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変人な美少女ばかり!  作者: 凉菜琉騎
~第二章 美少女の後輩に「先輩♪」って呼ばれるのはいつですか?~
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「ねぇねぇ君―? 俺たちと一緒にお茶しない?」

「一人だよね? 俺たちと一緒に楽しいことしようぜ!」

「悪いようにしないからさ?」

「あの……あの……」

 休日、京華さんに買い物を頼まれた俺は三人のナンパ野郎が、一人の少女に迫っている場面に遭遇した。周りの人間は見てみる振りをして誰も助ける気配がなかった。

 フラグを立てるには最高のイベント!とか言っている場合じゃない。俺は急いで向かいナンパ野郎と少女の間に割って入る。

「やあやあ、待ったかな? それじゃあ行こうか?」

「え? あの……」

 俺は少女の肩に手を回してナンパ野郎から離れようとしたが……

「ちょ、待てよ!」

「お前いきなりあらわれてなんだ?」

「痛い目にあいてぇのか?」

 ナンパ野郎に肩を捕まれて逃げることに失敗。

 さて、ここで問題、俺はこのナンパ野郎を退ける力はあるのでしょうか?

「君たちさぁ~女の子一人に男三人って卑怯でしょ? しかもこんな、かよわそうな娘に」

「ぐたぐたうるせぇンだよ!」

 どうしてDQNって話を聞かずに直ぐに手を出すのだろうね?

 殴りかかろうとしたDQN1の腕を掴み、前を崩しながら背を向け、その上にDQN1の体を乗せて、俺の右肩にDQN1の掴んだ右腕を引っかけ、浮かび上がったDQN1の体そのままの勢いで地面に叩きつけた。

「がはっ」

 背負い投げをされたDQN1は、呻き声をあげる。

 さっきの問題の正解がこれだ。俺は親父に護身術を学んでいたため、退けるくらいはできる。ただし、単体の場合だけだ。

「ちょっとごめんね?」

「え?」

 俺は少女の両膝裏に右手を通すと、お姫様抱っこの形になり、騒ぎになる前にその場を逃げ出した。ここで面倒事を起こすと海ヶ丘学園を退学する可能性があるし逃げるが勝ちってね。

 呆気にとられたDQN2,3は、俺の行動に数秒遅れて

「ちょ待て!」

「逃げんな!」

 俺は必死に逃げて、追いかけてきた二人からの距離を離していく。

 二人から逃げおおせて、公園のベンチに二人並んで座って俺は息を整え、少女は心配そうに見上げる。

「大丈夫かな?」

「え? あ、はい。私は大丈夫です。えっと……」

「俺は東堂賢人だ。君は?」

「わ、私は榊恵美理です」

 俺は改めて少女を上から下まで見る。

 腰まで伸びたサラサラの髪の毛に、仄かに香る石鹸の匂い、パッチリした目に、少し濡れてプルンとした艶かしい唇、小柄な体躯に膨らみかけの胸、子供のように小さな脚。

 小学生だろうか?

「あ、ぁの……」

 ずっと少女を観察していたため、少女は頬を赤くし、両腕で身体を隠して、上目づかいで見る。

 その姿に、俺は胸の高鳴りを覚えて……って俺はロリコンじゃないぞ?

「悪い悪い。ここまで逃げてきちゃったけど恵美理ちゃんは1人だったのか?」

「はい……急にあの人たちに話しかけられて、それから……お、おう……東堂さんに助けてもらったのです」

「そっか。一人でお買い物か? 偉いな」

 俺は恵美理ちゃんの頭を撫でる。

「えへへ♪」

 撫でられた恵美理ちゃんは嫌がることなく、幸せそうに笑みを浮かべる。

 それにしても可愛い。娘を可愛がる父親の心境って、こんな感じなのだろうな。

「恵美理ちゃん、俺の事はパパって呼んでくれ」

「え!? ど、どうしてですか???」

「そう呼ばれたら嬉しいからかな?」

「そう……なんですか? わ、分かりました東堂さんの為です! …………ぱ、パパ♪ もっと頭撫でてください♪」

「ぐはっ! はぁ~はぁ~ヤバい破壊力だこれは!」

 何かに目覚めてしまいそうだ。

その後、恵美理ちゃんと別れて、京華さんに頼まれた買い物を済ませて帰路についた。



 キーンコーンカーンコーン

 午前中の授業が終わるチャイムが鳴り、昼食の時間になった。

 俺はいつも学食で飯を食うことが多いけど、今日は違う。俺には京華さんからの弁当がある。それを手に持って、香梨と木戸さんの元に行くけど、姿が無かった。

 香梨とのイベントは何時なのでしょうか?

 仕方なく俺は屋上で食べることにした。ギャルゲーなら屋上は空いているはずだが現実は違う。屋上に行くことは禁止されていてドアは鍵がかかっている。

 じゃあなぜ俺は屋上に行くかって? それはスペアの屋上の鍵があるからだ!

 

 と来たのは良いが、鍵が無かった。いつも制服のポケットに入れてあるはずなんだが、いつ無くしたのだろうか? 仕方なく学食に行こうかと思ったが、ドアの向こうから微かに、女性の声が聞こえてきた。

『それでね! 王子様が私を助けてくれたんだよ!』

『王子様か……私もそんな人が欲しいな~』

『えへへ~また会いたいな~』

『私も王子様に会いたいですね』

 どっかで聞いたことのある声だった。一人は一緒に住んでいるから分かる。花帆の声だ。しかも、キャラを作ってない素の花帆。もう一人は……聞いたことある様な、無い様な……?

 取り敢えず、花帆がいるのなら俺は、花帆達と一緒に食べることにした。

 ガチャっと屋上のドアが抵抗もなく開くと

「よ! 花帆! 一緒にお昼しようぜ!」

「やっぱり先輩でしたか」

「え? え?」

 今日の花帆は後輩キャラのようだ。

「やっぱり鍵取ったのは花帆だったか」

「先輩がいいもの持ってたから借りただけですよ♪」

「まあ無くしてなかったんならいいか。で、その娘は…………ん?」

「パパ!?」

「ぱ……ぱ?」

 俺が視線を向けた人物は……恵美理ちゃんだった。

 恵美理ちゃんがパパと呼んだ事を聞いた花帆は俺に犯罪者を見る様な冷めた目を向けられた。

「か、花帆? こ、これには訳があるんだ!」

「パパもこの学校だったんだね♪ また会えて嬉しいです♪」

「ちょ、ちょっと待って恵美理ちゃん? 取り敢えずパパと呼ぶのはやめてくれ」

「先輩……変態だ変態だって思ってましたけど……まさか本当に変態だったなんて、さすがの私でも引きます」

「だからこれには海よりも深―い事情があるんだって!?」

「はぁ~聞きますけど私の態度は変わりませんよ?」


 その後、昼食を摂りながら、休日に恵美理ちゃんをDQNたちから助けたことを話した。

「……パパと呼ばせてるのは何も関係ないと思いますが?」

 ごもっともである。

「いや、だって……な? 恵美理ちゃんが小さくて可愛いかったから普通呼んでもらいたいだろ?」

「理解できないです」

「えへへ~可愛いだって♪」

「くぅ! よし! 恵美理ちゃん! 花帆の事をお姉ちゃんって言ってやってくれ」

「え!? ど、どうしてですか!?」

「俺のためだと思って頼む!」

「わ、分かりました」

 恵美理ちゃんと花帆はお互い向き合って

「お、お姉ちゃん♪ だ~い好き♪」

「!?」

「どうだ? 何か目覚めるものがあるだろ?」

「……か、可愛い~」

「これで俺の気持ちはわかったろ?」

「わ、分かりました。先輩は変態ですけど、恵美理がこれほどにも可愛い娘だって分かっただけでも収穫です。しかし、恵美理の攻略はできませんよ?」

「何言ってんだ攻略なんてしないって」

「攻略ってなんですか?」

 子供のように無邪気に首を傾げる恵美理ちゃんの姿に、俺と花帆は口元を緩めてニヤける。

「変態な先輩の事だから言うと思ったのですが……」

「攻略はしないが……俺の娘にする!!!」

「やっぱり変態でしたか……そろそろ通報した方がいいですね」

「待て待て待て!」

 携帯を取り出した花帆を俺は即座に止めに入る。

「先輩はいつ犯罪を犯すか不安ですよ。性欲が抑えられなかったとか言うんですよ」

「やめてー! もうそっとしといて~」

「あのあの!」

 今まで俺たちの会話に入れなかった恵美理ちゃんがぴょんぴょんとジャンプして、自分の存在感を主張する、その姿が愛らしかった。うわ~可愛い~お持ち帰りしていい?

「花帆ちゃんとぱ……じゃなくて、おう……でもなくて、東堂さんはお知合いなんですか?」

「こんな変態は私知らないわよ?」

「他人の振りはやめて~」

「冗談ですけど、先輩とは……私と先輩ってどんな関係ですか?」

 花帆も分からなかったらしく俺に振ってきた。

「そうだな……一応、幼馴染になるのか? でも会ったのはこの前のが初めてだし……まあ普通に先輩後輩でいいじゃないか?」

「これが先輩というのは不本意ですが……」

「私は、東堂さんが先輩だと嬉しいですよ! えへへ♪」

「恵美理ちゃん! 俺、恵美理ちゃんの両親に娘下さいって言ってくる!」

「え? え? そんな……は、早いですよ? で、でもう、嬉しいです!」

 あたふたと瞬間的に顔を真っ赤に染める。

「先輩の言ってる意味と恵美理が思ってる意味は違うと思うよ?」

「取り敢えず、恵美理ちゃん? 俺の事をパパと呼ぶのはなしにしてくれないか? さすがに学園でそんな風に言われたら何言われるか分からないからな」

「分かりました! では……東堂先輩って呼びます!」

 うーん……先輩って言われるのは嬉しいけど、何か物足りない気がする……。

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