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変人な美少女ばかり!  作者: 凉菜琉騎
~第二章 美少女の後輩に「先輩♪」って呼ばれるのはいつですか?~
9/16

「俺の会う美少女って変人しかいないのか?」

「それは失礼ですよ。私と恵美理は普通の美少女じゃないですか」

 就寝前、俺の自室に訪ねてきて、寝巻姿で髪を下した花帆が、肩を並べて座っていた。髪の毛から漂う石鹸の匂いが、鼻孔を燻り、妙な気分になる。そもそも距離が近すぎる。

「花帆は妹だろ? 恵美理は娘だからな」

「いつ賢人さんの妹になったんですか? それに恵美理も賢人さんの娘じゃないですから」

「俺が言う美少女とは恋人になってくれる関係の事なんだよ。いずれハーレムにするならな?」

「今の世の中ハーレムものが多いから飽きるよ?」

「いいや! 男はハーレムを求めるものなんだよ!」

「それは良いとして、恋人になってくれる関係ってことは……私は妹扱いってことになるのかな? 1人の女の子として見れないってころかな?」

 挑発するように下から見上げるように上目づかいで見てくると、寝巻の首元から見える膨らみがチラッと見え隠れする。

 ん? よく見るとブラジャーをしてなかった。

「女の子って寝る時はブラ外してるんだ」

「……それが感想? はぁ~私の立ち位置が分かったよ。違う目で見てくれるように私も積極的にアプローチしちゃうよ?」

「あれ……? いつ花帆の好感度をあげたんだ!? 全然身に覚えがないぞ!?」

「賢人さんが認識してない所で知らず知らず私の好感度が上がってるんだよ?」

「マジで!? しかし俺は普通の美少女の好感度を上げたいんだが……そもそもまだ会ってもいないし」

「もう~、襲っちゃいますよ?」

 頬を膨らませた花帆は、四つん這いになって迫ってきた。

「ちょっと待て!? このイベントは何!?」

 一歩ずつ前進する花帆に、俺は後退するが壁際まで追いやられると、キスしそうな距離まで顔を近づかれ、生唾を飲み込む。

「…………っ!?」

「…………」

 花帆の吐息がかかって、石鹸の匂いや女性特有の甘い匂いが、より一層、俺の脳に刺激を与えられる。

「冗・談♪」

 すっと匂いを残したまま、俺から離れていく。少し残念な気持ちがあったけど、そのことはここだけの秘密ということで。

「お、女の子がそんなことしちゃダメだぞ!」

「あは♪ 私を女の子扱いしてくれましたね?」

「そ、そんなことは……。はぁ~……俺は花帆の事が分からないよ。なんだっていきなりこんな事してくるんだ? これじゃあ普通のラブコメじゃないか」

「賢人さんが望む普通の美少女と会うってことは、さっきみたいな展開になることがあるってことだよ?」

「俺が望むのはまさにそれだ!」

「それって普通のラブコメですよね?」

「そうだな」

「さっきのも賢人さんが望む展開でしょ?」

「いや、だから花帆は俺の妹で……」

「さっきからそれがおかしいんですよ!?」

 ピッと立てた人差し指を向けられて、俺は何がおかしいのか分からずに疑問を浮かべる。

「賢人さんと私って血が繋がってない。会ったのもこの前が初めてでしょ? なんで私が妹になるの?」

「お前が最初にお兄ちゃんって呼ぶからだろ? まああれはお前が作ったキャラだけど……。で、その次の日は兄さんって呼ばれて……な? 妹だろ?」

「さっきキャラって言ったでしょ? あの時は妹キャラだったの。でも、あれが原因ならこれからのキャラも考えないといけないかな……」

「キャラ変えるってのなら妹キャラで頼むよ」

「それじゃあ私の事は何時でも妹のままじゃない!? これからは妹キャラ禁止よ! 賢人さんには私を女の子として見てもらわないと」

 霞花帆は変わった妹だ。変人な妹。

「そういえば、ここまで普通の兄妹で会話してるだけだな?」

「兄妹じゃないわよ……。それで、この会話はラブコメ成分を取り入れるための会話だよ。 いつも変人相手だと疲れるでしょ? だからこうやって私とのラブコメをすることで賢人さんが癒されるってことだよ?」

「さっきも思ったことだが、花帆も十分に変人だからな? それに癒されないから。逆に疲れるよ。普通の俺がなんでこんな変人を相手にしないといけないんだ……」

 稚子と会話するよりは幾分マシだけど。

「賢人さんも十分変人ですから。むしろ変態ですよ?」

 変態変態って俺がどのくらい変態じゃないのか、去年の時の回想を見てから判断してくれ。その回想は当分先だけどな。

「ふぁ~……はぁ」

 パーに開いた右手を口元にあてて、欠伸をする花帆の姿に、俺は可愛いと一瞬思った。

「あ! 今の萌えました?」

 意図的な行為か! この娘、あざといぞ。さっきの仕草は自然的じゃないと意味が無い!

「それでは賢人さん寝ましょうか?」

「自分の部屋に戻れって!」

「一緒に寝た仲じゃないですか~それにおっぱい揉んだり、裸見たり……どこの主人公ですか?」

 そんなこともありましたね……。

「私が妹だって思うのなら一緒に寝るくらいいいでしょ? 兄妹で一緒に寝るのって普通でしょ?」

「それは小学生までだろ? とにかく、最近は花帆の出番が多いから少し自重した方がいいじゃないか? そもそもメインヒロインである香梨の出番が少ないぞ……」

「え? 絶賛花帆ちゃん攻略中でしょ?」

「そのギャルゲー思考をやめろよ……」

「それは賢人さんも同じことよ」

「じゃあ……エロゲー?」

「それってHシーンが加わっただけでしょ? もしかして私は体目当てだったの!?」

「妹に手出したら不味いだろ……」

 兄弟愛は世間様に白い目で見られるだろう。

 この他愛のない会話は日付が変わる頃まで続いて、ようやく花帆は自室に戻り、静まり返った部屋に時計のカチコチという音を聞きながら俺は眠るのだった。



「という訳で、賢人が私を妹という固定概念を崩すために積極的にアプローチすることになりました! 今日から恵美理は私のライバルだよ! 絶対賢人を渡さないんだから!」

「ええええ!? 花帆ちゃんもパパの事が??? うぅ~私じゃあ花帆ちゃんに負けちゃうよ~……」

 屋上で京華さんから作ってもらった弁当を食していたら、二人がやってきた。

 花帆には昨日、登場数が多いから自重するよう言ったのだが、全く聞く耳持たない。本当はこの回、美少女後輩がメインなのだよ? まだ一人も登場してないよね? 

え? 花帆と恵美理ちゃん? 花帆は妹で恵美理ちゃんは娘だから後輩じゃないよ?

「やっぱり私は妹……でもそんな幻想は私が打ち消します! 今日のキャラは賢人の幼馴染の後輩ですよ!」

 またしても俺の心を読む花帆に、文句を言うのも疲れるから黙々と弁当をつつく。

「そういえばさっき恵美理ちゃんはライバルって……何のことだ?」

「わわわ!?」

 両手を広げ上下にパタパタと慌てる姿に和む。

「賢人は鈍いわね……主人公並に鈍いよ」

「俺をそこら辺の鈍感な主人公と同じとは心外だな! 恵美理ちゃんの気持ちは十分に分かってるぞ!」

「え? え? パパに私の気持ちを知られてるの!?」

「な!? まさか始まる前から私は終わったの……? いつから恵美理と付き合うことになったの!?」

「恵美理ちゃんが俺の事をパパだって認めてるってな! もう俺たちは父と娘の関係……もう深―い絆に結ばれてるんだ!!!」

 これで俺は鈍感な主人公と言われることはないだろう! 花帆の呆れたような顔に、恵美理ちゃんのがっかりした顔!

「…………はぁ~」

「うぅ~……私は何時の間に娘になったの?」

「恵美理も鈍いわね……」

 あれ~? おかしいな? もしかして違った?

「私も鈍感さんなパパに気づいてもらえるために積極的にあぷろーちします!」

 娘にまで鈍感って言われてしまった。それに恵美理ちゃんは横文字苦手なのね。

「その呼び方から直した方がいいと思うよ……? 賢人は鈍感だから勘違いするから……」

「でもでも! パパはパパだよ? この呼び方がしっくりくるんだよ!」

「恵美理も大概変人よりだよね?」


 昼食も摂り終り、妹と娘の会話で満足した俺は、教室に戻ろうとしたのだが……

「ちょい待ち! そこのチェリーボーイ!」

 学園でなんてことを言う奴だ。呼ばれた人間が可哀想だろ? 学園中で広まっちゃうじゃないか。

「全く……チェリーボーイって言われて照れてるのか?」

 もうちょっと呼び方と言うものがあるだろうに……。

「無視は良くないよ! 童貞の賢人」

「呼ばれてたの俺だったのかよ!? って稚子かよ! いや……お前しかいないよな」

「酷いよ賢人は~童貞でチェリーボーイと言ったら賢人しかいないじゃん」

「童貞とか言うな!」

「だって本当の事だろ? ちなみにあたしは処女だよ? 童貞と処女は惹かれあうものだしね」

「そんな情報いらんし、いい事言ったって顔はやめろ」

「童貞と処女は惹かれあうものだろ?」

「お前それ気に入っただろ?」

 学園一下品な女子と言ったら、即座に星崎稚子と答える。それがこの稚子だ。顔はレベルが高いと言っても良く、美少女と言えるのだが言動が下品な事しか言わない残念美少女である。

 胸もそれなりに大きいし……ん? 稚子ってこんなに胸が大きかったっけ? 確かそこそこの膨らみがあったけど、決して大きいとは言えない。しかし、今はスイカくらいの大きさだった。

「お前……何入れてんだ?」

「ん? これは風船だ。んしょっと」

 胸の中に入れていた風船を取り出して後、一瞬チラッと桜色の先端が見えた…………え?

「お、おま、お前ブラは?」

「見たのか!? あたしの乳首見たのか!?」

「でかい声でそんなこと言うな! それよりなんで着てないんだよ!」

「これだから変態賢人は……。まあブラ着けるの忘れちゃってさぁ~。でも役得だったろ? 勃起したんだろ?」

 むしろ萎えた。

「実は下も穿き忘れてノーブラノーパンなんだよね~。見るか? ほれ」

 俺の返事も聞かずに、スカートをたくし上げる稚子だが、俺は騙されない。どうせ冗談ってこと……が……わ…………。

「ストップストップ! おまおま、マジで穿いてないのかよ!?」

「だ、だって……賢人が今日は下着外して過ごせって言うから……」

「うわ~引くわ~」「ここまでド変態って言うのは……消えてくれないかな?」「もう通報して!」

「違うって! 稚子の言う事だろ? なんで俺の評判が下がっていくんだよ!? ってなんで周りに女子しかいないんだ!?」

 さっきまで稚子と会話していたときには、まばらに男子生徒が歩いていて、女子生徒はいなかったはずが、いつの間にか男子生徒がいなくなり、女子生徒が廊下を歩いていた。

 陰謀だ……俺を陥れる陰謀に違いない。

「ふぅ~今日も賢人の評判落とそうぜ作戦成功だな!」

「お前は俺に何か恨みでもあるのか!?」

「えぇ~何のぉことかぁ~わかんなぁ~い」

 こいつ殴っていいだろうか? 男女平等パンチしていいか?

「まあそんな怒らないでね? あたしの処女あげるから許してくれよ?」

「いらねぇよ! てか軽っ!」

「童貞と処女は惹かれあうもの……これも何かの運命だから、ちょっとそこの女子トイレで一発どうだ?」

「そんな飲みに行こうぜ、みたいなノリはなんだよ!? しかも女子トイレってどこまで俺を貶めるんだ!」

「ふぅ~今日も仕事した~はい、これ。またな賢人」

 台風のように突然やってきたと思ったら、そのまま過ぎ去って行ったはた迷惑な娘だ。

 思わず受け取った風船から、ちょっと稚子の温もりを感じた。


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