま見ていた、首都に住むというアッシュさんの師匠がアッシュさんの非凡さに気づき、自身弟子として首都に連れて帰り修行をつけ、その結果絶刀の魔剣士と呼ばれる騎士アッシュが誕生したわけだ。
そういったこともありアッシュさんは村にとって冒険者と騎士とを繋ぐ橋渡しのような役割もしているのだ。
アッシュさんと別れた俺はさっきのことでかいた冷や汗やつかれを流すためお風呂に浸かっていた。元日本人の俺としてこの世界にもちゃんとこの世界でもお風呂にはいる習慣があったことが素直に嬉しい。さらにこの村は温泉が湧いているらしく、宿であるここも当然温泉なのだ。この国は現代日本と同じように水道設備が整っており各家庭で蛇口をひねれば水か出る。そのためここ以外の町ではその水を魔導具で温めることお風呂に入っているらしい。
またこの村は地下水も豊富であり、その地下水の味は水道水比べものにならないくらい良いため、ハースさんの宿では料理に使われていたりする。その水の力と、ハースさんの料理の腕もあり、宿の食事は好評なのである。ただし地下水の水汲み場が宿から遠く、汲みに行くのは俺の仕事のため少しめんどくさいと思っていたりするのは内緒である。
お風呂で身体も心もさっぱりとした俺は、ハースさんに何か手伝うものがあるかと尋ねたが、準備は他の従業員の方で足りてるらしく、特に夜まで手伝いは必要ないらしい。アッシュさんには家で休んでいろと言われているが、こういう時は逆に身体を動かしたほうが気晴らしになるものである。夜まで手持ち無沙汰な俺はさっきの事件の気分転換も兼ねて商店街に出向こうと決めたのだった。
この村は"村"という体裁をとっているが、その実経済力などは国の大都市とさほど変わらないのである。特に、冒険者の村ということもあり鍛冶場もあれば防具屋や薬屋などもあるし、隣が妖の森ということもありは冒険者によってとってこられた山の幸が店先には並んでいる。冒険者というのは流動的なものであるため村の活気が落ちるなんてことは滅多にない。
(ほんと、活気ある村だよなあ。それに現代日本みたいにビルじゃなくて、昔ながらの木造の家屋が多いってのもほんと過ごしやすいよ)
村は隣の妖の森に日本で言うところの杉や檜のような家を建てるのに向いている木々が生えてるため、ズマナ村全体として木造建築が多いのである。
「…ってあ痛!」
そんなことを考えて歩いている人とぶつかって転んでしまった。ちゃんと前を見て歩いていたつもりだったが、気が散っていたのだろう。ぶつかった人は一言で言えば、紳士というイメージがぴったりな優しそうな顔のおじさんであった。おそらく冒険者なのだろう、腰には魔導具らしきものが目にはいる。
「おっと、すまないお嬢ちゃん、大丈夫かい?怪我はないかい?」
そのおじさんは俺を立たせようと手を伸ばしてくる。俺は、こっちがぶつかって勝手に転んでいながらおじさんの手を煩わせる訳には行かないので、自力で起き上がる。
「うん、大丈夫だよ、私こそ考えごとをしていて前に意識が向いてなかったのかも、ごめんなさい」
「いやいや、怪我が無いようでよかったよ。ところでお嬢ちゃんはこの村の子かい?冒険者にしては若いしね」
「うん、そうだよ、おじさんは冒険者だよね?腰に魔導具っぽいのあるし、それにこの村の人じゃないよね?見たことないし」
「そうだね、私は闇の国から来た冒険者でね、昨日来たばっかなんだよ、討伐は明日にして、今日はゆっくり観光とでも思ったのだがいまいちどこに行けばいいかわからなくてね」
おじさんは他国から来た冒険者らしい。昨日来たということは村の細かい施設や名所を知らないのも当然であろう。いい気晴らしを見つけた俺はおじさんに提案する。
「だったら私が村を案内してあげるよ。日が暮れるくらいまでだけどね」
「おお!そうかい!それは助かるよありがとうお嬢ちゃん!1時間でも十分だよ」
おじさんは喜んで了承してくれた。日暮れまであと1、2時間ってところだろうか。
そうして、俺は闇の国から来たという冒険者のおじさんに俺のおすすめのお店や武具屋さん、観光名所を案内してあげた。時間ってのはすぐに経つもんで気づけば空はオレンジ色に染まっている。一通り周り終えた俺たちは最初の場所に戻ってきた。
「お嬢ちゃん、今日はありがとう!おかげで良いところにいっぱい行けて楽しかったよ、しばらくはこの村にいるつもりだからまた会えるといいね」
俺はそれに対し「私も」と返事をするとさよならを言い別れたのだった。おじさんのおかげで先ほど事で落ち込んだ気も晴らすことができたようだ。
宿に戻る頃にはすっかり日も暮れあたりにな魔導具の電灯がつき始めている。そのような景色も俺は嫌いではない。
(龍とか熊とか危険な魔獣はいるけど、転生してきたのがこの世界で良かったなあ)
そんなことを考えながら、俺がただいまと言って家に入ろうとしたその時
村に大きな音が響き渡った…
村のとある一角、燃え盛る宿屋だったものの前には一匹の龍が口から炎吐き暴れていた。その傍には黒頭巾の男が佇んでいる。
「くくく、あの少女、実に良いでは無いか、気も強そうでありながら繊細な心も持ち合わせておる、これは調教しがいのありそうな子だな。高く売るつもりだったがこれが終わったら国へ連れ帰り俺が直々に面倒見てやろうではないか!」
次々と家々が龍によって破壊されていく、その場には龍の雄叫びと黒頭巾の笑い声が響いていた…
お読みいただきありがとうございます!
最近、自分の小説を書くの能力が皆無なことを実感した作者です。
技名が思いつかない、英語が苦手、文がおかしいに続いて対話文が苦手ということを実感しました。読んでいただいている皆さんはお分かりの通り会話文はほとんど無く主人公なのか第三者なのかよく分からない説明が多いですよね…読みにくかったらごめんなさい。
さて、ついに事態は動き出します。次回は再びアッシュさんの活躍、そして主人公も活躍できたらなと考えてます。あくまでも構想の内ですが
細心注意は払っておりますが誤字脱字あると思います。報告していただけると幸いです。
感想、批評もお待ちしておりますので是非お願いします。
では、