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今度こそは香梨と一緒に帰宅しようと、帰りのHRが終わって直ぐに香梨の元へ向かう。
「香梨! 一緒に帰ろうぜ!」
「ちょっと! なぜ変態賢人が香梨と一緒に帰るのよ!」
「え? だってほら…………」
香梨と一緒に住んでいることは、木戸さんには知らないはずだ。もし知られたら本当に排除されかねない。どう言い訳をしようと考えた結果。
「放課後デートしようってお誘いだよ!」
「でででででデート!?!? 私だってまだホテルに行ってないのに許さない!!!」
「まだ付き合ってないのに飛躍しすぎだよ!?」
「そもそも賢人さんとデートしないよ? 性欲が抑えられないとか言われて襲われたくないもん」
「姉妹揃って同じネタ!?」
そろそろ、そのネタはやめようね?
「それで……帰っていいかな?」
「待ってくれ! お願いだから俺とデートしてください!」
俺は必死に、頭を下げて懇願する。
「…………」
「…………」
「…………?」
返事が返ってこなかったから顔を上げるとそこには誰もいなかった。
そして、パッとドアへ顔を向けると香梨と木戸さんが教室を出るところだった。
「ちょっと!!!」
俺は香梨たちの元へ直ぐに向かい、二人を立ち止まらせる。
「デートいつするの?」
「…………」
「今でしょ!」
「……………」
そのまま横を素通りする香梨たちだった。
「ふぅ~…………」
香梨のイベントはまだまだ先って事なのかな? 好感度上げないとイベント発生しないってことなのかな?
「おお! 賢人!」
声を掛けてきたのはイケメンの敬と、佐藤さんと川崎さんがセットで敬の後を付いてきた。
「お前たち三人は仲良いよな……羨ましい。それでなんか用か?」
「僕たちで遊びに行く予定だったんだけど、賢人も一緒にどうかな?」
ふむ……敬は兎も角、佐藤さんと川崎さんみたいな娘と一緒なら行ってもいいかな? でも二人とも嫌な顔しているよね?
「えっと……佐藤さん、川崎さん、いいかな?」
「不本意だけど……敬君に任せるわ」
「あたしも敬君に任せる」
「二人ともありがとね」
二人にイケメンスマイルを送ると、二人は目をハートにして黄色い声を上げる。
香梨の好感度をどうやって上げるか、後で考えることにして、俺含めた四人はゲーセンにやってきた。
「敬君! このぬいぐるみとって~」
川崎さんがUFOキャッチャーの前で、猫のぬいぐるみを指さして敬を呼んでいた。
「あれか……取れるかな? ちょっと待っててね」
財布を取り出して100円玉を取り出す敬。
そして、その様子を見ていた佐藤さんは、川崎さんと競い合うように何かを探して回っていた。
「佐藤さんも敬に取ってもらう為に探してるのかな?」
「げぇ! なんで変態賢人が来るのよ! あなたには用が無いわよ! 変態は変態らしく変態しなさいよ!」
俺だと分かった瞬間、残念がり、八つ当たり言わんばかりに俺に食って掛かる。あんまり変態変態って連呼しないでくれ……。
「敬の事で相談に乗るから、な?」
「そう言えば、そんなこと言いましたね……。それで? どうすればいい?」
「そうだね……一緒にレースするとかは?」
「もっと形になることがいい」
「形に残る……ぬいぐるみ?」
「それじゃあ友子と一緒でしょ! 次!」
俺ばかりじゃなくて自分で考えようって思わないのかな……?
辺りを見渡すと……
「あれはどうかな?」
「あれ?」
俺が指したものは、矩形の機械――プリクラだった。
「あれならいいかも。ちょっと練習で付き合ってよ」
「え? 練習も何も敬と取ればいいじゃん!?」
話を聞かずに、袖を掴んで強引に引っ張っていき、プリクラ機の中へ入っていく。中は甘い匂いが立ち籠っていた。
『いらっしゃいませ。まずはモードを選択してください』
(ん? 俺ってプリクラ撮るの初めてじゃないか?)
「え~と」
『フレームを選択してください』
「ハートかな?」
(美少女とプリクラ! 俺の願いの一つが今!? でもなんか違う!)
『それではカメラに向かってください。は~い、手を繋いで~撮りますよ~』
(今時のプリクラはそんなこと言うのか……)
と思っていた俺の右手に何かが重なっていた。それに驚いた俺は思わず、その場を退けようして
『カシャ!』
「ちょっと! 変態賢人! どうして離れるのよ!」
「え? ごめ……じゃなくて! 今手繋いだろ!?」
「だって思わず反応しちゃったんだから仕方ないでしょ?」
『ラスト行きますよ~』
「今度はちゃんとしてよ?」
もう一度二人並んで、カメラに向かって
『もっと顔寄せて~行くよ~』
今度こそは音声ガイドに従わず、顔を寄せずに、付かず離れずの距離で写真を撮った。
『ラクガキが出来ます! 画面近くにあるタッチペンでラクガキしてね。制限時間内に終えてくださいね』
佐藤さんはタッチペンを手にして、画面に何かを書き足していく。画面を覗き見ると、俺の所には「変態」という文字が書かれていた。
「おい!? それは酷いだろ!?」
「別にいいでしょ? 減るもんじゃないし」
「俺の品位が下がる!」
「元々そんなもんないでしょ?」
『ありがとうございました! 取り出し口からプリクラを取ってね』
訂正もできないまま終わっしまい、取り出し口からプリクラが出てくる。佐藤さんはそれを取って、常設されたハサミで半分に切り取って、片方を俺に渡してきた。
「付き合ってくれたお礼だから」
「…………」
「何?」
半分になったプリクラを受け取ったまま俺は思ったことをそのまま口にする。
「このままだと俺は佐藤さんルートに突入するのではないのか?」
「そ、そんな訳ないでしょ!? 自惚れないでよ!」
と敬の所へ行ってしまった。
「……佐藤さんって本当にモブキャラなのか? 香梨より目立ってるような……」
疑問から出た香梨の問題を思い出して、これからどうしようか考えるのだった。
実は、この話には続きがあるのだ。
「敬君とプリクラゲット!」
佐藤さんがホクホク顔で、手にしている敬と二人で撮ったプリクラを見て満面な笑みを浮かべていた。
「あたしもゲット!」
同じく佐藤さんと同じように川崎さんもホクホク顔で敬と二人で撮ったプリクラを眺めて笑みを浮かべていた。
「賢人!」
「ん? どうしたんだ?」
「賢人も一緒にどうかな?」
「…………」
嫌な予感しか、しなかった。
「僕も賢人と一緒に撮りたいんだ」
爽やかな笑みを浮かべるイケメン。女性なら、その爽やかな笑みは一発KOだが、男にそんな顔されると気持ち悪いだけだ。それに男二人でプリクラ? これも気持ち悪いだろ!
「って!? ちょっと待て!?」
と抵抗できないまま、手首を掴まれてプリクラ機の中まで引きずられるのだった。
「お前、男二人で撮って気持ち悪いだろ?」
「そうかな? 僕は賢人と一緒に撮れて嬉しいよ?」
背中に悪寒が走り、身の危険を感じた。こいつホモなんじゃないのか?
「お前、早く彼女作れよ!?」
「僕も男だからね。彼女は欲しいよ? でも僕には中々そういう娘は見つからないかな……?」
近くに二人もいるだろ!?
「もし彼女が見つからなかったら……僕が賢人の彼女になるよ?」
「…………は?」
どうやら俺の耳はおかしくなったようだ。敬の言葉がおかしく聞こえてくる。
「僕が性転換で女になって賢人の彼女になるんだ」
駄目だこいつ……早くなんとかしないと
「そ、そんなことしなくてもお前なら彼女の一人や二人できるって!」
俺が絶対に佐藤さんとくっつかせてやる! それが俺の為であり、佐藤さんの為だ!
「ははは、賢人は冗談が上手いね」
「割と本気で言ったんだが……」
俺は極力、敬に近づかないように、密かに敬の彼女探しを行おうと決意した。何が悲しくて俺がこんなことしなければいけないのか?